異口異音に囀て
午前七時、私は起きた。
朝食など、諸々の支度と移動で一時間はかかるだろう。
授業開始は九時。
一時間早く着くのが貴族社会のマナーだ。
「レアルタ、行くわよ」
「はい、お嬢様」
寮から教室へはあまり時間がかからない。
寮と教室は別の校舎だが、特級クラスは寮の広間から教室まで渡り廊下が作られているからだ。
成績が良いものに優しい、素晴らしい学園だな。
教室の扉の手前に来た。
教室からは話し声が聞こえる。
声の数的に、三人はいるだろうか。
「ここからは、お別れですね。頑張ってください、お嬢様!」
「ああ」
教室に使用人が入ることは禁じられている。
授業は王立学園に入学したものだけが受けられる特別なものであり、使用人が受けて良いものではないからだ。
コンコン
「失礼します」
「おー、きたか。四人目だな」
「私と同じ黒髪じゃないですか!親近感湧くなあ!」
「俺とは真反対なんだけどね」
そこにいたのは、灰髪と、黒髪と、白髪。
色の存在しない世界だった。
「まあ、座って」
白髪の男性が席を指さしてから手招きした。
誘われるままに、私は席に着く。
正直、困惑して頭が回っていなかった。
「まずは自己紹介とかしたいと思ってるだろうが、あえてしない。どうせ話す機会はあるんだから、今は素性を知らない状態でしか話せないことを喋ろう。最も、髪色で察しているかもしれないが」
ああ、そうだ。
髪色で察している。
首席合格の二人と、天使。
それも、男の天使だ。
天使は、基本的に女しかいない。
男は百分の一の確率でしか生まれないのだ。
男の天使は人間が見れるような存在ではない。
「今三人で話してたのは、髪色と魔力はあまり関係ないんじゃないかってこと。君はどう思う?」
黒髪の女の子が言った。
これは、今すぐに答えるべきことだ。
わざわざ前置きまでしたんだ、天使について考える時間ではない。
「私でも魔導は使えるし、関係ないとは思うのですが、それは黒髪に限った話だと思います」
「私も同じ意見なんだ!私も魔導使えるしね」
そうなのか。
でも、二人の他の黒髪にはない共通点がある。
「でも、年齢とかが関係あるかもしれません。ほら、黒髪でこの年齢まで生きている事例ってなかなかないですし」
「そうだね〜。そこの白髪はどう思う?」
「俺は人間が使う魔導は使えないんだ。でも、人間には使えない魔導は使える。だから白髪は他とは違うとも考えられるんだけど、黒髪と人間は同じで白髪だけ違うっていうのもなんかアンバランスだよね」
「そだねー!」
「おっと、気付かぬうちにもうみんな来てるぞ」
本当だ。
慌てて周囲を見ると、生徒が集まっていた。
王太子。
ソーレン家令嬢。
空色の髪をポニーテールにした少女。
彼女はおそらくサンゼンインの娘だろう。
そして、見るからに陰気な雰囲気を出している紫髪の男。
少し髪色が薄い気もするが、気のせいだろう。
あれ?
特級クラスは七人だった気がするが、気のせいだろうか。
間も無くして、教師が教室にやってきた。




