いきなり男子会
*
「フィリオ」
「ん?」
「あいつと会うの久しぶりだったね」
「ああ。俺は別になんだが、お前は最後にあったのいつぐらいだ?」
「三つ前だよ」
「うわ、そんなに経ってたか」
「そうだよ」
一体なんの話をしているんだ?
あいつと会う、と言う発言から見るに二人は共通の誰かと会ったのだろう。
そいつとフィリオは少し前に会っていたが、ドルチェ様は久しぶりだ、と言うことだ。
矛盾が生じる。
まず、ドゥラーゴ特別自治領に人間はいない。
そして、特別自治領の竜が外に出ることはなく、特別自治領外で会うことは不可能。
旅行に行く前のフィリオの発言、「行けん事は無い。けど、だいぶ厳しいと思うぞ」から、特別自治領に行くのは久方ぶりととれる。
なら、少し前に会っているという発言は矛盾する。
それに、ドルチェ様の発言もだ。
時間で「三つ前」と言う表現はしないだろう。
「何日前」や「何年前」と言う表現のはずだ。
全く、意味がわからない。
「アロガンツァ」
フィリオが話しかけてきた。
「なんだ?」
「特別時治療を見て、どう思った?」
「戦力として欲しいと思った」
「あのさ、なんでそんなに戦争思考なの?」
「天使様と違って、人間は、特に貴族はみんなこんなものだ」
「それは天使を誤解してるけど、まあいいや」
天使を誤解?
この俺が?
物心ついた頃から聖書を読み耽り、暇さえあれば天使様に祈っていた、この俺が?
誤解なんてしていないはずだ。
引き下がりたいが、そんなことはしない。
ドルチェ様が「まあいいや」と言ったんだ。
それはこの話題の終わり、閑話休題を意味する。
そこでくってかかるなんて不敬なことはしない。
「いい機会だ、アロガンツァ」
「なんのだ」
「行く前に言っていた『国王や公爵を相手に戦争する場合のシミュレーション』ってやつ、するか」
いいじゃないか。
数年後には、しっかりと活用させてもらおう。
「まず、宣戦布告はどこでする?」
「宣戦布告する必要があるのかい?」
「宣戦布告しないなんて卑怯な真似をしたら、戦争で勝っても国民がついてこないからな」
「それもそうか。ありがとう」
天使様の役に立てたなら何よりだ。
「話を戻すぞ。宣戦布告なら、トラジェーディア丘陵一択だろ。ノーブル公爵領内だから、使節団とかの名目さえ作れば簡単に行けるし、ここは攻めにくいからな」
ああ、そこは同感だ。
トラジェーディアは防戦に向きすぎている。
だが、すぐに壁が現れる。
「だが、それだと真っ先に公爵と争うことになるだろう?」
「頭を使えよ。トラジェーディアまでの移動中に罠を仕掛けるんだ。初戦の地の利は俺たちにある」
そうか。
卑怯な気がするが、まあそれぐらいはいいか。
勝てば官軍だ。
「その先は?距離的にラステル公とヴィリャッコ侯、クァードロ伯の連合軍が来る。その次はデヴォツィオーネ伯とサンゼンイン辺境伯の連合軍だ」
「ノーブル公と戦っている間に、トラジェーディアの断崖を橋で繋いでおくんだ。戦況がキツくなったら崖の奥に移動して、敵が来る前に橋を落とせば良い」
卑怯な気がする。
だが、勝てば官軍だ。
「だが、敵の魔導は崖を挟んでも届くようなものもあるだろう?」
「そこの後ろ、海の先にはアッセーディオ砂丘がある」
「まさか、海を繋ぐと言うのか!?」
「ああ。その後は視界が悪い砂丘だ。そこで散り散りになって、追ってきた連合軍を各個撃破すれば良い」
「いや、いくらなんでも卑怯すぎるだろう!」
「そうだよ。それで戦争に勝てるなら儲けもんだろう?」
「いや、ダメだ!民はついてこない!」
「いや、もっと卑怯なことしても現に民はついてきてるじゃねえか。なあ、ドルチェ」
「そうだね。正直、これなんか目じゃないくらい卑怯だけど、民は何も気にしてない」
なんだ?
一体なんの話だ?
人獄大戦は負けた。
ここに卑怯も何もない。
それ以前の戦争は人々の記憶に残っていない。
一体なんの話だ?




