母体失踪
夏休みが終わった。
九月一日。
始業式の話は、いつも通り聞かない。
結局、夏休み期間中にフィリオと会うことはなかった。
毎日「仕事」をしていたのだろうか。
疲れないのか心配だな。
同じ学年の面々は、特に変わりはない。
フィリオとオウスクリータはいつも通りつまらなそうにしている。
おおかた、校長の話なんか聞かずに他のことを考えているのだろう。
アロガンツァとアリサは真面目に聞いている。
アリサとドルチェの席が入れ替わっているな。
ドルチェが頼んだのだろう。
ソーレンといちゃつきたいから。
一ヶ月ぶりだからか、一学期の頃よりも会話に熱が入っている気がする。
いや、ドルチェが公爵家に行っていた可能性もあるか。
ヒソヒソ話してるから、私に内容は聞こえないが。
その奥では、イントゥリーゴがいつも通り負のオーラを纏っている。
心なしか、前よりもっと強くなった気がするが、気のせいだろう。
始業式が終わり。
私たちは教室にいた。
相変わらずソーレンとドルチェがいちゃつき。
オウスクリータがアピールするがフィリオに軽くあしらわれて。
真面目組は一人で勉強する。
いつも通りの日常が帰ってきた。
その日は特に何もなかった。
寮に帰った後、いつも通りの筋トレ。
腕立て百回、腹筋二百回、スクワット五十回。
これを三セット。
なかなかに筋肉質な体になってきたが、まだ腹筋は割れない。
二年までには割りたいな。
剣も、なかなかに上達してきた。
勢いを殺さず、次に繋げる。
これを軸としてやってきたが、そろそろ限界を感じる。
部屋が狭い。
私の最終目標は動きながら、それも風魔導を使って猛烈に加速しながら使う剣だ。
走りながら振るう剣と止まって振るう剣とでは使用感に違いがありすぎるだろう。
どこか新しい場所が知りたいな。
フィリオに聞くか。
それがいい。
そう思い、翌日。
昼食時に質問しようにもできない状況になってしまった。
カーネが教室に入り、発言した。
「ノーブル公爵家令嬢ソーレン・ノーブル、並びにデヴォツィオーネ伯爵家子息イントゥリーゴ・デヴォツィオーネが行方不明だ。発見されるまで、このクラスは活動を停止する」
フィリオが口を出す。
「俺らも探せってことか?」
「そうだ」
「はいはい」
緊急事態とは、このことを言うのだろう。
同級生が行方不明になってしまった。
ドルチェが沈んでいる。




