天使の血
入学式。
王立学園に向かう馬車の中に、私はいた。
「お嬢様、入学式を迎えましたが、どんな気分ですか?」
「首席入学の挨拶が楽しみ、かな」
「そうですね!どんな挨拶するんでしょう!」
割と緊張しているが、レアルタはいつも通りだ。
こっちの緊張がほぐれてくる。
ありがたい。
入学式、ホールに着いた。
歩いているだけでジロジロ見られ、時には怯えられる。
黒髪のせいだ。
もう慣れたんだが、悲しいのは悲しいな。
例年、保護者は伯爵以上の貴族のみ参加できる。
生徒の数は膨大だが、保護者は少ないからホールは割と空いていた。
もちろん、クソ親父はいる。
こなかったらよかったのに。
クソ親父を横目に、私は席についた。
「これより、王立学園入学式を挙行する
まず初めに、現国王の……」
長い話が始まった。
こう言う話は聞いても意味がない。
考え事をして時間を過ごすのが吉だ。
国王の声はよく通る。
手に持っているアレのせいだ。
拡声の魔導具、通称「マイク」。
天使が数百年前に人類に授けた、大陸に一つしかない魔道具だ。
周囲を眺める。
どうやら、席は試験順位順になっているようだ。
私の左に王太子、右にソーレン家令嬢がいるから。
あと、なぜかわからないがソーレン家令嬢にものすごく睨まれている。
なぜだろう。
今回が会うのは二回目、初めての時の公表会では何も話していない。
何か恨まれるようなことをしただろうか。
右を見にくいな、左を見よう。
王太子の奥に主席の二人がいるはずだ。
おや?
王太子の奥二席は空席だ。
欠席だろうか。
心配だな。
「それでは、次に校長にお言葉を……」
やっと国王の話が終わったのか、長いぞ。
そう、私が心の中で愚痴っている時。
バタアァァン!
ホールの扉が開いた。
周囲が一気にざわつく。
それもそのはず、ホール外には厳重な警備があるからだ。
どうやって入ってきたのだろうか。
「おお、もう式始まってんのか」
「だから言ったでしょ!遅刻だって!」
「別に遅刻しても良くねえ?」
「それはそうですけど!」
誰もが息を呑んだ。
その態度に、ではない。
その姿にだ。
一人、男の方は灰色の髪。
白が混ざっていると言うことはエルフだろうが、にしてもおかしい。
だって、悪魔と交わってできた子供ということになるのだから。
そもそも、人間の黒髪は私の年齢まで生きている事例すらない。
かといって、天使と悪魔が交わるというのも考え難い。
今、この場に現れた男は全てが謎の存在だ。
女の方も、謎だ。
私と同じ黒髪。
だが、床に髪の毛を引き摺っている。
身長は高くはないとはいえ、それでも百センチくらいはありそうだ。
人とは思えない。
「何、首席入学者の言葉とかあったっけ?」
「ありますよ!確か生徒会長の言葉の次のはずです!」
「あとどれくらい?」
「今が校長の話っぽいので、その次の次ですね!」
「長えな。もうマイク奪っちまおーか」
「マジですかぁ?」
灰髪の男は壇上に上がり、校長からマイクを奪い取った。




