番外編 私達の結婚式 6 母の手紙
数多ある小説の中で、この拙い小説を選んでページを開いて頂き、ありがとうございます。
夜も更けて、明日に備えてアメリアは早くに自室に戻って眠りについた。
別荘の執務室でジェラルドとライオネルが向き合っていた。
「改まっての話とは何でしょうか?」ジェラルド。
「アメリアちゃんから、少し前に手紙をもらってね。出来ましたら、って感じだったんだ。
それで、これはアメリアちゃん発案の、私からのお届けプレゼントだ」
ライオネルが手紙を差し出した。王室の高級な封筒ではない、簡素な封筒で、開いていた。
「悪いけど、先に読ませてもらった。渡してよいか判断するためにな。渡すべき、いや、渡したいと思った。読め」ライオネル。
「はぁ。わかりました」
気のない返事をして、ジェラルドは手紙を取り出した。
ライオネルは執務室から出ていった。
ジェラルドは無表情に手紙を見た。女性の文字だ。読み進めた。
自己紹介から始まっていた。名前は伏せられていた。
女性は今、男爵の妻として幸福に過ごしている、とあった。
若い頃に好きな男の子供を授かり、産んだこと。理由があり、育てられなかった事を謝る文章だった。
実母からか、とジェラルドは理解した。
ジェラルドは自分を、望まれず生まれてきたと思っていた。処分されなかったのは恩寵持ちであるからだと思っていた。
しかし、手紙には愛が綴られていた。拙いけれど、一生懸命に書かれた手紙。
一方的だけれども、好きな男の子供を授かった喜び。
実家の没落で売られた事。
妊娠を隠して過ごした日々。
娼館主の好意で子を産ませてもらったこと。
しかし、産んだ子を手放さなくてはならなくて、辛かった事。
子の幸せを思って、手放した事。
その子のおかげで、恩人がよい縁を結んでくれて、今、幸せな事。
妻を亡くした夫、母親を亡くした女の子の赤ちゃんから必要とされて、幸せな日を送ったこと。
女の子を育てながら、手放した我が子を思わない日は無かったこと。
成長した我が子が幸せな結婚をしたと聞いて、本当に嬉しい事。
あなたを産んで、あなたのおかげで、今、幸せです。会うことはしてはいけないけれど、心からあなたの幸福を願っています、と綴られていた。
読み終えたジェラルドは、背もたれに体を傾け、天井を見上げた。
少なくとも、実母には愛されていたらしい。
自分が産まれたおかげで、実母は幸せになったらしい。
「そうか、、、」
ジェラルドのつぶやきは空に消える。
レティシアお祖母様も、「ジェラルドがいてくれて良かった」とよく言う。
自分の存在は、アメリアと子供達だけでなく、レティシアも実母にも幸福をもたらした、らしい。
その事がジェラルドの心を静かに満たしていく。
「母上、私は明日、愛する人と、結婚式を挙げます」
誰もいない執務室で、ジェラルドは届かない言葉を母親に送った。
「私は、幸福です。、、、、母上、あなたも、幸福でありますように」
お読み頂きありがとうございます。
今回はしんみりで。
短いです。
ジェラルドは父親から否定されて、やっぱり悲しいのでは?と思い、母親からは愛されていたという話を入れたかったので。




