軒先より
*
ドゥラーゴ特別自治領に来て二日目。
私たちは昨日の竜に領内を案内してもらっていた。
「質問があるんですけど、良いですか?」
「構わん」
「ここにはさまざまな種類の竜が住んでいると思います。種族同士で仲が悪かったり、勢力争いが起こったりしないのですか?」
「起きない。気の遠くなるほど昔は起こっていたそうだが、族長が我らを纏めてくださってからは起きたことがないな」
「ありがとうございます。気の遠くなるほど昔……。って、じゃあ竜は寿命がないんですか!?」
「そうだ。不老ではないが、不死ではある」
「そうなんですか!」
いつでもどこでもアリサは勉強熱心だな。
勉強のことなど考えずにこの経験を堪能すれば良いのに。
あれから一週間をかけて、特別自治領を一周した。
今日は族長の家の近くに泊まる。
海岸線を歩いていたから、海が見えないのは少し懐かしいな。
こういう時でも、日課を忘れてはいけない。
夜、みんなが寝静まったのを見計らい、私は外に出る。
ここは良い場所だ。
とても大きい針葉樹が辺りを埋め尽くしている。
いつもは平面的な動きだが、ここでは立体的な動きを試せる。
「ヴェン・インドッサーレ」
風を纏い、空を駆ける。
枝々を足場にして、どこまでも高く。
あの針葉樹の鋒まで。
針葉樹の頂点まできた。
上から見るのはいつでも心地よいものだな。
私より上位の存在である竜の間抜けな寝顔を観れるというのは。
ちょっと待て。
落ちる。
風で落下の衝撃は軽減できるとして、場所はどこだ?
考えなしに進んでしまったのが良くなかった。
着地地点がどこかがわからない。
いくら心配しても。
物事は為されるようにしか為されないものだ。
そこに後悔の念があるならば、今するべきではない。
自室に戻り、一人で、安心して息をつけるような場所でやるべきだ。
今することは、後悔ではなく、いかにこの状況を切り抜けるかを最優先で考えるべきだ。
つまり、何が言いたいのか。
私は、おそらく族長であろう竜の顔に着地した。
それも、鼻提灯を潰す形で。
そして、今、目が合っている。
「随分と無礼な人間がいるものだな。此奴もお主の連れか、フィリオ」
「ああ。すまんな。んで、なんの用だ、レーゲン」




