魔道
週一で開かれることになった筋トレ大会では、毎週違うものが行われた。
ある日は腕立て伏せ。
ある日は腹筋。
郊外に出てランニングをする週もあった。
その全てにおいて、フィリオは限界を見せなかった。
終業式も目前となった日。
珍しくフィリオが教壇に立った。
フィリオが教壇に立つときは大抵重要なことを言う。
特級クラスの面々は自然と静かになっていた。
「割と重要なことを言う。心して聞け」
「俺は聞かなくて良いよな?」
「ああ、天使は関係ないことだからな」
「はい、りょーかい」
天使は関係ないこと。
戦争の話だろうか。
その話は混乱を招くし、そもそもこの段階で話す必要がないんじゃないか。
「みんな、魔導が何かを知っているな?」
「バカにしないでくださいよ」
アリサがキレた。
まあ当たり前のように知っていることだからな、仕方ない。
戦争とは全く関係ない話っぽいな。
杞憂だった。
「魔導を地図に喩えよう。今、開拓が終わって人類の支配下にある範囲。それが魔導だ。何を言っているかわからんと思うが、まずは聞いてくれ」
脳内に地図を思い浮かべる。
横長の長方形、その端には海があり、中央には大陸がある。
その範囲が、魔導。
属格や起格で構成される、ありふれた魔の力。
「魔導を教える奴らがいる。そいつらは、すでに開拓された『道』を教える存在だ。だから、『魔』を『導』く『師』と書いて、『魔導師』と呼ぶ」
フィリオは黒板に『魔導師』と書いた。
「ここで疑問を持て。今ある地図が、世界の全てか?」
どう言うことだ?
「地図の外、海を超えた先にまた別の陸地があるかもしれないだろう?それは現段階ではわからない。それを開拓する奴らがいる。そいつらを、『魔』の『道』を切り拓く『士』と書いて、『魔道士』と呼ぶ」
フィリオが黒板に『魔道士』と書いた。
地図の外。
まだ人類が到達していない場所。
これは、魔導とは全く異なる力。
属格がないかもしれない。
まず、魔言すらないかもしれない。
だが、確かに魔を使った事象。
これが、『魔道』。
「お前らはいずれこれになってもらいたい。自らの魔を鍛え、自分だけの『魔道』を作れ。これに関する疑問は全て答えよう」
この説明が終わり、今日は解散となった。
自室。
レアルタには少し悪いが外に出てもらい、一人で考えていた。
自分だけの『魔道』。
自分だけの。
頭が回らない。
考えついたものがあっても、どうせ他の人がやっているんじゃないか。
私に地図の範囲を超えることはできないんじゃないか。
違う。
発想が逆なんだ。
私がやりたいことが他の人もできるじゃなくて、他の人がやりたくてもできないことを考えるんだ。
私の武器。
剣。
属性。
主にこの二つだ。
剣については、簡単だ。
魔力のコントロールを鍛えて、剣と併用する。
その先。
剣にも魔力を纏わせる。
ただ、現段階では手足同時も満足にできない。
鍛錬あるのみ。
属性。
私は複数属性の魔導を使えた。
それを、掛け合わせる。
盗賊団の時は魔導で起こした炎に風魔導をぶつけた。
それを同時にやる。
とはいえ、私は風属性以外は全くと言って良いほど鍛えていない。
これも鍛錬あるのみ。
なんだ、結局やることは変わらないじゃないか。
鍛錬して、基礎スペックを上げて、試す。
それだけだ。
私は頭が固いのだろう。
他の人、例えばオウスクリータなんかは、誰もが思い付かないような発想を今もしているはずだ。
叶わないな。




