珍事
私が考えた戦術では、剣を使うことが前提だ。
だが、魔導技術が発展した今、剣が使われることはほとんどない。
剣について調べておいて損はないだろう。
そもそも、魔導が使えない可能性の方が高いのだからな。
「三名刃
この本では、伝説に残る三振りの刃について解説する。
これから紹介するのはあくまで伝説であり、神暦紀元ごろには実在した説もあるが、最初の一つ以外の刃の真偽は定かではないことを事前に断っておく。
一つ目は、エクスカリバーだ。
言わずと知れた剣で、今も確かに存在している。
普段は天国に保管されていて、時が来たら天使が選ばれし勇者の居場所まで運ぶ。
人獄大戦ではこれを振るった勇者が人類側で唯一白星を挙げたという偉業を残している。
現在、勇者は地獄に乗り込み、単身で悪魔の親玉を討伐しに向かっている。
ともに健闘を祈ろう。
二つ目、レーヴァテイン。
憎き悪魔共のうちの一匹が振るったとされているが、こちら側の被害が露骨に大きかったところはなかったため、眉唾であるという説が有力だ。
最後は、マサムネ。
これに関しては、捜査班がいくら捜査しても確かな情報は得られなかった。
だが、エクスカリバーやレーヴァテインについて語られるときは大抵この刀の名も上がるため、絶対にどこかに情報はあるはずだ。
現在も捜索中である。」
こんな内容に興味はないのだが。
困ったことに、書庫に剣に関する本はこの一冊しかなかった。
残念なことに、剣に関しては完全に独学でやらなければいけないようだ。
風魔導に手を出し始めてから半年。
進歩はない。
魔導は成長すればいつの間にか使えるようになっているらしいが、その兆候すら見られない。
手詰まりだ。
だから、基礎的なことにも手を出し始めた。
腕立て。
腹筋。
スクワット。
部屋が狭くてランニングができないのが悔やまれる。
魔導が完成した時のために動かなければ。
風魔導に手を出し始めてから一年後。
二歳になった。
タイムリミットはあと四年だが、できれば三年後には説得は済ませておきたい。
だが、魔導は相も変わらず手詰まりだ。
困った。
本当に困った。
体づくりの方は順調だ。
腕立ては余裕で二百回は出来るし、腹筋もスクワットもそれなりにできる。
片手であの分厚い本「この世界の全貌」を持ち上げられるようになった。
そうやってダラダラと日常が過ぎていったある日。
今から書庫に忍び込もうとしていた矢先、窓からノック音が聞こえた。
窓の方に行くと、紫と白が混ざったような色の少年がそこにはいた。
窓を開ける。
「どちら様でしょう?」
「突然すみません。シグノール商会商会長、リコンペンス・シグノールの使いの者です」
何かの糸口になるかもしれない。




