日光と影
「ちょっと、この空気作った張本人でしょ?どうにかしなよ」
白髪が彼に言った。
「メイドよりも場の空気を優先しろと言ったのか?」
「あはは、相変わらずイケメンだね。女を最優先とは」
「どの口が言ってんだか。あと、別に付き合ってるわけじゃねーぞ」
気づいたが、この二人はやけに仲がいいな。
なぜだろう。
入学する前に接点があったのだろうか。
「ま、自己紹介でもしたら?せっかく首席合格なんだし」
「そーだな。てことで、全員聞いてるか?」
彼がみんなに呼びかけた。
そんなことを言わなくても、全員注目してるというのに。
「俺の名前はフィリオ。首席合格だ。特に言うことはない」
「自己紹介になってないでしょそれ。好きな食べ物とか趣味とか言ったら?」
「好きな食べ物はない。趣味も特にない。最近は趣味ってより仕事をしてるからな」
「はいはいそーですか」
相変わらず仲睦まじいこって。
「じゃ、次。オウスクリータ」
「指名いただきました!フィリオ様の従者のオウスクリータです!好きなのはフィリオ様で、嫌いなのもフィリオ様です!よろしくお願いします!」
言っている意味がわからない。
だが、聞いてはいけない気がする。
誰しも心の内に秘密は抱えているものだ。
探るのは得策とはいえない。
ましてや初対面なら尚更だ。
「次の人、どうぞ!」
「なら、次は俺だな。俺はアロガンツァ・ミナツィオーネ。この国の次期王だ。本来なら俺に敬意を払うのだろうが、この場には俺より立場の高い方がいる。だから、俺に敬意を払うことは不要だ。これからよろしく頼む」
おぉ、王太子にしてはまともだな。
あいつは天使を狂気的に信仰してるから、自己紹介で愛でも叫ぶのかと思っていたが。
この状況は王太子にとってすごく良い状況だ。
王太子の最終目標は光神と婚約すること。
理由は、人間が今している天使への信仰をより身近にするため。
天使との接点はあればあるほどいい。
次は私の番だな。
「レーゲン・ラステルと申します。私はこれまでこの黒髪のせいで虐げられてきましたが、ここには私以外の黒髪もいて驚いています。これから、よろしくお願いします」
ちなみに、この黒髪の中には今も剣が収まっている。
常に風魔導を使用して巻き付けるように隠しているが、地味に疲れるのが難点だ。
魔力は自然回復で追いつくから問題ないが、それはそれとして魔道を発動している分の脳内リソースはとられるわけだからな。
「ソーレン・ノーブルですわ。貴族しかいないものと思っていたので、天使様がいることに動揺しております。これから長い間、よろしくお願いしますわ」
綺麗な金髪だな。
ノーブル家は私のラステル家と双璧をなす大貴族。
ラステル家が地属性を操るのに対し、ノーブル家は雷属性を操る。
ソーレンは私とは違って紛れもなく公爵家を継ぐ器だ。
「アリサ・サンゼンインと申します。また悪魔共がきた際に大陸を守れるよう、精一杯鍛えます。これから、よろしくお願いします」
殊勝なことだな。
正義感に溢れていて、非常に好感が持てる。
ぜひ頑張ってほしい。
「じゃ、次だね。俺はドルチェ。見ての通り、男の天使だ。男の天使っていうのは大変でねー!天国でも敬われるんだ。そんなんに疲れて堕ちてきたから、ここでは俺に敬語とか使わんでね!次!」
ドルチェの自己紹介が終わった。
さてさて、困った。
入学発表では特級クラスはこれで終わりのはずだが、もう一人いる。
見るからに陰気そうな、紫髪の男。
「あっすいません……。イントゥリーゴ・デヴォツィオーネです……。次席合格のオウスクリータさんが辞退したので繰り上がり合格しました……。僕なんかがきてすみません……」
嫌なやつ。
なんか嫌なやつ。
堂々としろよ!
大陸北東部を治める大貴族、デヴォツィオーネ伯爵の倅だろうが!
いや、こいつ次男だったか?
確か長男が生徒会長とかいう完璧超人だったはず……。
なら仕方ない。




