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月卿雲客

「ね、フィリオ」

「なんだ?」

「親睦会って何したら良いと思う?」

「知るかよ」

「人は自分に従うのが当たり前すぎて仲深めるとかなかったんだよ 〜!何したら良いか教えてよ〜!」

「なんか意見ある人、この哀れな哀れなドルチェくんに何か案を授けてやれ」


この二人いちゃつきすぎじゃないか……。

みんなあっけに取られてるぞ。

こんな場で意見募集しても何も集まらないだろうに。


いや、一人いるな。

二人と仲が良くて、かつ社交的な人物が。


「みんなは知らないけど、私はお腹が空きましたよ!」


オウスクリータが言った。

やはりオウスクリータだったな。


「じゃ、食堂でも行こうか。フィリオ、地図とかある?」

「ねえよ」

「ありますよ!何言ってるんですか!えっと、特級クラスの食堂は教室出て道なりに進んで、十字路を直進すれば良いそうです」

「ナイス!!じゃ、みんなでいこうか」

特級クラス一年の面々は教室を出た。




食堂はとても広かった。

まだここには私たちしかいなかった。

なぜなら、この食堂は特級クラス限定であり、他の学年の特級クラスは授業中だからだ。

それでも、変わらず食堂は利用できるらしい。

勤勉なことだ。


「ビュッフェ形式みたいだね。じゃあ、一旦解散。料理をとったらこのテーブルに来て」


ドルチェが場を仕切るのになんの違和感もない。

天使だから、というわけでもないだろう。

これは、ドルチェ個人のカリスマ性だ。


「レアルタ、どれが良いと思う?」

「そうですねぇ、コロッケとかが美味しくていっぱい採りたいですけど、茶色だけだと味気ないので野菜もとりましょうか」

「そーだよね。好物だけってわけにもいかないか」

私は公爵家の娘だ。

世間体を気にする必要がある。

まあ、王太子の目は気にしなくて良いとは思うが、他の貴族やメイドはそういった情報を集めるためにも来ているからな。

レアルタにはそんなことはさせたくないが。


ドルチェのいるテーブルに戻った。

気になる点が二つ。

「フィリオはご飯食べないの?」

「ああ、食わん」

「どーやってるかは知らないんだけど、フィリオが飯食ってるとこ一回も見たことないんだよ!おかしいよね!」


どういうことだ?

ご飯を食べずに生きることなんて不可能だろう。

別に栄養を摂取する方法でもあるのか?

まあ、いい。

フィリオが謎に包まれているのはわかっていることだ。


もう一つ。

「ソーレン」

「……何か?レーゲン」

「どうして、ナイフを持つ手がそんなに震えているの?」

これを聞いた瞬間、ソーレンが目に見えて強張った。

「っそんなことありませんわ!冗談はやめてください!」

明らかに苛立っている。

普通ではない。

だが、掘り下げて良いものだろうか。


「そのご飯、自分で選んでないでしょ」

「なっ……」

急にドルチェが口を出した。

さっきまでとは違う、冷静な声で。

「そこの執事が選んだのかな?それが原因?」

ソーレンは黙っている。

「答えて。僕なら世界の全てが敵に回ろうと守ってあげられるから」


イケメンだな。

ソーレンはコロっと言っちゃうんじゃないあろうか。


ソーレンはポツポツと話し始めた。

「……家で、好きなものを食べれることはないんです。全て父親に決められて。それが解放されると思っていたから、嫌なんです」


「そっか。ちなみに、好きなものは?」

「ミートフォカッチャです」

「おお、俺のプレートにあるね。あげるよ」




そう言って、ドルチェは自分のミートフォカッチャをソーレンに口移しした。



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