22 番外編 アノヤロー虫とは
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薄く白い絹布に白糸で繊細な刺繍がされたストールを外したアメリア。
女性達はアメリアを見て唖然とした。
首や胸元に、無数の赤い痕が散らばっていた。いわゆるキスマークだ。
その視線に気付かず、アメリアはブローチをテーブルに置いた。
「どうかなさいました?」アメリア。
「アメリア様、その、痕が、、、。お隠しなさったほうがよろしいわ」フローラ。
「あ、アノヤロー虫に刺された痕ですね。恥ずかしいわ」アメリア。
「「「アノヤロー虫??」」」
「ええ。アノヤロー虫と言うらしいです。
私の侍女が、この痕をつけるアノヤロー虫に毎朝文句をつぶやいてますの。
ストールも侍女がつけてくれたのです。
そう言えば、はずさないよう言われてたわ。ごめんなさい。虫刺されの痕がご不快かしら?
でも、ご安心なさって。侍女によるとアノヤロー虫は私しか刺さないらしいのです。
アノヤロー虫は私の肌しか好まないのですって。困りますわよね。
やっと薄くなっても、毎日増えて、きりがないんです。増えていくばかりですの。
ありとあらゆる場所をアノヤロー虫は刺すのです。困った虫です。
全身なので、心配したのですけどね。お医者様に聞きましたら、何の心配もいらないと言われましたの」
アメリアは全身と言いながら、胸元から腰、脚、背にも手をやった。
女性達はなんと言ってよいかわからず、無言になった。
「毎朝、お風呂に入る度、見たら増えているのです。見苦しくて申し訳ないですわ。」アメリア。
「毎朝、、、増えて、、、」フローラ。
「あ、朝というか、朝はなかなか起き上がれなくて、お風呂にも入りますから、かなり遅い朝になってしまいますの。
レティシア様と朝食をとれなくて、申し訳ないのです」
しょんぼり言うアメリア。
「起き上がれなくなるほど、、、」エヴリン。
「毎朝、お風呂、、、、」カミラ。
「結婚してから、夜も朝もお風呂に入らなくてはいけなくなりますでしょう?
朝は立ち上がるのもよろけてしまって。
毎朝ジェラルド様にお風呂へ抱き上げられて連れて行かれますの。皆様も、大変でしょう?」アメリア。
「「「、、、、」」」
意を決して、フローラが言った。
「アメリア様、その、たぶん、おそらくですけど。多くのご夫婦は毎朝、そんなにはならないと思うわ、、、、」
「え?結婚したら、毎晩ではございませんの???
毎晩気絶して気がついたら朝ではございませんの???」
フローラ達は言葉なく首を振って否定した。
「そんな、ずっと、そうだから、、、そうだと、、、皆様、、、。
本当に、本当ですの?毎晩ではありませんの?
ジェラルド様が夫婦は毎晩だと、おっしゃるから。
もしかして、お風呂も?」
アメリアが顔色を赤くしたり青くしたりし始めた。
「それなら、週に一日くらい、一人で眠りたいわ。お風呂も恥ずかしいのに」
アメリアがつぶやいた。
エセルはずっと無言だった。
ふらふら立ちあがり、
「お邪魔、しましたわ」
小さな声で言うと、お茶会から撤退していった。
エセルの顔は感情が抜け落ちていた。
エセルの後ろ姿をフローラ達は見送った。
「見事な防御口撃でした。お見事です。アメリア様。
私達も少なからず、流れ弾打撃がありましたけれど」フローラ。
「コテンパンですわ」エヴリン。
「横入りの隙がありません。見事です」カミラ。
「エセル様、何があったのでしょう?」アメリア。
「刺激的でしたわ、、、」フローラ。
「結婚前の娘さんには、濃い内容でしたわね」エヴリン。
「アノヤロー虫、いけすかないわ」カミラ。
「ええ、アノヤロー虫には困ってます。と
ころで、ブローチはよろしかったですか?」アメリア。
フローラたちは肩を震わせた。
「もう、アメリア様ったら!」
皆が笑うので、アメリアもニコニコした。
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