俗世
*
ラッキーだ!
まさか特級クラスから入学辞退者が出るなんて。
よかった、僕も特級クラスに入れる!
入学式はビックリしたなあ……。
灰色の見たことない髪の毛の人が首席で、その人の従者はあれだけ長い黒髪。
まるで悪魔じゃないか。
あの人たちとこれから六年間一緒に過ごすなんて、憂鬱だなあ……。
特級クラスは学年ごとに塔が分かれているのか。
他の学園の塔は近場にはない。
行く機会もないだろうな。
兄さんとは会えない、か。
もっとしゃべりたいんだけど……、仕方ない。
夏休みには喋れるはずだ。
教室に着くと、もう話し声が聞こえた。
みんな、社交的ですごいなぁ。
そういえば、この学園は国王と双公爵の長子が所属しているんだって?
みんな絶対社会経験豊富じゃないか。
公表会の時、僕は病気をしていていけなかったから、初対面だ。
まさか、他のみんなはもう仲良し!?
嫌だなあ……。
絶対輪に入れないじゃないか。
扉を開ける。
そこには、首席の灰髪の少年と、その従者。
そして、天使ともう一人の黒髪の少女がいた。
だが、彼はその光景になど目もくれていなかった。
教室の自席に座る、金髪の少女。
光を弾き返すような煌めく髪。
小さな顔。
長いまつ毛。
青く輝いた瞳。
整った鼻。
薄紅色の唇。
すべすべとした無垢な肌。
年齢の割に発達した胸。
引き締まった腰。
スラリと長い足。
その全てに、釘付けだった。
これからの教師の話が彼の頭に入らなかったのはいうまでもない。
彼が正気を取り戻したのは、自分の自己紹介の時だ。
こんなに美しい人がこの世にいるのか!?
どうしよう、興奮が抑えられない!
周囲の目線も気にならない!
……あれ?
なんで僕なんかをみんなが見てるんだ?
えっと、さっきまで何してたっけ。
自己紹介だ。
やばいやばい、全然話聞いてなかった。
「あっすいません……。イントゥリーゴ・デヴォツィオーネです……。次席合格のオウスクリータさんが辞退したので繰り上がり入学しました……。僕なんかが来てすいません……」
ああ、緊張した。
でも、そんなこと知るか!
僕は、あの人に話しかけるんだ!
あえて、彼の心情は語らないでおこう。
それはあまりにも凄惨で、言葉で表すことは不可能に近いからだ。
なにしろ、初対面で一目惚れした女が同じく初対面の男に純潔を奪われてしまったのだ。




