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第63話 少年と徹夜


 ――翌朝。


「レイちゃん! もっかいやろっ!」

「……うん」


 僕、寝てない。

 幽霊、寝ない。初めて知った。


「今度はしんけーすいじゃくだよ!」

「……うん」


 あの後しばらくみんなで遊んで、寝る時間になったんだけど……。


 めぐちゃん全然寝ないの!

 だから僕も寝ないで2人でずっとトランプ!


 つまり――眠いっっ!!!


「ふわぁ~……レイくん、めぐちゃんおはよう」


 つばきちゃんはぐっすり寝てたよ。

 ちなみに『レイくんASMR』なるものは明日に持ち越しらしい。


「……ぉはょ」

「……ぉはょ」


 あら、僕の後ろに隠れちゃった。

 つばきちゃんは怖くないのに。


「ふふ、懐かれたのね」

「……仲良しだよね?」

「……ぅん」


 ……守護らなきゃ……。

 そんな気がしてきたっ!




「おはようございまっす!」

「えっちゃん!」

「出たな、ちんちくりんめっ!」


 こいつのせいで僕は人生初の徹夜をすることになったんだ!


「その様子なら、仲良くなれたみたいですね。良かった良かった!」

「うんっ! レイちゃんと友達になれたの!」


 徹夜明けの僕にその笑顔が眩しすぎるぜ!

 はー……もうなんでもいいや。


「ちょっと……レイちゃんじゃなくてレイさまと――」

「やはりお前だったのか! お前のせいで僕がお母さんに怒られたんだぞ!」


 えっちゃん! やはりお前か!

 ところで、えんじぇるさまの『えっちゃん』ってこと?


「レイちゃんじゃ……だめ……?」


 泣きそうになりながらえっちゃんを見つめるめぐちゃん。

 これはあれだね、無理だね!


「……レイさまがよろしいのでしたら……」

「……えへへっ!」


 ほらね、知ってた!


「で、何か用があってきたのではなくて?」

「あ、そうですそうです! 我々の責任者である方とお会いして頂きたいのですよ!」


 あー、昨日そんな話してたような?


「わかったわ。準備して来るから待ってて」

「よろしくお願いします!」


 ▼▼▼


「ここって……今は稼働していない工場、だよね?」


 キラちゃんとも合流し、えっちゃんに案内されたのはかつて大きな電化製品の工場があった場所らしい。

 建物の外、広いスペースのところに――。


「ようこそお越しくださいました。レイ様とそのご夫人様方!」

「……お茶会でも始めるのかしら」

「豪華なテーブルに美味しそうなティーパーティセット、それに……執事さん?」


 映画の撮影のようなセッティングがされた……なんて言うんだろう?

 貴族様がお茶をしてるような感じのやつ!


「左様でございます。私は『聖執事』、主をもてなすしか能のない執事ですので」

「せい……執事?」


 何でも“聖”って付ければいいと思ってるな……?

 言いにくいぞ!


 なんてことはどうでもいい。

 この執事さん、ものすごくどす黒い霊力が渦を巻いてる感じ。


 間違いなく悪霊なんですけど!


「……あなたが『聖なる騎士団』の団長という事かしら」

「いかにもでございます、第1夫人様」


 第1婦人様って?

 つばきちゃんのことだと思うんだけど……。


「そう、私が第1夫人。1番の夫人。よくわかっているわね」

「……あのっ! も、もしかして――私はまだ結婚してないというかっ! 夫人じゃないっていうかっ!」


 あれ、キラちゃん知らないのかな?

 結婚しててもしてなくても女性のことは婦人って言うんだよ!


「では、私が第2の夫人ということでよろしいですね?」

「それとこれとは話が違うんじゃないかなっ!」


 ルナたんいつの間に!


「ええ、ええ。あなたのような年頃の女性は照れや羞恥で素直になれないことも存じ上げております。しかし――そのようなことを言って……失ってしまってからでは遅いのですよ?」


 な、何だろう。

 執事さんは笑ってるし冗談っぽい流れだと思ったんだけど……何だか笑えない重さがあるような。


「け、けどっ! レイくんはまだ子どもだし――」

「さて、本題に入りましょう」


 えっ!? このタイミングで!?


「私たちは大切な存在を失ったり、強い後悔があったり……まぁ、そんな感じで霊となったものの集まりです」

「あ……」


 そうか……。

 幽霊になるってことは、そういうことだもんね。


「……」

「私と『聖騎士』はかつて敬愛していた主君を目の前で失ってしまいました。その無念から私はこうして霊となり、『聖騎士』は自責の念に(むしば)まれほとんど自我を失った状態で霊となりました」


 大好きな人を目の前で……。

 仮につばきちゃんやキラちゃんが――いや、考えたくもない。


「私なんかはあれですね! 全人類を滅ぼしたいと思っていますが、主君との約束を胸にその衝動に抗っているところですよ。わっはっは!」

「……」


 そんな……。


「私の願いはただ1つ、“平穏”です。いつかこの恨みが融解(ゆうかい)するまで……安らかに過ごしたい」

「……」


 執事も騎士も、どこか悲しい顔をしている。

 騎士は顔がないんだけども。




「ですから第2夫人様、後悔しないように……想いを秘め続けるのはおすすめしませんよ! わっはっは!」

お読みくださりありがとうございます!


恐らく滅多に呼ばれることはないでしょう。『聖執事』と……。

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