表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/36

ツギハギの道

嬉しいことに、書庫は部屋の近くにあった。

ラステル家の屋敷の書庫には二万冊を超える膨大な数の本があり、屋敷に勤めるものなら誰でも閲覧可能になっている。

その特権を求めてここで働くことにする人がいる。


そもそも、本は滅多なことでは手に入らない。

印刷ができないわけではなく、紙も有り余っているのに、だ。

権力者というのは自分だけが権力を持っていたいからな。

魔導に関する知識が簡単に得られるようになってしまったら、平民が反逆を起こす可能性が高まる。

平和のためには合理的だが、進歩のためには非合理的極まりない世界だ。


魔導には属性がある。

火、地、雷、草、風、水、毒。

天使の聖なる力や悪魔の穢れた力は置いておくとして、人間が使えるのはこの七つだ。

私は黒髪だ。

常識的に考えれば、魔導を使えない体だ。

だが、使えるようになろうとしている。

どの属性を使えるようになるのが一番いいか。

いや、「どれが良い」よりも「どれが悪い」で考えるべきだな。

火属性は論外。

暴発でもしたら、屋敷が燃える。

大人に気づかれたらお終いだ。

同じような理由で、雷もダメ。

できれば、物的証拠が残らない方がいい。

地と草、水もダメだな。

毒は自分に感染する可能性を否定できない。

風だな。

私は、風の魔導に挑戦することにした。


書庫には、本の種類ごとに棚に分かれてあった。

風の魔導について書かれた本は三つの棚に分かれていた。

その中の七割ほどは読むことさえ叶わない。

身長が足りず、そもそも本をとれないからだ。

棚の一番下のところの、簡単そうな本を一度読んでみることにした。

「風の魔導の概要、入門、応用への足掛かりまで」

学術書みたいなタイトルとは裏腹に、この本は絵本だった。

この本には、いろいろなことが書かれてあった。

風の魔導とは、その名の通り風を操る魔導のこと。

だが、他の属性より攻撃性能が低く、人獄大戦でもあまり役に立たなかったこと。

体にまとわせて速度を早めることができ、戦争よりも配達業などの日常で大いに活躍していること。


……選ぶ属性ミスったか?


まあいい、もう決めたんだ。

この本が入っていた本棚は元から数冊分の空きがあった。

一冊取ったところでバレないだろう。

これを部屋に持ち帰り、今日は読み込んで終わりにしようか。



あれから数日。

思いついたことがある。

知っての通り、髪に魔力は宿る。

紙を切ってしまえば、魔力はなくなり、魔導士としての価値は大いに下がる。

そして、風の魔導は人の動く速度を上げられる。

なら、相手が魔導を詠唱するよりも先に相手に近づき、髪を切ってしまえば良いのではないか。

我ながら名案だ。

紙を切れるほどの刃物、それを操れるだけの技量、速度を上げるに不足がないほどの風魔導。

この三つを手にしたら、私は生きていける。

課題点ばっかりだな。


この世界は戦争がなくなって久しい。

人獄大戦はあったが、それ以前は戦争が一度も起こっていない。

故に、この世界で戦う場面は決闘が多い。

たまに盗賊などが出現し、それの対応で戦いが起こる時もあるが、微々たるものだ。

決闘は一対一で行われる。

なら、この戦法を使えば勝てるはずだ。

アピールポイントになるだろう。


まだ、魔導が使えるようになる兆候はない。

折れるな。

諦めないことしか道はないのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ