そんなつもりじゃなかった、と言われてもたたかう。
本日三話更新予定!朝に一度更新しています!
「そんなつもりじゃなかった、のにな」
俺の隣で朝霞は悲しそうに微笑む。
朝霞は震えていた。
怖かったに違いない。
俺は、朝霞の手を握る。
「…………!」
セクハラって言われたってかまうもんかい! 震える手はどんどんと大きな震えにぶるぶると変わっていって、朝霞は俺の肩に顔を置いて泣いた。
朝霞は、元々雨野をどこかで裏切るつもりだったらしい。俺達が一致団結する前、そして、朝霞が『もう傍にはいられない』と言っていた時点で雨野はすでに動いていた。俺をダシに脅迫され朝霞は決めたそうだ。
『自分を犠牲にしても雨野を潰す』と。
別クラスに移動しただけですんだ雨野。それだけで雨野のバックに権力があるか、大人が無能か、どっちもか、とにかく今の状態では雨野を潰すには足りない。
だから、言い逃れできない証拠を集め続けて、違法なことをしても雨野を終わらせようと。
朝霞は、一人で決めていた。
公園の帰り道、別れ際、声をかけられなかった俺は電話した。何度も何度も電話した。
それこそ、履歴見たら犯罪者だと疑われるレベルだったかもしれない。このままでは一生電話が来て俺が寝れないと思ったのか朝霞は電話に出てくれた。
『…………はい』
暗い朝霞の声。
『朝霞、話するぞ』
そんな声聞きたくない。
『…………なんで?』
二度と聞きたくない。
『朝霞、もし、勝手に、一人で何かしようとして朝霞の身に何かあったら俺、死ぬぞ』
だから、俺は何度でも手を差し出す。
『…………わたしの飛び降り止めたのに?』
何度でも。
『俺と雨野の脅迫とどっちが怖い?』
何度でも。
『…………ふぐぅ、こ、こだにくんのほぅが、こだにくんがしんじゃぅほうがいやに、いやにきまってる、じゃん……!』
俺は、朝霞と心中するつもりまであるからな。
『朝霞、もう一回話をしよう』
俺達は、公園に二人きりで集まり、話をした。夜の公園。子どもたちの声も大人の注意する声も何も聞こえない静かな公園で、二人で。雨野の脅しを一通り話すと朝霞は泣きはらした目をこすりながら強い意志のこもった眼で俺を見つめた。
「こ、こだにくんがしぬって言うから話したけど、わたしはやめないからね。絶対にやり抜く」
朝霞の意志は固い。俺に出来ることはほとんどない。それでも、朝霞の為に何かしたいと思う俺の意志も固いんだ。
「朝霞、絶対にいやな命令がきたらそこでやめろ。それと、出来れば雨野と会話するときは通話状態にして聞かせてくれ。出来なければ命令後一人になったら必ず連絡。それだけは頼む。じゃないと、しぬぞ」
「……命に対する発言がどんどん軽くなってる気がする」
口をとがらせる朝霞。かわいい。少しずつだけど緊張がほぐれてきたようでほっとする。そして、俺は準備してきたものを取り出す。それはメモ。音読用のメモだった。
「それは……?」
「朝霞、これを一緒に読み上げてくれ」
「…………でも」
俺はもう答えない。朝霞が頷くまで絶対に。その意思を込めて一歩も一ミリも動かずに朝霞を見つめる。朝霞は、じっとを俺を見つめていた。また、涙が出そうになってるみたいだ。月明かりが朝霞の大きな目に反射して下の方が揺れている。泣き虫だな、朝霞。
朝霞が一度だけ上を向いて、そして、俺を見て頷いた。
俺はスマホの録音ボタンを押す。
「僕、小谷八雲は」
「わたし、朝霞ひかりは」
「「一緒に雨野のあさんのいじめの証拠を集めます。」」
これは誓いだ。俺と朝霞が共犯者になる誓い。
「どんな目に遭っても」
朝霞がアドリブを入れてくる。なら、俺だって。
「どんなに傷ついても」
俺は朝霞とならどこまでもおちてみせる。
「絶対に」
「絶対に」
絶対に。
「「一緒に」」
俺達は誓い合った。朝霞と俺が前を向けるように雨野を終わらせると。
そして、結局雨野がラインを越えてきた。朝霞に身体を差し出せ、と。ガラの悪い連中が俺に対し腹を立ててるからそれをおさめるために、自分を犠牲にしろと言われたらしい。
俺は止めたし、朝霞も留まってくれた。
朝霞の涙で肩があたたかくなっていく。だけど、それ以上に俺の腹は煮えくり返っていた。
雨野は、ラインを越えたんだ。
俺のラインを。
絶対に、絶対に許さない。
次の日、朝霞と俺は先生たちに呼び出される。
さあ、戦いだ。
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