第62話 少年と幼女
「ここが僕の家だよ! つばきちゃんの家でもあるんだよ!」
「そう、私たち同棲してるから」
どうせい……?
同居ってことだよね……?
「……」
鎧から出て来たちっちゃい女の子、名前はめぐちゃんて言うんだって。
さっきから喋らないよ……。
「はぁ、めぐちゃんもかわいそうに。あのちんちくりん、どっか行っちゃてさ!」
「いきなり『自分は用事がある、この子を頼む』だなんてね」
そう、あのちんちくりんの方はどっか行った。
結局ひごかって意味も分からないし!
まぁ、一緒に遊べばいいのかな?
「つばきちゃん、お兄ちゃん、お帰り!」
「あ、さくら! ちょうどいいところに!」
ついでだから紹介しとこ。
なんだったら一緒に遊んでもらおっ!
僕よりも年の近いさくらの方が懐きやすいかもだし!
「この子は僕の妹だよ! とってもかわいくてとってもいい子だよ!」
「な、何よ急に……その子は? また幽霊?」
はい、幽霊です。
幽霊を嫌わないでください。
「……」
「えと、こんにちは! 私はさくらだよ!」
さすが、小さい子のお世話は慣れてるみたいだね!
「……いも、うと?」
「うん、そこのちっこいのがお兄ちゃんだよ」
ちっこい……?
兄の僕のことを……ちっこいだって?
「……変なの」
「ふふっ! そうでしょ! お兄ちゃんなのにちっこいの!」
しゃ、喋ったぁ! めぐちゃんが喋ったぁ!
この際ちっこい呼ばわりは大目に見てやろうじゃあないか!
「さぁさくら、この子と一緒に遊んでおやり」
「……いいけど」
▼▼▼
「ほら、次はめぐちゃんの番だよ!」
「う、うん……右から2番目のがいい……」
「えー絶対それババだよ? いいの、ほんとに」
「……いい」
ということで七原家総出パパ抜きババ抜き大会の開催だ!
出場者はお母さん、さくら、つばきちゃん、そして僕とめぐちゃんペア!
めぐちゃんはカードに触れないからね!
ということでめぐちゃんが選んだカードを僕が取ってあげる。
最後の2枚の中で1枚だけ飛び出てる、いかにも怪しいそのカードを。
「ほら――えっ!? ババじゃない……だと!?」
「ちぇーっ! お兄ちゃんだったら引っかかると思ったのになぁ~……」
な、何を言ってるんだ……?
「……これで勝ち?」
「そうだよ! めぐちゃんの勝ち!」
「……へへ」
笑った……! めぐちゃんが……笑ったっ!
この際騙されかけたことは黙っててやろうじゃあないか!
「もう1回っ! もう1回やろっ!」
「いいよっ! 今度はお兄ちゃんは1人ね!」
え、それだと……。
「じゃあめぐちゃんは私とやりましょうね~」
「……うん」
お母さん! まぁ選んで取るだけならできるもんね。
「ふっふっふ、僕の力を思い知るがいいっ!」
「じゃあ、私が勝ったら何でも言うこと聞く、いいね?」
「ふふ、私もそうさせてもらうわ」
望むところ! 僕が勝ったらさくらに……何して貰おう?
いや! 敢えて何もしない!
兄の威厳と余裕を見せてやろうじゃあないか!
……。
……。
……。
「うぐぐっ……」
「ぷぷっ! にぃに弱っ!」
こんな……こんなはずないっ!
「私、めぐちゃん、さくらちゃん、そしてレイくんの順番ね。私は……ふふ、2人だけの時に、ね」
「……お姉ちゃん、何だかえっちぃ」
つばきちゃんのお願いなら何でも聞くけどさ……。
くやしーっ!
「そんなことないわ。耳元で1時間『つばきちゃんだいすき』って言って貰うだけだもの」
「そんなことでいいの? それなら全然やるよっ!」
「……お母さんね、2人のことちょっとだけ心配だわ……ちょっとだけね、ちょっとだけ……」
そんなに心配しなくても……。
「ふふ、変なの!」
「そうなの、お兄ちゃん変なのよ」
お母さん……。
「レイさま、お兄ちゃんなのに変っ! あはははは~!」
「……」
その瞬間、部屋の空気が凍った気がした。
「お兄ちゃん……?」
「レイちゃん……?」
ひぃっ!? どうして!?
「こんな小さな子にレイさまなんて呼ばせて……どうするつもり!?」
「変態っ! 絶対お姉ちゃんのせいだよっ!」
つばきちゃんは何も悪くないっ!
っていうか僕も悪くないよぉ~……。
「ぁ……ごめ、なさ……」
頭を守るように抱え、震えるめぐちゃん。
悪いことをして怒られる……にしてはすっごく怖がってる。
「ああ、ごめんねめぐちゃん。あなたは悪くないのよ? けれどね、“さま”って言うのは友達には使わない言葉なのよ?」
友達……?
とも、だち……。
「……でも、えっちゃんがそう言えって……」
「えっちゃん?」
もしかしてあのちんちくりんのことかな?
「ふふ、じゃあ無理にとは言わないわ。けど、レイちゃんはどう呼ばれたい?」
「……何でもいい」
そんなこと言われてもわからないよ。
「けど……僕はめぐちゃんって呼んでるから……同じように呼んで欲しい、かも」
「……ん」
▼▼▼
「彼はどうだった?」
「暴走するよう仕向けましたが、どうにか抑えたようです」
「ふむ……ならばいい」
「……」
「それでは……始めるとしよう」
「――悪夢の夜を」
お読みくださりありがとうございます!
ババ抜きは高度な心理戦……!




