憂き目
翌日。
教室にイントゥリーゴ以外の生徒が集められた。
「まずはよくやった。ぶっちゃけお前らがこんなにできるとは思ってなかった」
フィリオが前に出て言った。
「今から話す内容は内緒な?この情報が漏洩すると戦争が起こりかねん。今はまだその時じゃない」
全員が頷く。
異論などあるはずもない。
「今回の首謀者はソーレンの専属使用人。独断だ。公爵の意思は入っていない。ソーレンにゃあキツい話かも知れねえが、事実だ」
ソーレンがうずくまる。
仕方ない、生まれた時からそばにいたある種の親のような人間に裏切られたんだ。
それも、十二歳という幼い時に。
ドルチェがそばに寄る。
横から、ソーレンを優しく包み込む。
腕だけでなく、翼も使って、全身で。
数十分が経った。
「イントゥリーゴはぶっちゃけ巻き込まれただけだ。ドルチェは殺したくてたまらないだろうが、あの使用人だけで我慢してくれ。アイツはこっちで預かる」
「ああ、それでいいよ。その代わり、頼みがある」
「なんだ?」
「ソーレンの使用人を天使にしてくれ。俺が選ぶ、信用できるやつに。この件でわかったんだ。人間は信用できない。フィリオは信用してるけど、逆に言うと、信用してるのはフィリオだけだ。フィリオが使用人になるわけにもいかないだろう?」
「……わかった。ちょっと計算が狂うが、まあいい。想定内だ」
計算が狂う、と言った。
計算とは、先々に起こる戦争のことだろうか。
なら、天使が戦争に関わるのは確定と言ってもいいかも知れない。
今回で計算が狂う要素は、新たな天使の登場以外にないからだ。
なら、悪魔も復活するのか?
悪魔対天使なら、決戦場は間違いなく地獄の大穴。
大穴から這い出てきた悪魔と、雲から降り立った天使。
自領で戦争が起こるサンゼンイン辺境伯は頭が痛いな。
「ありがとう」
「ちなみに、誰を推薦するんだ?」
「俺の姉だよ」
「……意外だな」
「信用できる人だよ。フィリオへの接し方は酷いだろうけど、ごめんね」
「構わん。みんな、これで話は終わりだが、質問はあるか?」
アロガンツァが挙手した。
「アロガンツァ」
「ソーレンを攫った目的はわかっているのか?」
「ドルチェだよ。ノーブル公はお前とソーレンを結婚させて、傀儡にしたかったんだとさ。天使と結婚したらそれができないだろう?」
「なら、ノーブル公は頭が悪いな。天使と結婚したら王家など遥かに凌駕する権力を持つのに」
「これは使用人の独断だって言っただろ。ノーブル公なら間違い無くそんなことをしない。アイツは頭が切れるからな。人を見る目はなかったみたいだが」
「フン、哀れなことだな」
「全く、その通りだよ」
その日は解散となった。
帰り道、私は考えていた。
フィリオはなぜ首謀者が使用人だと断定できたのか。
なぜノーブル公の目的を知っているのか。
使用人はイルコーヴォの森でドルチェに殺された。
尋問はしていない。
手がかりはないはずだ。
なぜだ?




