第50話 少年と敗北
「お疲れ様です、お嬢様、椿様――」
獲物を逃してしまい――じゃなかった、子どもたちを見送った後。
橋の近くの駐車場に戻ってきた僕たちを迎えてくれたのは、とあるメイドさん。
とてもきれいなお姉さん。
サラサラな金髪で……お人形さんみたいな顔ってキラちゃんのお父さんが言ってた。
確かに、お人形さんみたいに表情がない気がする。
それなのに――。
「――それと、レイたん」
なのに、そんな風に僕を呼ぶんだよっ!
「かわいい子をかわいく呼ぶのは当たり前ですが?」
「あ、ありがとね」
しかも! 何だか考えを読まれてる気がするっ!
「そうとも言えるし、そうでないとも言えますね」
「ふぬぬ……」
この人……強いっ!
「もぅっ! レイくんをいじめるのはやめてっ! それとお嬢様呼びもレイたん呼びもっ!」
「かしこまりました、お嬢様」
「きーっ!」
キラちゃんを猿に変えちゃうこの人、八丈島月さん。
本名かどうかも怪しいけど――。
「名前は本名です、苗字は偽りですが」
「……僕、声に出してないよぉ~……」
「レイたんはすぐに顔に出ますから。それと、私のことはルナたんとお呼びくださいね」
か、勝てないっ! ルナたんには勝てない……。
助けてつばきちゃん!
「椿様と私は、同盟を組んでおりますので」
「どう、めい……?」
「……ふふふ」
どうめいの意味はわからない……わからないけど……!
何でだろう、この圧倒的絶望感……っ!
「さ、椿様、お嬢様、それにレイたん。お車にどうぞ」
「どうもっ!」
「ありがとうね、ルナさん」
「ありがと……」
……。
そう、僕たちはルナたんの運転でここまで来た。
……。
というのも、キラちゃんのおばあちゃんがいろいろサポートしてくれることになって――。
「車での移動、行先の調査、周囲の状況把握――それらをこなす有能な助手として私が派遣された、という事ですね」
……。
「あ、ありがとね、おかげで配信の小話も入れられたし……移動も楽だし……」
「そう、『有力な情報筋』とは私のことです。ちなみにですが、私は常に近くにいたのですが……お気づきになられました?」
……。
全然気が付かなかったよ……。
「レイたんたちの活動の邪魔にならないよう、かつ不要な危険を排除するために陰で暗躍する――それが私、八丈島月です」
……。
自己紹介、ありがとうね。
「そこは『レイたんたちの』、じゃなくて『お嬢様たちの』、と言って欲しかったわねっ」
「おや、いけませんよお嬢様。お婿さんになると言っても、夫を立てるのが家庭円満を築くコツです」
「なっ! なななななぁぁっ!」
つ、つまぁ?
ルナたんが……僕の……?
「いえ、私は愛人としてたまに寵愛を頂ければ結構ですので」
「あい……ちょあ……?」
ど、どういう意味……?
「ふふふ、おかわいいですね」
「……同盟と言っても限度があるわ」
「おや、これは失礼しました」
地の底から響くような声がつばきちゃんから……。
良かった良かった。
……。
けど、僕たちのために色々頑張ってくれてるんだよね。
ありがとう、ルナたん。
「そう言うことははっきり言わないと伝わらないですよ?」
「あ、そうだよね! 色々してくれてありがとねっ!」
「ふふ、どういたしまして」
んん?
何かおかしい気が……。
ま、いっかぁっ!
お読みくださりありがとうございます!
金髪無表情メイドのルナたん。




