美の罪
七時二十分、私は部屋を出ることにした。
準備が終わったし、単純に暇だしな。
女子寮前で会うことにしよう。
ガチャ。
「おー。早いな」
フィリオはもう扉の前に立っていた。
私たちは歩き出した。
「ここからどれくらいの距離なの?」
「ん?歩いて三時間ぐらいだぞ」
は?
「いや、今から往復したらもう日が変わっちゃうよ!そんな遠いところなの?」
「バーカ。歩いて三時間って言ったんだ。レーゲンは風魔導使えるだろ。なら三十分で着く」
なんで知ってるんだ?
魔導車を稼働させたところはフィリオは見ていないだろう。
まあいい。
「じゃ、急ぐよ」
「うい」
「ヴェン・インドッサーレ」
風属性を意味する属格「ヴェン」。
「纏う」ことを意味する起格「インドッサーレ」。
この魔言はこの二つで構成されている。
基本的と言っていいだろう。
優秀なら十歳くらいでできるようになる。
フィリオの言った通り、三十分で着いた。
その間、フィリオは後ろ歩きで私を先導していた。
おかしい。
いくら急いでも距離を詰められなかった。
まだ余裕があるのだろう。
息切れもしていない。
「ここが、クオーレ台地。なかなかにいいところだろう」
クオーレ台地はいいところだった。
私の半分くらいの高さの草が生い茂っている。
近くには少しばかりの針葉樹。
冷たすぎない夜風が心地良い。
「こんなところで二人っきりだとなんかデートしてるみてえだな」
いや、それはダメだろう。
「オウスクリータに言うよ、その発言」
「別にいいぜ?」
「このクズ!オウスクリータがかわいそうでしょ!応えてあげなよ!」
「いや、オウスクリータはそう言う相手じゃねえんだ。残念ながら」
あれだけ自分に惚れているのを知っておいて、そのまま放置?
ありえない。
女の敵だ。
「ここまでの道、覚えたよな?」
「うん、もちろん」
「じゃあ、帰るわ。これ以上ここにいたらその剣で斬られそうだし」
「ちょ、待って!」
瞬間、フィリオは消えた。




