1547年(天文16年)4月下旬、不動明王からの贈り物は伊達政宗!?
松千代の夢に不動明王が現れて、立花家、伊達家の未来が開かれます。
1547年(天文16年)4月下旬
4月22日、伊達家と立花家の縁組に関わる面談が予定されていました。
この日の未明、松千代の夢に不動明王が現れました。
「政宗を授けるぞ!しっかり育てよ!」
不動明王はニコリとして夢の中の松千代に光の珠を授けました。
目が覚めた松千代は日が昇るのを待って祖父、義秀に夢の話しを伝えました。
「なんだと?!伊達政宗!?
不動明王様が仰られたのか?」
「キャハハハ!岩城家みたいに繰り上がりかな?
史実では岩城重隆に男子が無く、伊達家から養子を貰うはずが、その養子縁組が史実の一代前に発生して、岩城重隆の父君に男子が生まれず、伊達家から養子に入ったのが岩城重隆殿だったじゃん!
伊達政宗が繰り上がりで現れる事もあるかもよ?
逢えたら嬉しいじゃん!」
「ぶははは!不動明王様からの贈り物かのぉ?
ぶははは!本当に逢えたら幸せじゃな?」
久々の夢のお告げに期待が高まりました。
この日は伊達家と立花家の面談が予定されています。立花義秀は伊達家の男子に武蔵国、東伏見城と周辺の領地5万石を与え、娘を嫁がせて伊達姓を名乗らせる約束をしていました。義秀は松千代と鹿島政家を連れて面談に向かいました。
―桑折西山城、本丸馬場―
―伊達晴宗、中野宗時―
―立花義秀、松千代、鹿島政家―
「立花殿、伊達家の一門から若者を選び、此方に控えてごさいます」
下座に控える伊達晴宗、中野宗時の背後に10代と見られる若者が5名、平伏していました。
立花義秀の手元には其々5名の氏名、年齢、伊達晴宗との間柄、本人の特技や習得した学問の内容が記された書類が用意されました。
「伊達頼宗15歳、伊達宗成16歳、伊達盛宗17歳、伊達利宗18歳、伊達政宗!?17歳!?
居たぞ!!政宗だぞ!!」
小声で名前を読み上げた義秀の声が震えました。
義秀と松千代は互いに目を合わせて顔が緩み、嬉しさがこみ上げて来ました。
伊達家当主、伊達晴宗と他の4名は甥の間柄でしたが、政宗は晴宗の弟と記されています。
史実では伊達晴宗の孫に生まれる筈が、晴宗の弟に生まれた事に驚きと喜びが混じりました。
5名の若者達は其々名前を呼ばれて紹介されて、立花義秀達に礼儀正しく挨拶をしました。
誰もが礼儀正しく、名家の子弟らしく品格がありました。
挨拶を終えると、5名の若者達は本丸の馬場にて馬術、剣術、弓術の技量を披露しました。
年齢を考慮した技量は平均よりも上級の腕前を披露して、彼らは特に優劣がはっきりするほどの差はありませんでしたが、政宗だけが全ての所作に気品が有り、他の4名が持っていない品格が備わっていました。
「お爺、政宗殿だけ光って見えるよ!」
「ぐふぐふ…ぐふふふ!…そうだな!」
小声で言葉を交わす松千代と義秀…
義秀は嬉しくてたまらず少し下品な笑いを漏らしていました。
「もう、決まりだよね?」
「ぐふふふ!文句無しに政宗に決まりだ!」
松千代の念押しに義秀が即答しました。
「お爺、史実の政宗殿は幼少期に疱瘡で右目を失明するんだけど、今は健康で凛々しい姿だよ!」
「おぉ、そうだな、良かった、良かった!」
小声で囁く祖父と孫の二人は嬉しくて顔が緩みました。
武芸の技量が披露された後は室内に入り、書道の腕が披露され、般若心経の一節、観自在菩薩の五文字を課題に書かせました。
書き上がった文字は其々が年齢相応、むしろ上手に見えましたが、政宗の書いた文字は大人びて品格が違いました。
大名家の当主になる為には文字の美しさや文字の品格も大切となります。右筆に任せるだけでは無く、家臣に与える感状や書簡に自筆の文字で与える事が尚更必要となります。
政宗の書いた【観自在菩薩】の文字と左脇に伊達政宗と記した文字に別格の気品がありました。
次に候補者の若者を1人ずつを部屋に呼び出して面談を行いました。
立花義秀、松千代、鹿島政家の3名が本人の言動を審査します。伊達晴宗、中野宗時もその様子を見守ります。其々が学んだ学問の事や特技についての話しを聞いた後、最後にこれからの伊達家がやるべき政策について質問をしました。
其々4名の若者は米沢城に本拠地を移転する事に絡む無難な政策を提案しましたが、政宗だけは違いました。
「自分なら、2つに仕分けます。急ぐ必要の無い案件は家臣達に課題を与えて考えさせて、対策を提案させます。其々の考えを引き出して家臣達に政策を練り上げさせます。そして最後に自分が考えていた策と合わせて考えて答えを出します。
もう一つは急ぐ必要があるものは極力少人数で相談して即決します。
此れならば家臣達もやる気を失わず、人材が育つと考えます!」
政宗の回答に感心しながら、義秀は次の質問をします。
「伊達家には内乱の間の混乱から、与えられた領地が重複した事例があり、担当者の頭を悩ませているのだが、其方なら解決策はあるかな?」
義秀は今の伊達家に存在する問題を明かして17歳の少年には難しい課題を与えました。
「ははっ!…」
政宗は、目をつむり、両手を胸の前に合わせ、祈る様な仕草で考えました。
「伊達家が2つに割れた5年間の為、其々の家臣達に功績に見合った領地を与えるすべはありません。
伊達家は大きく領地を失い、現状の領地の俸禄が満額は支給されておりません!
誰もが知っている事実にございます!
私が当主ならば、重複した領地の当人を呼び出して、重複した領地が500石ならば将来の1000石を約束します!
お前には1000石を与えたいがそれが出来ぬ!
故に土下座してでも謝罪します!」
政宗の言葉は他の4名の若者とは違い、現実を知るからこその言葉でした。
「政宗殿、それで家臣達が納得しなければなんとするのだ?」
「ははっ、土下座までしても家臣に信用されていないのであれば、当主として生きる恥にございます!
私なら責任を取って自害致します!」
政宗は真っ直ぐに義秀の目を見て答えました。
「政宗殿、見事な覚悟を見せて頂いた!」
義秀は大いに政宗が気に入りました。
面談が終わり、政宗が退出しました。
「立花殿、面談が終わりました。
お気持ちは如何にございましょう?」
「ぶははは!政宗殿に惚れましたぞ!」
「やはり、そうでしたか!
政宗は我が父、伊達稙宗の13男、私を廃嫡したら父は政宗に家督を継がせるつもりだったと伝え聞いております。
それでは政宗を宜しくお願い致します!」
伊達晴宗が伊達一門から選んだ若者の中に時空の歪みなのか?不動明王様のお告げの通り、伊達政宗が立花家の婿となり、武蔵国、東伏見城5万石の大名として迎えられ、義秀の娘を妻に迎える事になりました。
面談が終わり、立花義秀と松千代は満面の笑みで二の丸へ向かいました。
―桑折西山城、二の丸―
―立花義秀、松千代―
「お爺!やったよ!政宗だよ!伊達政宗確保!!」
「ぶははは!ぶははは!笑いが止まらぬ!
伊達政宗だぞ!関東を制覇したら奥州へ進出だ!」
「お爺、キャハハハ!嬉しいのはわかるけど、古河足利家、前橋上杉家が5年間謹慎だから手出しできないからね。まぁ関東制覇までは10年は掛かかるかな?
しかし、問題は越後の長尾景虎がいつ頃か上杉謙信になっちゃう気がするんだよね?」
「むむむ、上杉謙信を養子にする可能性がある上杉憲政は越後で隠居したが、接触する可能性は有る…
しかし、関東管領職は前橋上杉家、上杉英房が持っているが、謹慎中だよな?」
「怖いのは何らかの形で長尾景虎が上杉謙信になり、更に幕府が謙信に関東管領職を与える事!
そして越後国の兵士を連れて関東へ来て、古河足利家、前橋上杉家と手を組んだら兵力はどれだけ膨らむのかな?」
「ぶははは!それは最悪だ、その様にならない様に仕向けるしかないぞ!」
伊達政宗を婿に迎える事が決まり、ワクワクが止まらない二人に半分は冗談ながら、未来の最悪の状況予測を語りました。
古河足利家、前橋上杉家の謹慎が明ける5年先から騒がしくなりそうです。
伊達政宗の活躍に期待が高まります。




