慈愛と恩恵
「こんばんは。まずはお入りください」
そう言って招き入れ、窓を閉じた。
「それで、シグノールさんはなんと言っておられましたか?」
「いえ、すみません……。何も、伺っていないんです」
は?
どういうことだ?
「えっと、じゃあ、なんのために来たんですか?」
「商会長がいうには、『多分あいつなんかに行き詰まってるだろうから様子を見てやれ。困ってたら助けろ。お前なら大体なんでも出来るだろ』とのことでして。私も、サッパリ何が何だかなんですけど」
いや、素晴らしい!
シグノールさんすごいな。
未来予知か千里眼か何か持っているのか?
「いや、本当にありがとうございます!助かります!」
「困り事があるんですね。精一杯、助力させてもらいます。何がわからないんですか?」
私は、使いの人に大きく分けて二つの質問をすることにした。
一つ目は、魔導について。
「風の魔導を使いたいんです。でも、見ての通り、私は黒髪でしょう?どうやって使うのか見当もつかなくて」
「黒髪で魔導を使いたいんですか……。厳しいですね。私は黒髪じゃないからできるかわからないんですけど、まずは魔導が発動するまでの道のりを教えます」
「よろしくお願いします」
「まず、髪の毛に魔力が宿っていることは知っていますね。その魔力を、体内に移動させるんです。やってみましょうか」
魔力を、体内に?
どうやってやるのだろうか。
頭に力を入れてみよう。
「あ、そうじゃないです。『どこから』移動させるかを考えるんじゃなくて、『どこへ』移動させるのかを意識するんです。一旦、右手にやってみましょうか」
そうなのか。
右手に力を入れる。
徐々にだが、右肩のあたりがポカポカする。
この感覚だろうか。
「そうですそうです、できてはいるんですけど……、だいぶ魔力の流れが悪いですね。濁っている。頭、失礼してもいいですか?」
何をされるのかわからないが、必要ならやってもらうしかない。
「どうぞ」
そう言って、私は頭を差し出した。
その瞬間、私は頭を撫でられた。
頭をポカポカが満たした。
「今、私の魔力を流し込んでます。濃度が薄まれば流れが良くなると思うので」
「そうなんですか。」
数分が経ち、だいぶ慣れてきた。
「もう良さそうですかね。もう一回、やってみましょうか」
「はい」
もう一度、右手に力を入れる。
その瞬間、瞬時に右肩から右手の指先にかけてポカポカが埋め尽くした。
「そうそう!それです!その状態で、一個なんかの魔導でも詠唱してみてください」
「ヴェン」
私の右手から、そよ風が吹いた。
「できましたね!その感覚を忘れないでください!」
「わかりました!」
「ちなみになんですけど、大体の人はこの原理すら知らないです」
「そうなんですか!」
「はい。無意識に、魔導は手から放つもの、っていう意識があるらしくて。でも、ここまで理解したら魔力の移動先を変えるだけなので、足からでも魔導を出せますよ」
へえ、それは便利だ。
これなら、私の目指すところである急加速からの急接近もできそうだな。
足に魔力を集中させて走るのもいいが、背中全体に魔力を集中させて自分を風で吹っ飛ばすのもいいだろう。
おっと、忘れるところだった。
もう一つ質問しなければ。
「もう一つ、質問いいですか?」
「もちろん。なんでも聞いてください」
「剣についてです」




