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そんなつもりじゃなかった、けど大声を出してしまった。③

「八雲ぉ! 見てたかぁー!? オレの活躍ぅー!」


 体育のサッカーでダブルハットトリックをぶちかましたトラが体育終わりにダル絡み。俺の首に腕を回してくるんだけど、汗びっしょり。汗びっしょりの癖に汗臭くないのはなんで? イケメン補正すごすぎ。


「やめろ、汗びっしょりじゃねーか。ていうか、ウチのクラスはお前にボコボコにされたんだよ」

「へっへっへぇ」


 へっへっへぇじゃねーよ。犬みたいに舌出して笑ってんじゃねえよ。女子キャーキャー言ってんじゃねえよ。クソモテ男が。


「おい、日野お! 女子にキャーキャー言われて調子乗ってんじゃねえぞお!」

「そうだそうだ! おれたちは全然ないてなんかいないんだからなあ!」

「うーいぃ」


 同じクラスの男子たちの叫び声に手を振るトラ。男子たちも赤城のような嫉妬塗れ声ではなく、楽しくいじってる感じでうらやましい限り。男女ともにモテるのがこの男。


「しばいてイイ?」

「なんだよ、急にぃ!?」


 声を上げて驚くトラ。コイツは知らない間に人をひきつけ、知らない間に俺のコンプレックスをちくちく攻撃してくる非常に腹立たしい鈍感系主人公イケメン。だが、


「まあ、でも、ありがとな。スッキリしたわ」

「……へへ、うぇ~い」


 野球部特有のよくわからん挨拶的な鳴き声を出しながらまた嬉しそうに笑うトラ。

 やめろ、腕を更に絡ませてくるな。デカいから体重がこっちにかかってくるんだよ! デカこどもめ!


「じゃあ、わ、わたしがしばいてイイ、かな?」

「「急になんで(ぇ)!?」」


 俺とトラのハモリ驚きボイス&シンクロ振り返りの先にいたのは勿論、朝霞さん。


 笑顔だ。笑顔だが、手はビンタの素振りを繰り返している。ビンタ素振り風が涼しいのに、汗が出てくる。


「や、こ、小谷君は怪我をしてるのに、そんな体重かけたらダメ、だよね?」


 ひゅんと音が聞こえ、ひゅんとなる俺。あ、朝霞ひゅん、そんなひゅんひゅんしなくても……。


「……あはぁー、ごめんごめん。でも、八雲がいやがってないから別にいいじゃん。そこまで八雲の方に体重かけてるわけじゃないし。なあ、八雲?」


 八雲八雲うるせーな! 俺に生殺の与奪を委ねるな! もう一回しばかれろ、お前! こ、こんなところにいられるか! 俺は出ていくぞ! だが、トラのぶっとくてかったい腕が俺を離さない! てめええええええ!


「いや、じゃないの? ね、ねえ、や、小谷君?」

「も、もちろん! い……!」

「いやいやいやぁ、いやじゃないよ。八雲は。幼馴染のおれとは言葉を交わさなくても分かるなぁ。なぁ、八雲?」


 俺が言いかけたところで俺の頭をわしゃわしゃし遮ってくるバカトラ! やめろ! なんだお前! 朝霞を挑発したいなら勝手にどうぞなので俺を巻き込むな! く、朝霞の闇圧がどんどんあがってる……!


「……じゃあ、わたしも言葉を交わさなくてもわかるもん。退院してからはずっと一緒にいるから、ね、や、こ、小谷君?」


 そうですね! そうですけど! それはそれでなんかちょっとえっ……ちな解釈が出来そうなので控えて頂きたい今日この頃なのですが! 何もやってないし! ていうか、隣の太陽とウチの元・太陽がぶつかり始めたからみんな注目しちゃってんじゃん! 俺溶けちゃいそう! それにしても、美男美女で絵になるねえ、お二人さん!


「いやいやぁ、オレ、八雲と幼稚園から一緒だからぁ」


 うん、そうだな! 当時は俺の方がデカかったな! だけど、対抗すんな!


「今はわたしが、や、こ、小谷君と一緒だから」


 うん、そうだな! いつも鞄とか持ってくれてありがとうな! でも、対抗しなくていいんじゃないかな!?


「オレは八雲と心で繋がっちゃってるからなぁ」


 お前のそれなんなの!? 昔っからよく言うそれは! 理解者なのは分かるよ! ありがとう! だけど、対抗すんな!


「わたしは実際につながってるから」


 それなんなの!? それなんなの!? その表現はよくないよ! なんかちょっといかがわしい感じだよ! バカトラ、『えっ……?』って顔で見んな!


「何もしてないぞ! 手も出してない! 俺は、無実だぁああああああ!」


 俺の絶叫がグラウンドに響き渡り、俺の見学だけだったはずの体育が終わった。二つの意味で。




「ご、ごめんね、こ、小谷君」


 帰り道、ぺこぺこと頭を下げ続ける朝霞。トラは授業後も笑いながら俺をいじってくるし朝霞になんか対抗するしでめっちゃ絡んできた。放課後も、


『八雲ぉ~! オレ、今日は部活あるから一緒に帰れんけど、また今度一緒に帰ろうなぁ~!』


 とか叫んで去っていった。幸い、体育でのやらかし発言でその後はすっかり照れ朝霞さんだったのでよかったが、ガチで朝霞を煽るのはやめろ。何が目的なんだか。まあ、でも……。


「トラはさ、ああいう奴だからガチで気にしない方がいい」

「そう、だね……正直、赤城君たちへのアレは、わたしもスカッとした」


 授業のあと、赤城は保健室に行って、結構ガチガチにテーピングされて帰ってきた。


 そんな風になれば当然事情知らない奴らは誰かに聞くわけで、そしたら、隣の太陽に反則技で突っ込んじゃったおバカイカロスであることが判明したわけで、赤城失墜。

 おまけに、その理由まで知られるのが当然の流れ。

 着替えの時に俺に絡んできてトラが怒って、という話も伝わりトラアゲ、からの、赤城サゲ。


 俺の、お、女友達である明神さん達なんて特に怒り心頭だし、他のクラスの面々も赤城達信号機には絡みにいかなくなった。

 無視はしないけど、極力絡んでこないでくれって感じ。自業自得すぎなので何も言うことはない。

 そんなつもりじゃなかったんだろうけど、不用意な発言は身を滅ぼすこともあるということだ。俺も気を付けよう。


「でも……絶対に小谷君と心が繋がってるとは思わないけど」


 リフレイン朝霞。相当ひっかかっているらしい。何がなんでそうなんだ? わからん。


「まあ、男子のなんかノリだよ、ノリ。気にすんな」


 正直、トラはノリというかフィーリングで生きている感じだし、後腐れないやり方がうまい。で、イケメン。おい、神様、平等って言葉を知らんのか。


 朝霞はきょとんとした顔で俺を見ると、視線を落として考え始める。


 この状態に入った朝霞は今の黒髪も相まって知的美少女感がすごい。めっちゃ美人。

 なので、俺はそんな美人の物思い顔を邪魔しないように松葉杖を出来るだけ静かに突きながらゆっくりと帰り道を行く。


 どっかの晩飯はカレーのようだ。ああ、カレー喰いたい。オレンジの空がカレールーに見えてきた。


「男子同士って、いいね」

「ん?」


 朝霞のぼそりで横向く俺。え、なに? 朝霞さんはそういうのがお好き? ま、まあ、ひとそれぞれだし、そういう時代だからね。俺とトラはそういうんじゃないけどね。


「男子同士の特有のやりとりっていうか、男子同士だからこそ分かることもあるだろうし、名前呼びとかうえーいみたいな絡みとか」


 なるほど。そういうことか。まあ、それは本当にそうかもしれない。

 こういう時代でも男子と女子で考え方は違うとは思う。

 正直、赤城達の嫉妬も、まあ、わからなくはない。ああなりたくはないけど。女子同士も男子ではわからんことはあるだろうし。


「わたしも男子なら着替え中も小谷君を守れるのに」


 はい、朝霞さんがまた見当はずれの思考にいっていらっしゃる。


「俺は朝霞が女子でよかったと思うけどなあ。かわいいし」


 あ、やべ。これはこの時代セクハラですかね。でも、だって、朝霞がなんか変な思考しちゃってんだもん。まったく朝霞チャンったら、そういうんじゃないんジャン! まったくもう!


「……んあ?」


 俺が反省しながら進んでいたせいで朝霞が隣にいないことに気付くのに遅れてしまう。振り返るとカレー色、もとい、夕日のオレンジに染まった朝霞が俺をじっと見ていた。


「え? なに? どした?」

「あ、え、あ、う、ううん!」


 朝霞が慌てて走って俺の元にやってくる。やはりセクハラだったのかしら!?

 そう思う間もなく、どん、と肩がぶつかってくる。朝霞の小さな肩が。


「う、うえーい……」


 ちろっと俺を見上げる朝霞、かわいい。


「あ、あの、これくらいなら男子と女子でもいいかな、って」


 かわいい。


「かわいいぃいいいいいいいいいい!」

「ちょ……! こ、声大きいって、ていうか急になに?」


 いやいやいや、本当にかわいいんですもの! なに、この子!

 流石朝霞! さすあさ!

 俺は、両手で顔を覆ってその場でうずくまる。ちょっと待って無理しんどい。

 先ほどの『うえーい』朝霞を思い出す。ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ! かわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!


 ……はい、落ち着きました。


 それにしても、うえーい朝霞の破壊力恐るべし。多分太陽時代も明神さんとかしてたんだろうけど、直接食らうとこんなに危険なのか。覚えておこう。だが、さっきの顔は曇り朝霞ではあったが、なんというか、曇りの間から見えた光的なアレでとってもよかったと思います。うん、なんというか、楽しそうでした。かわいかったです。


「……も……く……! や、やく……小谷君……!」


 気づけば、朝霞が俺の肩を揺さぶっていた。俺の、肩を……朝霞がうえーいしてきた……俺の……肩を……!


「ぅおおおおおおおおおおおおおお!」

「もぉおおおおおおおおおおおおお!」


 カレーの空に吸い込まれていく俺たちの絶叫。暫く楽しんでたらガチのトーンで朝霞に注意されましたとさ。

お読みくださりありがとうございます。

また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。


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