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そんなつもりじゃなかったのに、曇らせ女子とお出かけした②

 というわけで、その週末やってきました! 公園!


 俺の家の近くにある割と広い公園! 遊具もあれば散歩コースもあり! 池も砂場もあります! 池にはカモ的なものがいてのんびり泳いでいて砂場には子供が3人いてのんびりお城を作っています!


 とまあ、普通の公園。朝霞は俺のちょっと後ろから子分のように歩く。まあ、もともとそういうつもりでもなかったけどデート感は全くなし! しかも、朝霞の方が荷物多いからダメ男みたいだぜヒャッハー!


「ううーん! うん! いい公園だなあ!」


 とりあえず、公園マニア設定のノルマを達成しておく。下手を踏めば朝霞が曇る! それだけは避けたい!


「いい、公園なんだね……よかった……」


 朝霞は俺の発言でほっとしている、その朝霞を見て俺はほっとしている。


 しかし、一体この関係はなんなのか。気を遣う朝霞を気を遣う俺とは。


 朝霞が迎えに来ると伝えた時のウチの母親のにやにや顔と言ったらまあ、我が母ながらきもちわるかった。付き合ってるの? なんて聞いてくるのでしばいといた。倍にしてしばきかえされた。付き合うなんてあるはずがない。俺と朝霞ではレェエエベルが違うんだよ。


 あんなことがなければ、俺と朝霞がこんな風に一緒に歩くなんてことはない。まあ、今も横並びではないんだけれど。


「こ、小谷君……日射し暑くない? 大丈夫? 傘どう?」


 朝霞が怯えながらちょっとおしゃれなデザインの日傘を差しだしてくる。これで松葉杖俺が日傘を差してもらう絵が爆誕すればよりクソな男が爆誕するわけで。


「い、いや、朝霞……俺は大丈夫だから、お前使えって」

「で、でも……じゃ、じゃあ、片付けて」

「お前のような美少女が過剰な紫外線を浴びる方が俺の精神が不健康になっちゃうから! 頼む! 使ってくれ!」


 もう気が気じゃない! 結構近所だからクソ男姿を目撃されたくない! のっとフライ〇ー! 日曜日だけど!

 俺が必死の抵抗を見せると、朝霞はびっくりし、そして、あきらめたように日傘を差しうつ向く。


「あ、ありがと……」


 ふう、助かった。それに、朝霞の顔も結構赤くなっていたし熱中症手前だったんじゃなかろうか。水分と塩分とるんやで。とはいえ、朝霞の言うことも正しく、結構な日射しの強さ。俺は朝霞に提案し、屋根のある場所まで移動。

 そして、ぼんやりと芝生で遊んでいるゴールデンレトリバー的な犬が飼い主とはしゃいでるのを見る。いや、飼い主のおじさんのほうがはしゃいでいるかもしれない。それもまたよきかな。


「犬、かわいいな……」


 ああ、こういう時間がいいなあと思う俺はおっさんだろうか。穏やかな時間が流れるのが最高。


 ……朝霞がなんかスマホで多分俺の好きなものにゴールデンレトリバーと必死に入力しているのがなければもっと穏やかだったとは思うけど。


 その後もちらちらと俺を見ながら様子をうかがう朝霞。朝霞は俺の好きなものを俺から聞こうとしない。朝霞から俺に話しかけることがほとんどない。俺が何か動きを見せたり、興味がある様子を見せた時だけ話しかけてくる。朝霞は俺に気を使い続けている。そんな高校生活でいいのだろうか。


「あのさ」

「は、はい! なんですか、小谷君?」


 俺から話しかければびくりと肩を震わせる朝霞。朝霞はいつになれば『許される』のだろう。


「朝霞は、さ……犬、好き?」

「え?」


 何かいいことを言おうとしたけど何も思い浮かばず、思いついたこと垂れ流し。しょうがないじゃないか! 俺は普通の高校生なんだ! 偉人の格言みたいなこと言えねえよ!


 曖昧に笑う俺を見て、朝霞はゴールデンレトリバーを見つめる。


「そう、ですね……犬、好きです」

「どんな犬?」

「そうですね、ああいうおっきい犬もかわいいと思いますけど、その、ポメラニアンとか好きです。ふわふわのちいさいの」


 朝霞はぎこちないながらもポメの魅力を身振り手振りで教えてくれる。その時の朝霞は、ちょっと目がキラキラしててかわいい。そういえば、今日は制服と違っていて、なんかワンピースっていうのか、すごい白くて似合っている。その服が揺れるほど動いていてかわいいのである。


「え、じゃあ、猫は?」

「猫もかわいいですね。猫も好きです」

「猫カフェとか行く?」

「行ったことありますよ、このあたりにもあるんです。そこにはいろんな種類の猫ちゃんがいて……」


 好きなものを語るときの朝霞は、かわいかったし、よかった。俺にボキャブラリーは存在しない。今の朝霞はよい。とてもよい。だから、俺は朝霞のよい顔が見たくて質問を続ける。朝霞は一生懸命好きなものの話をしてくれて、俺は午前中いっぱいそれを聞き続け、なんかしあわせだった。それだけだ。俺にボキャブラリーはない。


「あ、あの……お昼にしましょうか?」


 昼になって朝霞が持ってきていたバッグからお弁当を取り出す。バッグはかわいいキャラので、出したお弁当箱はなんか重箱的な立派な感じでビビる。


「ん? お弁当箱?」


 思わず俺の口からこぼれた言葉。なぜかって?

 朝霞にお昼はわたしに任せてくださいと言われて、俺は慌てて千円札を渡した。これでコンビニ弁当を用意してくれ、と。

 マジで油断したら朝霞は超豪華な何かを用意しかねない。朝霞のお年玉貯金を守る男、小谷八雲としてはそれを阻止せねばならなかった。


 なので、コンビニ弁当だと思っていたのだが……。


「あ、あの……うちのお母さんが、コンビニ弁当は失礼なんじゃないかなって……で、ですね、ちょっとでも豪華に出来るようにって、あ、あの、お弁当を作ったんです。あ、だ、大丈夫です。お母さんがほとんど作ったので……!」


 なるほど。そういうものなのか。

 朝霞のお母様というオプションも加わり、断りづらい空気が高まりまくり俺はおとなしくいただくことにする。女の子の手作り弁当なんてひゃっほーなものだと思っていたがあまりひゃっほーにはなれない。なれないけど……。


「めっちゃうまそう……!」


 唐揚げ、ポテサラ、ウィンナー、おむすび、卵焼きと男子大好きセットで思わず涎が垂れそうになる。しかも、大ボリューム。これが手作り弁当だからこそ出来る千円弁当なのか!?


「ふふ……う、うれしそうでよかったです」


 朝霞が笑ってお弁当を差し出してくる。超絶うまそうな匂いが俺の鼻の穴にダイブしてきてたまらんのである。ありがたく手を合わせ、食べ始めようとしたのが……。

 俺の顔を朝霞がじっと見て笑っている。


「え? 朝霞は? 食べないの?」

「あ、わたしは、おむすびがあるので、食べてますから。気にしないで食べて下さい」


 そう言って朝霞は小さく笑っておむすびを取り出す。真っ白な塩おむすびっぽい。

 キレイなおむすびだ。だけど、俺はそれになんとなく納得出来なくて……。


「朝霞さ」

「は、はい……あの、わたし、何かやってしまいましたか?」


 俺は、朝霞をちょっと睨む。朝霞の気持ちは分からなくもない。だけど、俺は俺で今の状態がしんどいし、何より朝霞にずっとこんな風でいてほしくない。


「朝霞は、俺が自分だけ女子の弁当もらったぜひゃっはーって喜ぶ男だと思ってるの?」


 朝霞は俺の言葉に真っ青な顔でたどたどしくも話し始める。


「い、いえ、その、ごめんなさい……でも、あの、小谷君とはあまり話したことはなかったけど、最近こうやっててよく分かったんだけど、その、そういう人じゃないと思い、ます」


 俺は、朝霞に分かってもらいたい。俺のことも。


「あ、あの……小谷君は、その、色んな気遣いが出来て、す、すごいなって思うし……色々、一緒に歩いている時もわたしのことを気遣ってくれる雰囲気でしたし、午前中もいっぱい話しかけてくれて、やさしいなって……」


 だけど、あまり言われ過ぎると照れる! なので、俺は慌てて弁当を差し出す。


「そ、そうだろ! だったら、俺が一人で弁当食べれるわけないじゃん! これいっぱいあるし、一緒に食べようぜ!」


 俺はそんなつもりじゃない。朝霞に貢がせるようになりたいわけじゃない。

もし、今の関係性が少しでも発展するなら肩を並べて心から笑い合えるようになりたいんだ。


 だが、恥ずかしすぎて何も言えない! 俺の意気地なし! ただただ、弁当をさしだし、朝霞を見つめる俺! え、これ、キモくない? 大丈夫そ?


 朝霞は、目を泳がせて、そして、困ったように告げる。


「あ、ありがとうございます。で、でも……お箸が一つしか、なくて……」


 俺は人生経験の少なすぎる男である。そんなことまで気が回らなかった。流石に箸を一緒に使うのは気が引ける。俺が慌てて咄嗟にとれたのは、


「うえええええい!」


 割り箸を折ること。


「こ、小谷君!?」

「こ、これでいいだろ!? み、短いけどさ! これで頑張って、たべませう!」


 古語みたいになった。


 だが、それが功を奏したのか。朝霞は、すっかり目が慣れてきた黒髪を揺らして小さく笑う。


「ふ、ふふ……あ、ありがとうございます。はい、じゃあ、がんばってたべ、ます、いただきます」


 そうして、俺達は豪華弁当を間に挟み、短い箸で一生懸命食べ始めた。食べるのがめっちゃ難しかった。

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