5 ジェラルド
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幼少の頃から、疎外感を感じていた。
リットン子爵家で自分は異物だった。
子爵の妻は産褥で亡くなったそうだ。
おそらく、本来の子供も、その時に亡くなったのだろう。
父親である子爵は、外では仲の良い親子を演じた。
邸内で父親はよそよそしく私に接していた。
本当の父親でないことは明らかだった。
父親よりも私についた専属使用人が親のようだった。いや、親でなく王家の影だったのだろう。
朝起きてすぐに髪色の確認をされる。
うっかり魔法が解けていたら誰かにみられる前に髪を金色にする。瞳も金の煌めきが見えないように金色にする。さらに色付きメガネをかけるように強いられた。
本当の髪色と目の色を見せてはいけないと、厳しくしつけられた。
特に気を付けることは、他の人には見えないものをみるだろう事。それを人に言ってはいけない事だ。
確かに、私の目は不思議なものが見えた。
人の頭の上に不思議な色つき煙が浮かぶ。矢やハートが人から人へ向かうのが見える。
少し先の未来が見える。
、、、毒入りの食べ物から禍々しく煙が立つのが見える。
少年期になり、ルドガシア王を遠目に見た。
銀の髪に青銀のきらめき。
私の髪色を隠す理由を知った。
あと、年に二度ほど子爵家に滞在する夫人がいた。
この夫人は私に大きな好意を持っていた。優しかった。
夫人は幼少期には膝にのせて絵本を読んでくれた。
プレゼントをたくさん送ってくれた。
この銀の髪の夫人は、自分の祖母なのだろうと推測した。決して言ってはならない事だ。
親類のご婦人としてリットン子爵家に滞在して、私を可愛がってくれた人は、レティシア様。
ルドガシア王国王立学園に入学した。
1年時は平穏に過ごした。金髪に色付きメガネのガリ勉として。
学園は私には騒々しかった。
煙があちこち見えるし、矢もハートも入り乱れていた。
2年目、ライオネル王太子が入学した。
ライオネル王太子は私をかまってきた。彼からは良い好意が見えた。嘘をつくが、私には少ない。
彼も私と同じ瞳を持っていた。
少しずつ交流をした。
ライオネル殿下に生徒会に入らされた。
王立学園を卒業後は文官として王宮に勤めるようになった。
卒業したのに、王立学園に何度も呼び出されて生徒会に立ち寄らされた。ライオネル王太子に。
ライオネル王太子が卒業後は、ライオネル王太子の側近にされた。
「知ってるから。髪と瞳にかけた魔法を解け。メガネも外せよ」ライオネル王太子。
言われた通りにしたら、姿をじっくり見られて一周された。
「影武者もいけそうだ」ライオネル王太子が、笑った。
髪色も瞳も同じ。背格好も似てる。顔立ちは似ていなかったが。
「伯母上の孫か。従兄弟の子供は何になるんだっけ?ややこしいから従兄弟でいいか」
ライオネル王太子が勝手に決めた。異を唱えるなど許される立場にない。
ライオネル王太子の側近として2年過ごした。
ウィンダム公爵家のジェラールの結婚式に、初めてランデガルド王国に入った。
「ジェラールはお前の異母弟にあたる」ライオネル王太子。
「私の存在など、ジェラール様はご存知無いでしょう」と答えた。
「あぁ。公爵は存在は知ってるらしい。
公爵夫人とジェラールは知らないそうだ。だから、メガネを外すなよ。お前は公爵に似てるそうだ」ライオネル王太子。
なのに。
事態は急展開した。
髪と瞳を自分の色に戻し、メガネも外せ、と。
私の意見も、思いも、何も尋ねられない。誰も聞かない。
父親とやらと対面した。
急に呼び出されたウィンダム公爵リカルド様。
パッと見た姿は立派だった。
しかし、事態の対処も出来ない小物だった。
威厳は感じない。
リカルド様は金の髪に薄い青い目。レティシア様には似ていなかった。
ただ、顔立ちは私に似ているように見えた。
「は、母上。ごきげんよう。その、連絡が遅れまして、その、、、」
優柔不断さが家名を地に落とす、そう思った。
「リカルド、こちらに署名なさい」レティシア様。
渡された書類を読むリカルドの顔から血の気が引いていった。
「な、な、これは!だ、ダメです。リゼットが、怒る、、、」リカルド。
「怒らせておきなさい。時間がないの。ほら、ジェラルド、父親よ。挨拶しなさい」
「は?こちらはライオネル王太子殿下では?」
リカルドが私を見て言った。笑えた。
「貴方の庶子、ジェラルドと申します」
恭しく胸に手を当てて挨拶してやった。
「庶子?、、、あぁ!あの時の!ジェラルドと言うのか。なんて立派になって、、、」涙ぐむリカルド。
今まで忘れてたろ。思い出しもしなかったろ?そう言ってやりたかった。こらえた。
「ウィンダム公爵家の一大事とお聞き致しました。大奥様、ライオネル王太子殿下より代役を勤めるよう命じられております。
結婚式はウィンダム公爵家嫡子が行うと王国正教会に届けられているそうですね。
昨日まではジェラルド・リットン子爵令息でしたが、今日よりジェラルド・ウィンダムになるよう、大奥様より命じられました。どうか、ご署名下さいませ。明日の花婿役、承りましてございますれば。
ジェラール様がご本復されましたら、また嫡子の変更をすれば良いことです」
「なんと他人行儀な。いや、なんと立派な。そうだな。明日の結婚式のためだな」
リカルド様はサラサラと書類に署名なさった。
署名を公証人が受け取り、サインした。そのまま王宮へ提出しに、部屋を出ていった。
ウィンダム公爵家を支えているのはレティシア様とは聞いていたが。
なんだ、あのボンクラは。
あのボンクラが父親、、、。正直、ガッカリした。いや、安堵もした。
「あれが、貴方の父親なの。私の唯一の息子なの」
か細いレティシア様の声がした。
悲しげなお祖母様の顔があった。
「明日は私の結婚式ですね。お相手の事を教えて下さい」
私はこれからの事に話を向けた。
過去は変えられないのだから。
公爵が署名したのは嫡子変更届けだった。
コロコロ変更出来るものではない。
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