蔵の中のたからもの
朝には学園を発った。
その日は移動をするだけで、暇な一日だった。
二日間かけて、翌日の昼にやっと特別自治領に着いた。
そこはまるで幻想の中の世界だった。
空を見上げれば竜が数え切れないほど飛んでいる。
そこかしこで炎の吐息が見られ、幼竜の鳴き声が聞こえる。
一頭の竜が私たちの前に降り立ち、言った。
「人間よ、何用か。申せ」
フィリオが答える。
「族長に伝えてくれ。『一振りの友が会いにきた』と」
「その必要はない。すでに族長から話は聞いている」
「相変わらず用意周到だな、あいつは」
「何はともあれ、歓迎しよう。其方は族長の巣へきてくれ。それ以外は自由に観光するが良い」
フィリオは連れて行かれた。
私たちは自由にして良いようだ。
フィリオ様々だな。
*
族長の巣は久しいな。
あの頃を思い出す。
「久しいな、────」
「本当にな。涙が出てくるよ」
「お主から涙は出んじゃろうに。ところで、他の皆は元気にやっているか?」
「みんながみんな俺らみたいだと思うなよ。ルーチェとオウスクリータは死んだ。レーヴァテインもだ。師は、今は寝てる」
「そうだったか。時というのは早いものだな」
「ああ。今も生きてるのは、俺らを含めて三人だけだ」
沈黙が場を支配した。
竜が口を開く。
「なんの用だ。思い出話をしに来たわけでもあるまいて」
「そうだな。本題と行くか」
「なんじゃ」
「今から七年後、戦争が起こる」
「規模は?」
「大陸じゃあ収まらねえだろうな」
「承知した」
「敵は、わかっているだろうな?」
「もちろん。我らを侮辱した、あの若造じゃろう?」
「よくわかってるな」
「あの時代を生きておいて、これがわからぬ奴はいないじゃろう」
「それもそうだな。あと、俺の連れが世話になる」
「構わん。国交を閉ざしたわけではないしのぉ」
「腕が鈍って不安なら、六年後の戦争に顔出してもいいぞ」
「興が乗っていればな。さて、酒でも飲むか」
「そうだな」
本当に、あの頃が懐かしい。
七尊で自由気ままに暮らしていたあの時が。
今生、今からが締めくくりだ。
華々しく散る。




