威風の間
*
いつも通りの学園生活が戻ってきた。
いつも通りのメンバー。
いつも通りの教室。
レアルタと教室前で別れて、席に着く。
やがて、全員が教室に着いた頃。
「筋トレするか」
フィリオが唐突に口に出す。
「全員、立て」
言われるがままに全員立つ。
大半は困惑しているが、みんなやる気はありそうだ。
「まずはスクワット。優勝者が決まったら終わりだ。はい、1、2、……」
みんな黙々とスクワットを始める。
最初の頃は静かで、フィリオの回数を数える声だけが響いていた。
だが、回数が増えるにつれて次第に息を吐く音が強くなってきた。
最初に脱落したのはアリサ。
記録は三十回。
息切れして倒れる形だった。
「アリサ体力無いね〜」
「ハァ、ハァ、私、初めてだよ!?みんなが異常なだけだって!なんで貴族がスクワットするんだよ!」
少しキレ気味だな。
勉強ばかりしているからそうなるんだ。
次はソーレン、三十五回。
少し余裕がある状態で席についた。
「ドルチェ、頑張って!」
黄色い声援を浴びせる。
次は同時だった。
アロガンツァとオウスクリータ。
「アロガンツァと同時とは思ってなかったんだけど」
「舐められたものだな」
「だって全く運動してなさそうじゃん」
「それもそうか」
残ったのは三人。
私と、ドルチェと、フィリオ。
私とドルチェは息切れしてきているが、フィリオは全くだ。
絶対にフィリオには勝ちたい!
負けた。
私の記録は七十五回。
その直後にドルチェが七十六回でやめた。
「流石に女の子に負けるのは男としてダサいよね」
「素直に負けとけよ!」
「だって恋人の前だよ?」
ため息が出る。
まあ、ドルチェはそう言うやつだ。
「次何やる?」
フィリオはスクワットしながら答えた。
体力の限界がきている。
正直、もうやりたくない。
「やりたく無い人の方が多いんじゃない?」
「そうか?もうやりたく無いやつ、何人いる?」
手を挙げたのはアリサ、ソーレン、ドルチェ、アロガンツァ、私。
過半数を超えた。
「そうかそうか。なら、終わるか。いつも通り自習だ」
そう言っておきながら、フィリオはずっとスクワットしている。
一時間が経っても。
昼ごはんの時がやってきても。
みんなが帰っても。
フィリオはずっと続けていた。
「レーゲン」
「何?」
「帰らねえの?」
「フィリオがスクワット終わったら帰るよ」
「じゃあ帰れねえぞ?やろうと思えば一生できるからな」
「はぁ!?」
「嘘じゃねえぞ。現に、汗ひとつかいてねえだろ?」
「そうだけど……」
「わかったら帰れ。んで、剣の鍛錬でもしてろ」
「はいはい」
寮に戻って。
「レアルタ」
「何でしょうか?」
「フィリオがさ、一生スクワットしてたんだ」
「一生、と言うのは?」
「ずうっとやってて、多分二千回くらいは余裕で超えてるんだけど、それでも息切れひとつしてないの」
「ええっ?それは……人間ですか?」
「人間でしょ」
「人間にそんなこと可能なのでしょうか……」
フィリオへの疑問が、全て解決する日はないだろう。
フィリオが答えてくれると言う異常事態が起きない限り。
そう確信してしまえるほどに、フィリオは謎に包み込まれている。
知りたい。




