齧指痛心を偽って
「王立学園入学試験 結果
特級クラス
フィリオ 四百点
オウスクリータ 四百点
アロガンツァ・ミナツィオーネ 三百十点
レーゲン・ラステル 三百点
ソーレン・ノーブル 二百九十五点
アリサ・サンゼンイン 二百八十点
ドルチェ 二百七十五点
一級クラス
イントゥリーゴ・デヴォツィオーネ 二百六十点
………」
は?
待て待て、どう言うことだ?
四百点が、二人?
そのどちらもが苗字がない、つまり平民?
どうなっている、おかしいだろう!
他にも特級に平民がいる!
一体、何があった!
結果の確認を終えて、私は馬車に入った。
そこには、すでに確認を終えた王太子が待っていた。
「おい、黒髪。此度の結果、どう考える?」
「全くもってわかりません。満点なんて史上初でしょうし、それが二人とも平民とは……。何が起こっているのでしょう」
「さあな。俺にもわからん。ただ一つわかることは、今年の特殊問題は去年発見された理論が三つ、他の七つは未解決問題だったと言うことだ」
「そんなに未解決問題が多かったんですか!?」
「ああ。悔しいが、問題を読んでも意味がわからなかった」
未解決問題が七問出題されたテストで満点を取る。
これはどう言うことか。
未解決問題の解答があっているか実験し、それで正しく動作すれば正解だ。
つまり、膨大な懸賞金がかけられている未解決問題の解答を7つも知っておきながらそれを報告しなかったと言うことになる。
何が目的なのかわからない。
なぜ知っているのか。どうやって知ったのか。
いつ?
どこで?
平民風情が?
わからないことだらけだ。
まあ、わからないことは考えていても仕方がない。
入学式は一週間後。
それまで体を休めることにしよう。
*
「結果見てきましたよ!」
「おお、どうだった?」
「二人とも四百点、満点でした!」
「そうか」
「リアクション薄いなー!もっと喜んだらどうですかぁ?」
「別に。当然だしな」
「えー!カッコつけてないでさぁ!」
「いや、ほんとに」
「えー!」
*
「なぜ一問間違えた。言い訳を聞こう」
「世界地理の問題で、名前すら聞いたことない男爵家の問題を出されました。私の勉強不足が原因ですわ」
「そうか。だが、ラステル公の娘は満点だ。反省しろ」
「申し訳ありませんわ」
部屋に戻ると、急に足から力が抜け、ベッドに倒れてしまった。
「はぁ……」
ノーブル家令嬢として。
次期公爵として。
王太子の妻になる者として。
私は高貴でなければいけない。
弱さを隠し、期待に応え続け、周囲を照らすような。
疲れてしまった。
毎日十二時間、この三年間毎日欠かさず勉強してきた。
でも、負けてしまった。
公表会の時に見た、あの女に。
私が周囲に気を遣って笑顔を貼り付けていた時に、「我関せず」みたいな雰囲気を醸し出していた、無表情の女に。
あの憎き黒髪に。
ため息が漏れる。
今夜、これが止まることはないだろう。
*
「よく特級クラスに入学したな。これからも家の為に励め」
「そのつもりでございます」
部屋に戻る時、私は胸元からペンダントを取り出した。
その中には、一枚の写真。
私が大好きな、爺。
家の為に犠牲になった、爺。
髪がない、爺。
「家の為に励め」だと!
爺を捨て駒にしたこの家に返す恩なんてない!
誰が従うんだ!
*
「そう、特級クラスには入れなかったのね。お兄さんは首席だったのに。まあいいわ。あんたとアペルトが違うことなんてわかりきっているもの」
兄さん。
帰ってきてよ、兄さん。
兄さんがいなくなってから、母さんは変わっちゃったんだ。
戻ってきてよ。
ああ、だからダメなんだ。
兄様、だろう。
母様、だろう。
そんなこともわからないから、僕は特級クラスに入れない。
兄さん、帰ってきてよ!
ダメだと言ってるだろう。
兄さん!




