4 レティシアは隠居できない
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ウィンダム公爵家の嫡子の結婚式の数日前。
参列のためにランデガルド王国に入ったライオネル王太子は、ウィンダム公爵家が持つ屋敷に滞在していた。側近と護衛を数名連れていた。
ライオネル王太子は伯母レティシアと気さくに話す間柄だ。
レティシアはジェラルドに会うため頻繁にルドガシア王国を訪れていたので、ライオネル王太子と長年親交がある。
ライオネル一行はランデガルド王国王都の郊外のウィンダム公爵別邸に滞在した。
ウィンダム公爵家の本邸は結婚式準備で慌ただしかろう、と理由をつけて。
そこに、本邸から早馬が来た。
公爵夫人リゼットには内密に、本邸の侍医からの手紙を届けに来たのだ。
手紙を読んだレティシアはソファーに倒れ込むように座った。
明後日が、ウィンダム公爵家とラッセル侯爵家の結婚式である。
侍医の手紙の内容は以下である。
「大奥様へ
ジェラール様は只今昏睡状態でございます。
2日前から目を覚まされません。
側仕えの申しますには、痩せ薬をあちこちから取り寄せて多量に飲まれたそうです。
アメリ様から太っている事を厳しくご指摘されたそうにございます。結婚式までに痩せるように、と。
怪しげな薬を多量摂取したことによる、中毒症状とお見受け致しました。回復の見込みは、なんとも申し上げられません。
容態が何時急変するか、このままお目覚めすることなく、儚くなられてしまうか、私にもわからないのでございます。
中和剤の投与と解毒剤、栄養剤で処置いたしております。
飲まれた薬が何かわからず、対処に困難を極めております。
とても結婚式を行える状態ではありません。
しかし、奥様はジェラール様の回復を信じ、結婚式までには目を覚ますと神に祈っておられます。
式には花婿の代役を立てる事が望ましいかと思われます。差し出がましくも、お手紙をお届け致しました」
フラフラ倒れ込んだレティシアから、ライオネル王太子が手紙を受け取る。
「読んでよろしいのですか?」ライオネル。
うなずくレティシア。
読み終えたライオネルは、側近に目を向けた。
「代役、、、」とつぶやいて。
「そうよ!倒れてる場合ではないわ!ウィンダム公爵家の一大事よ!ライオネル、協力してちょうだい。
今すぐルドガシアへ手紙を書くわ。
あぁ、本邸へ人をやって。私の侍女のメルを。
ジェラールの様子と侍医の言葉を聞いてきてちょうだい。
ランデガルド王家にも手紙を書かなくては」
レティシアが立ち上がって力強く命じた。
「もちろん、協力しますよ。伯母上。私の手紙も添えましょう」ライオネル。
「ジェラルド!貴方もこの手紙を読みなさい。そして、腹を括ってウィンダム公爵家を救ってちょうだい!」レティシア。
「将来の役柄は変更だ。ジェラルド。リットン子爵家の嫡子から外れろ。私の側近も辞めて良い。
お前の本来の立ち位置に戻るだけの事だ」ライオネル。
「これからは私をお祖母様と呼んでね、ジェラルド。
リカルドに嫡子変更の手続きをさせます。明後日、貴方はウィンダム公爵家嫡子として、花婿よ!」レティシア。
「リットン子爵家の嫡子から外す手続きは、こちらでしておくよ。ジェラルド」ライオネル。
身分の高い2人から、自分の処遇が決められていく。
「私の意見は、聞いてもらえそうにありませんね」
ライオネルの側近ジェラルドがつぶやいた。
「ああ。伯母上の家の一大事だ。私は協力するよ。
さて、その髪色を自分の色に戻せ。色付きメガネを外せ。
ウィンダム公爵リカルドを呼ぼう。父親と初対面だな、ジェラルド」ライオネル。
「リカルドを本邸から呼び寄せなさい!」レティシアが侍女に命じた。
「公証人もな」ライオネル。
すべき事を命じてから、レティシアは再びソファーに座りこんだ。
そして、うつむいてハンカチで目をおおった。
「なんて事なの。ジェラール。昏睡だなんて。幸せな花婿になるはずだったのに」
レティシアはジェラールの回復を神に祈った。
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