依頼品の到着
言った側から、使いの人の目の色が変わった。
「えっと……、何か気に障りましたか?」
「っいえいえ、むしろ逆です。こんな時代にも剣に興味を持ってくれる人がいるんだなと。嬉しいんですよ。僕もその類のものだから」
「そうなんですか!」
「はい。それで、剣のことですね。実物がないのでなんとも言えませんが、これから一ヶ月以内にはそこそこの剣と、使い方のメモを渡します。それでいいでしょうか」
「ありがとうございます!」
本当にありがたい。
これで、少なくとも私は父を説得することができる。
シグノールさんには感謝してもしきれない。
「んじゃ、そろそろ帰ります。今回の私の訪問は規則の範囲だから貸しは無し、剣の件は現物支給なので貸し一つ、合計してあなたからシグノール商会への貸しは三つとなります。死ぬまでに返してくださいね」
「わかりました!」
「それでは、さようなら」
使いの人は窓から飛び降りた。
今回、天馬はいなかった。
だが、あの人は風魔導を使えない。
どうやって降りたのだろうか。
私には全く見当がつかないな。
シグノール商会にはすごい人しかいないのか。
二週間後。
前と同じ、書庫に忍び込む直前。
窓にあの人がいた。
「はい、約束の剣と、メモです」
「ありがとうございます」
「では、早いですが、今日は別件があるので失礼します」
「わかりました。またいつか」
その剣は約八十センチ。
私の身長ほどの大きさだった。
その剣は、絢爛な鞘に納められていた。
強靭な魔導朧で作られた鞘だ。
鞘には、「ディスクオリ」の文字。
これは剣を作った人、刀匠の名前だろう。
残念ながら、私はその名前は知らないが。
剣を地面に寝かした状態で、抜いてみる。
シャキン、と心地よい音を立てながらその刀身を露わにした。
灰色。
黒の持ち手に始まり、白の鍔に続いた長い刀身は、一切の濁りの無い灰色だった。
重さは、思ったよりも軽かった。
とはいえ、まだ私には筋力がない。
自分の身長ほどの剣を持つことなんて不可能だ。
剣を鞘にしまう。
棚に立て掛けて置いておく。
万が一見つからないよう、扉の影となる場所に。
メモを見る。
だが、それはもはやメモではなかった。
「この世界の全貌」と同じくらいの厚さの辞書だった。
今日はもう眠い。
冒頭部分だけ読んでおしまいにしよう。
「俺が人生で扱い続けた刀剣の全てをここに記す。」
あの人、実は一人称俺だったのだろうか。
ハハ、気を使わせてしまったかもしれないな。
「目次
第一章 刀剣の見分けかたについて
第二章 刀剣の鍛え方について
第三章 刀剣に向いた金属について
第四章 刀剣の大量生産について
第五章 刀剣の長期間使用による質の変化、価値の変動について
第六章 刀剣の歴史について
…………………」
目次が長すぎるだろう。
目次だけで五ページあるぞ。
何か気になる章があるかみて、寝よう。
数分後。
私が見つけた気になる章はこの二つがあった。
「第十五章 刀剣の扱い方について」
と、
「第三十章 刀剣と魔道の同時運用について」
だ。
「魔導」を「魔道」と表記しているが、これは誤字だろう。
あの人もミスとかするんだな。
完璧超人のイメージがあったが。
明日からはこれらを読み進めていくことに決めた。
おやすみ。
作中で誤字の指摘がされるということはそれは誤字ではなく意図的な表記揺れということ




