偶像に祈りを捧げ、偶像に唾を吐く
結果的に、王太子の弱みは握れなかった。
残念だが、、仕方ない。
自分に新たな視点をくれたことは感謝しよう。
「盲目的な天使への信仰」か……。
天使に対して盲目的信仰をしているなら、逆はどうだ?
人類は、「悪魔に対しての盲目的な憎悪」をしているんじゃないか?
その通りだな。
そのせいで、私は黒髪なだけなのにとばっちりを受けている。
迷惑千万だ。
人獄大戦の生き残りなんて全員寿命で死んでいて、悪魔を見た人間はこの世にいないのに。
よし、黒髪や悪魔について調べよう。
もしかしたら、悪魔が何かの理由で戦わされていただけかもしれない。
せっかく、書庫の塔には宗教に関連する資料も残されているんだ。
王太子と同じように夜にでも調べてみよう。
昼は監視されていて、活動範囲が狭いからな。
書庫の塔は、公爵家の書庫とは比べ物にならないほど広い。
王太子が昼も夜も書庫の塔にいるわけだ。
一日一冊読んだとしても、悪魔の本だけでも読み切る前に学校生活が始まってしまう。
そしたら寮生活、読めなくなるな。
ただ、こればっかりは解決策が思い浮かばない。
地道に読むしかないか。
書庫の塔は管理が厳重で、毎日日中に三十人程度の使用人が全ての本をチェックする。
盗んだとしても、すぐにバレてそれを口実に処刑されるのがオチだ。
数年前と同じように、昼に寝て夜に起きる生活をするしかない。
まあ、私はあの生活が嫌いではないが。
でも、起きている時間の大半を王太子と過ごすのは少し嫌だな。
本を読み漁り始めて数ヶ月。
気づいたことがある。
「悪魔を悪く書いた本」しかない。
考えてみれば、当然だ。
本は富裕層にのみ閲覧が可能なもの。
そんな有力者が万が一「悪魔を支持する」ようになってしまったら。
それが集まって、「天使教に一石を投じる事態」が起こってしまったら。
それはとても都合の悪いことだ。
それを起こさないためには、そんな本を書かせないのが一番手っ取り早い解決策だ。
本を書けるのも、また有力者しかいないのだから、そこに王族が圧力をかけるだけでいい。
困ったな。
悪魔に対しての人類の見方ではなくて、悪魔の実態が知りたいのに。
そうじゃなきゃ客観的に判断できないからな。
だが、人獄大戦期の人類はそんなこと考えなかったらしい。
そんな本はどこにもなかった。
かといって、他にやることもない。
無益だとわかっていながらも、悪魔の本を読み漁る生活が続いた。
王城に移住してから三年が経ち、私は九歳になった。
本漁りは無益だった。
三年で、王太子とは親密になった。
と言っても、恋愛に発展するような気配は微塵もないが。
宗教観などのテーマで、対等に語り合う機会が増えたように感じる。
九歳で何があるか。
それは、三年後につながる。
十二歳は、王立学園に入学する年だ。
王立学園にはクラスがいくつかある。
特級クラス、Aクラス、Bクラス……。
もちろん、特級クラス以外に入学するなんてあのクソ親父が許さないだろう。
クラス分けは入学試験の成績で決まる。
つまり、何が言いたいか。
受験勉強の始まりだ。




