地角天涯
「あー、察しの方もいるだろうが、俺はフィリオ。首席合格者で、ついでに平民だ」
瞬間、ホールが話し声で満ちた。
いくら合格者発表で知っていたといえど、平民が満点という事実を簡単に信じた人はほとんどいなかったからだ。
「俺の髪を見て、おかしいと思った人もいるだろう。一見、天使と悪魔のハーフにみえるからな。そんなことはどうでもいいんだが、この髪を見てなぜおかしいと思った?」
突然の問いかけに、周囲は沈黙した。
「そこの、金髪の女」
彼はノーブル家令嬢を指差して言った。
「私……ですか?」
「そうだ。答えろ」
「単純に、天使と悪魔は相反する存在だからです」
「なぜだ?」
「だって、悪魔は人獄大戦で侵攻してきた側で、天使はそれを食い止めて……」
その発言に、多くの者が納得の声を上げた。
「それじゃ、人獄大戦は天使が裏で糸を引いていたと言ったらどうだ?」
「そんな、あり得ません!」
「なぜそう言える?天使なんか見たこともないくせに?」
「それは……」
「逆もそうだ。悪魔にやむを得ない事情があったのかもしれん。まあ、もちろん史実通りの可能性もあるが。結局何が言いたいのかというと、お前らは何も自分の目で見ていないということだ」
そういうと、せっせと扉の方に戻っていってしまった。
歩いている彼には、貴族たちからブーイングが浴びせられた。
自分たちを馬鹿にされたこと。
そして天使教に反抗するような言葉。
ブーイングされて当たり前だ。
彼を入学取り消し、さらには今捕まえて投獄、処刑せよとの声も上がった。
だが、それは一瞬にして掻き消された。
扉を開けた途端、警備兵が数百人倒れていたからだ。
王立学園の警備は、大陸で最も強い魔導士たちが集められる。
王族や高位貴族が集まる、最重要地点だからだ。
その警備兵がやられているということは、今ここに彼に反抗できるものがいないことを示していた。
その後、一応入学式は再開された。
だが、誰もそのことに興味がないことは明らかだった。
彼の正体はなんなのか。
その従者の存在は?
天使や悪魔と接触した過去があるのか。
そして、天使教は正しいのか。
未来ある生徒たちに植え付けられた「危機感」
これは、誰にも拭い去ることはできなかった。
入学式が終わり、私は寮に案内された。
寮生活には、使用人を一人だけ連れて行くことが許可されている。
私は、もちろんレアルタを連れてきた。
寮は私とレアルタの二人部屋だ。
授業は明日から。
彼と話すのが楽しみだ。




