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そんなつもりじゃなかった、とお前らは言う。②

本日も3話更新予定です!本編完結します!少しだけエピソードがまだありますが、本編は終了予定です!

 朝霞と誓い合った次の日、クラス全員が無視してきた。これは予想通り、というか、作戦通りだった。


 明神さん達と中原を除くクラスのみんなが『俺と朝霞のグループを無視しろ』と雨野に指示されていたのは朝霞情報で知っていた。

 だから、俺は、朝霞と誓い合ってすぐ後に信用できるクラスメイトのところを、土下座して回っていた。


『雨野さんのいじめを止めるために力を貸してくださいぃいいいいい!』


 まあ、脅迫とも言える。誰でも、家の近くで土下座されたら困るよね! ごめんネ!

 そして、雨野の情報提供の協力をしてまわった。朝霞は、朝霞で。


『わたしたちに従わないクラスメイトを分からせてみせるから……!』


 と、朝霞なりの方法で説得? うん、多分、説得をしてくれた。


 そして、最終的に、かなりの数のクラスメイトが同意・協力してくれた。まあ、クラスを明るくしていた朝霞の頼みとクラスの和を乱していた雨野の命令なら朝霞を取る。それだけだろう。あと、闇朝霞は普通に怖いし。雨野より怖い。


 クラスメイトは雨野に従って俺達を無視する振りをしながら一緒になって証拠を集めてくれた。ちなみに、トラや明神さんにはすぐに話しておいたヨ。コミュニケーション大事。


 特に、明神さんとトラは人の心を掴むのがうまいのでどんどん仲間が増えていった。


『八雲ぉ~、1年と3年にも協力したいって人いるんだけど、いい?』と、トラから言われた時は焦った。


『そりゃそうでしょ。普通の感覚ならいじめ大好きなんてのはいないわよ。動くのにはきっかけを作ってあげなきゃ』とは明神さんの談。


 そして、雨野がラインを越えたあの日、俺達はみんなにメッセージを送る。


『明日です』


 そのメッセージは、瞬く間に広がり、雨野のいじめに関する一部の情報が拡散された。

 当日、俺達が呼び出されると、明神さん達はちょっと遅れてみんなと登場。これは喜多さんの案。


『こういう駆け引きは一回勝てると思うとその勝ちイメージにひっぱられっからさ。自信あるタイプは立て直しでミスるんよ』


 喜多さんは、何を経験してその発想に?

 とは思ったが、なにはともあれその作戦は成功。雨野親父はどうようしている!


 大人がちゃんとなんとかしてくれるなら、それに越したことはない。みんなを巻き添えにしなくてすむし。だけど、もう無理だ。

 だって、何もしようとする気ないじゃん。この人たち。俺の様子を見て朝霞ももうブチギレ寸前だし。


「潰す潰す潰す潰す潰す……!」


 闇圧!


「それにしても……」


 校長室の入り口から見えるだけでもめちゃくちゃな人がいるっぽい。クラスメイトだけじゃないな。トラのクラスは勿論だけど、同学年、いや、学校のかなりの人間が集まってるっぽい。雨野の証拠集めで動いた結果なのか、朝霞が、学校の太陽が呼び出されたことを知ってなのか分からないが、これだけの人がこの学校の中では動いた。


 朝霞を守るために。

 ちょっと泣きそう。


「な、なんだこれは……!」


 雨野親父が立ち上がって、汗をだらだら流し始めた。さっきまでのふんぞり返った感じがなんだったのかってくらい初めて焦った顔。


「学校側はどういう管理をしているんだ! 今は授業中だろう!」


 で、そっちかよ。結局そういう考えになるってことだ。他人をせめて自分を守る。それがコイツのやり方。一方、その娘は青ざめて震えている。


「うそ……月宮センパイまで……」


 雨野の好きな人らしい。いや、いじめっ子のこと好きなんだよねっていう奴、相当ヤバいだろ。多分嫌いになるよ、そんな性格終わってるやつ。まっとうだよ、月宮センパイ。ていうか、月宮センパイ、設楽さんのカレシらしいけど。


『あの人、生徒会副会長なんだけど、生徒会の方が生徒の事考えてるし、今回の雨野さんの処分には憤ってるみたいだしね。力貸してくれるよ。なにより、私の頼みを断らせるわけない』


 あの時の設楽さん、ガチかっこよかった。うん。


 ていうか、それよりもっと雨野が気付くべき人間がいる。雨野の仲間がこっち側にいることに。


 雨野の仲間も結構な数がヤバいと思って離れたそうにしていたらしい。あっちに潜っていた朝霞から聞いた。朝霞が脅したのも何人かいるらしいけど。あ、朝霞から聞いた。


 とにかくたくさんの子どもが動いた。大人が何もしてくれないと分かったから。


 そして、ようやく大人は気づく。今の状況の異常さに。



「なんで……なんで誰も何も言わない!?」



 全員無言。これは俺と朝霞が頼んだ。


 絶対に勝つために、しばらく喋らないでくれって。悪口や暴言を吐けば、バカはそこばっかり突いてくる。そこがよくないとそこばっかり狙って話題を変えようとしてくる。それはまずいと。提案したのは、今、ドアの隅っこに見えてる。中原。マジ悪知恵王。


『みんな無言でただじっと見るだけ。ガチで気持ち悪いぞ~、ひひひひ』


 と笑う中原はガチで気持ち悪かった。


 明神さん達は先頭でぐっとこらえながら睨んでいる。朝霞がひどい目にあってるのを我慢してくれた。なお、俺はビンタされた。そのあと明神さん達にさっきの分自分たちもビンタしろって言われて背中バンにさせられた。トラが遠くで笑ってる。なんとかなるだろおって。みんなが、いる。怖いけど、たたかえる。たたかってくれる、みんなが。


 みんなじっと、校長室の中の大人を見ていた。


「何か、誰か、言えええええええええ!」


 生徒指導の声が響き渡る。だが、誰も何も言ってくれない。生徒を指導できてないゾ。

 しょうがないなあ、生徒指導太くんは、ヤクえもんに任せなさない。ヤクえもんはマズいか? まあ、どうでもいいか。


「じゃあ、俺が」


 俺は四次元ではないポケットからスマホを取り出す。


「俺達は流した情報よりもっと分かりやすい証拠を持っています」

「わたしも」


 朝霞もスマホを取りだす。

 そして、それに追従するようにみんなが。うわ、何この光景、無言でみんなスマホをあげてるこの光景、こわ。


「雨野のあさんが、わたしにしたことがここにあります。わたしたち『は』、覚悟をしてここに来ています」


 朝霞は『は』を強調した。大人たちは覚悟があるのか、と。


 朝霞は強くなったと思う。不謹慎かもしれないけど、あんなことがあって強くなれたんだと思う。あの時入った心の傷はきれいには治らない。消せない。絶対に消せないから。あの時の痛みをもう二度と味わうことのないようにたたかう。


「わたしは! わたしにはたいせつなものがあるから……! もう絶対に逃げません。後悔したくないから逃げません。絶対に絶対に逃げません……! わたしは……わたしは……!」


 朝霞がボロボロと涙をこぼしながらも目を逸らさずに必死に言葉を紡ぐ。大人たちに何かを伝えようと。どうせちゃんとは伝わらないだろうけど。目の前でただこの事態をなんとか誤魔化そうとしている大人たちには。ただただ、どうすると目くばせばかりでオロオロしてる。さあ、どうする。俺達は待つ。ボロを出さないように。待ち続けるだけ。


 その時だった。


「もうっ! いい加減にしてくださいっ!!!!!」


 誰かが叫んだのは校長室の外からだった。甲高い声。誰かが先走ったのか、と俺の体中から汗が噴き出た。だけど、その声は子どもたちではなく……先生だった。確か、社会の若い女の先生。


「もうたくさんです! こんなの学校じゃありません! 見て見ぬふりをして! 子供たち苦しませて! 最低です! 私たちは最低です! 私はこんなことをするために、子どもを奴隷にするつもりで……先生になったんじゃありません!」


 その人は、泣いていた。

 ああ、泣きそうだ。先生は土下座していた。俺達に向かって。

 ごめんね、先生。ごめんね。

 そうだ。大人の中にもこういう人はいる。だけど、従わされる。運が悪かったのかもしれない。

 だけど、だから、俺はこうするしかなかった。


 俺はぐっとこらえ、朝霞と一緒に、もう一度雨野の親父と雨野と、じゃない方の先生達を見る。


「僕たちは、たたかいます。そちらがちゃんとしてくれるまで何度でも何度でも。大人のやり方が通用しないなら。子どものやり方で」

感想で自分の作品を考えるいい機会を頂きましたので、終わりも近づいていますし副音声的に。『なぜ小谷のような男が今まで頭角を現さなかったのか』と。感想返信にも書いたのですが小谷君が朝霞さんの飛び降りそうなところを見た、代わりに落ちた、大怪我をした、色んな患者のいる病院に長く入院していた、母親と向かい合った、それらを経験することで強く死について、そして、人生について考えるようになったのだと思います。そして、自分なりの後悔をしない生き方を選べるようになった。ただそれだけだと思います。小谷君は本当に才能も能力も人脈もない、ただ少しだけ人をちゃんと見られる高校生のつもりで書きました。頂いた感想で、私が小谷君をもっと理解するきっかけになりました。感想ありがとうございました。もう少しだけ、小谷君と朝霞さんの物語にお付き合いください。

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