そんなつもりじゃなかった、のに俺は調子にのっていた。
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「もうかりまっか?」
「ぼちぼちでんな~」
共に関西出身でもあきんどでもない俺と中原の会話。しかも、儲かってない。金なんて減る一方。しかし、
「ぼちぼちっていう割には君のSNSでの豪遊っぷりはなかなかじゃないかね、中原氏?」
中原が色んなグッズをゲットしているのを俺は知っているんだからな。なお、中原は某Vtuberにハマりまくり貢ぎまくっている。
「ほっほっほ、最近私、バイトを始めましてね」
エアー髭をびよんびよんしながら笑う中原。だが、そんなことはどうでもいい。聞き捨てならないセリフがあったぞ、今。
「なに!? バイト始めたの?」
「いや、最近、結構時間あるなあと思って。健全な高校生がこのままじゃいかん、と。ま、イベントの手伝いみたいなやつだけどさ、単発で結構入るのよ。先々週も行ってきてがっぽがっぽ」
ぐぎぎぎぎ……! 中原のくせに生意気な! 先々週というと俺が公園で朝霞とのんびりしている間にこいつは金を……! と考えるとまあ悔しくないか。
「まあ、全部グッズに消えたけどな」
手に入れ、失っただとお!? 流石中原だ。さすなか。
俺の場合、『ひゃっはー! 八雲貴様、金を手に入れたそうだな!?』と母さんに山賊のように奪われるだろう。しかし、我もせっかくの男子高校生、限りある時間でバイトとかやってみたい。
「俺もやりたい」
「え……、あ、まあ、動けるようになったらな。いつから松葉杖なくなるんだっけ?」
「先週の再来週の先週末」
「…………今週末じゃねえか! おー、マジか、おめでとう」
そう、今週末には松葉杖がとれる。そうなれば俺は自由だヒャッハー! とうとう体育にも参加できるぜ! 自転車にも乗れちゃうぜ!
「そういえば、朝霞さんは?」
「お前をコスト1で召喚した明神さん達に貸し出し中」
「ほえー……って、誰が召喚コスト1の雑魚カードだよ!」
ツッコむ中原。最近はもっぱら朝霞にツッコんでばかりだから懐かしいぜ、この感覚。何のメリットもない話を延々と続けるこの限りある男子高校生の時間を浪費する感じ、悪くない。
「でも、お前が明神さんと仲良かったとはな」
「そんなわけねーだろ! いきなりおれんとこに来て『お願い、行って中原! お菓子あげるから!』って言われて、朝霞さんを待ち構えさせられたんだよ」
哀れ中原。だけど、俺も正直朝霞とのことがなければ明神さんと接点なんてできなかっただろう。そんな明神さんはほぼ毎日メッセージを送ってくる。
そして、そのことを朝霞にも伝えているらしく、朝霞から明神さんに何かよろしくないことを吹き込まれてないか聞かれるのがお決まりのパターン。
でも、なんだかんだで朝霞の状況を知りたいようでやさしいのだと俺は知っているぜ、明神さん! 友達だからこそ互いに言えないこともあるだろうし。
「それにしても、大分朝霞さんもお前べったりじゃなくなったんだな。明神さんに貸し出し中とは」
「え?」
「え?」
あれ?
「今、なんて言った?」
「え? って……」
「そっちじゃねえよ」
なんて言った?
「えーと、結構朝霞さんも小谷にべったりじゃなくなったんだな。明神さんに貸し出し中って……みたいな……」
なんて言った? 俺は?
汗がぶわりと噴き出し、胃の中が急にぐるぐるし始める。
は?
「うえ~い、八雲ぉ~。わりいけど、現国の教科書貸してくんない?」
トラが教室のドアをあけてずかずかとやってくる。最近またトラがよく絡んでくるようになった。そのトラが俺を見て、笑顔のまま口を開く。
「……どしたぁ、八雲」
「トラ、俺をしばけ」
「は?」
驚く中原。そりゃそうか。でもこれは……。
「わかった。いくぞ」
頷いたトラが手をゆっくりと振り上げるのを確認すると俺は背中を差し出す。
一瞬の間。そのあと、どっかから小さな悲鳴みたいのが聞こえたけど、バチィン! という音でかき消される。
「い……てぇええ……!」
医者曰く、もう内臓系は大丈夫らしいけど、やはり痛みでむせる。びりびりと体中に音の振動と刺激が電気みたいに広がっていく。止めてた息を吐きだし、一気に吸う。そして、
「ぶはあああああああああ!」
吐き出す。
「ありがと、トラ!」
「おーうぅ、それで、教科書。あ、中原君でいいや。貸してくんね?」
「え? え? それで普通に進んでくのなんだよ? え? なに? 貸すけど、なに?」
中原の声を無視し、何度も深呼吸。脳がすっきりし、さっきの記憶がぶっささる。
『明神さんに貸し出し中』
はあ?
俺は何を言った? 貸し出し中? 朝霞はモノか? 俺のものなのか?
そう思ってない。そう思ってないつもりだったけど、いつの間にか俺は今の関係に慣れてしまっていたし、調子に乗ってた。
たった一言で壊れるものだってあるのに。
ー 八雲、お前は、『つかえない』な
ずきりと痛む記憶を必死で抑え込む。俺はあの人みたいにはならない。俺は……間違えちゃいけない。俺は……! あの人でもないし、大川や赤城みたいにもなりたくない!
「八雲ぉ~」
ハッと気づいたらトラがでっかい身体を屈ませて俺をのぞき込んでいた。額の汗が俺の目の間を通り過ぎていく。
「なんかあったら言えよ? おれ、バカだからいい事は言えないけど背中バチンはいくらでもやってやるからなぁ」
口元まで落ちてきた汗を吹き出すように飛ばし、息を吸う。トラが笑っている。イケメンな顔で。
「まあ、相談は聞くくらいなら出来るし、いつでも大丈夫だぞぉ。中原君が」
「おれがかよ! ……いや、でも、まあ、いきなりバチコン始まって、何がなんだか分からんけどさ、お前、がんばってるよ。だから、なんか出来ることあったら言えよ」
中原。
「金以外で」
中原。らしさに笑ってしまう。
俺は、クズで調子のりなダメ男子高校生だ。
『人にやられたらいやなことはしたらいけません』と教えられてきたはずなのに気づけばゴミ思考になってたりする。そういうつもりじゃなくても口に出してることだってある。
それでも、守りたいものはある……。俺は目の前の美少女を見ながら、そう思った。
「……………え?」
朝霞が……いた。
トラと中原の間に顔があった。
「……日野君が、小谷君の背中を叩いてたって聞いたんだけど何故、かな?」
えがお。えがお、だよね? 違う汗がぶわりと噴き出す。あと、どっからその情報得たの? 野生の勘じゃないよね? と、盗聴とかじゃないよね?
問い詰められるトラだが全然朝霞の闇圧など関係ないようにぼやーっと考えてる。そして、説明が面倒になった顔をしている。幼馴染の俺にはわかる。
「中原君がね、しろって」
ほらな。そして、困る中原。ぐりんと180度回転した朝霞の顔に震えあがっている。
「こ、小谷~!」
中原にやっぱり笑ってしまう。そして、ひりひりする背中をさすりながら俺は立ち上がる。
もう、足の痛みはない。一人で立ち上がれる。
「違うんだって、朝霞。実はさ……」
俺は中原に助け舟を出そうと近づき説明を始める。俺の大切な人たちが傷つかないように言葉を選びながら。
そして、俺はかっこいいと思っていた松葉杖とオサラバし、
「小谷君、わたしは……もう小谷君の傍にいられないと思う……」
朝霞に別れの言葉を告げられた。
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