憂いを断つ
それからの日々は、割とすぐに過ぎ去っていった。
まあ、当たり前か。
やることはない、いつも三人で談笑するだけ。
喋っている時間ほどすぐに過ぎていくものはないからな。
さてさて。
備えあれば憂いなし、と言うように、何か備えておいた方がいいのではと不安になる。
だが、何をすればよいのかわからない。
なら、どうしよう。
自分でわからないなら、誰かに聞くしかない。
誰に?
それはもちろん、彼だ。
「うぃっす」
「レーゲンか。ここに来るのアリサかアロガンツァだけだから割と新鮮だな」
「二人はフィリオにどんなこと聞いてるの?」
「アリサは勉強のこと。真面目過ぎて逆に笑えてくるな。アロガンツァは天使のこと。あいつめちゃくちゃ天使好きじゃん。なんでか知ってたりする?」
知らないのか。
知っているものだと思っていたが。
「あー、あいつは光神と結婚したいんだって。人類が『なんとなく』やってる天使信仰をもっと身近にしたいんだって」
「へー。崇高で高尚な思想をお持ちで」
「質問いい?」
「何?」
「この先、何が起こるの?」
「……へえ、面白い質問だな」
「具体的じゃなくていい。今から備えられることを知りたい」
「それは遠い未来?近い未来?」
そこはそんなに重要じゃないな。
重要なのは時間よりも大きさだ。
「より私が被る被害が大きい方」
「じゃあ、遠めだな。戦争が起こる」
まじか。
誰と誰のとかも聞けばフィリオは分かるだろうが、そこを聞くのは面白くない。
あえて聞かないでおこう。
フィリオに頼りすぎるとフィリオがいなくなった時に生きられなくなってしまう。
「その戦争は黒髪差別とかはあんまり関係ない。けど、巻き込まれるのは巻き込まれる。残念だがな。だから、強くなれ」
「了解!」
「強くなるためのアドバイスはいるか?」
欲しい。
欲しいが、やめておこう。
「何も行動しないでもらうのはちょっとね。行き詰まったら、また質問する」
「オッケー。頑張れよ」
戦争が起こる。
戦争と聞いてまず思い浮かぶのは人獄大戦。
だが、今悪魔は息を潜めている。
遠い未来と言っているから悪魔が関わるのはあり得るが、それでも悪魔は動かないとみていいだろう。
何せ、百年単位で動いていないんだ。
それに、悪魔は今地獄に短期で突入している勇者の対応で手一杯だろう。
次に思い浮かぶのが、人族の内戦。
戦争を起こせるとなると王家か公爵家。
うちが起こすのかもしれない。
まあ、いいか。
先のことは先のことだ。
天使が関わる戦いはないだろう。
まず、人が放棄する可能性は皆無だ。
天使側が人を攻撃する理由も見当たらない。
ないな。
強いて言えば、アロガンツァが求婚に失敗して王家が逆上することぐらいだろうか。
でも、そんなバカなことをしても公爵家たちはもちろん支持しない。
絶対に王家が負ける。
うちが王家になってるかも知れないな。
いや、ないか。
その戦争の後処理はドルチェとソーレンがするだろう。
あの二人、いつでもいちゃついてるよな。
ソーレンはほとんど女子寮にいないし。
私にそう言う相手はできないだろう。
この黒髪だ。




