天下の城
王城に来て一年。いまだに親しく話すのはレアルタしかいないが、まあいい。
そんなのは慣れた話だ。
王城全体の地図を覚えるのに一年もかかってしまった。
公爵家とは比べ物にならないほど広いからな。
仕方ない。
王城は、大陸中央にあるスクード山脈に背を向ける形で建てられている。
王室や王の寝室など、王に関する部屋がスクード山脈側に敷き詰められており、常時厳重な警備がある。
他は中庭(とは言っても牧場があるくらい広い。もはやこれは中庭ではなく庭ではないか)が五つ、来賓室が三十余り、使用人室が数え切れないほど。
他にも、宮廷食堂や娯楽室など、様々な施設が揃っている。
そして、その全てが王室周辺を守るように監視されている。
スクード山脈とは逆側に、独立した四つの塔がある。
そのうち一つは書庫、一つは礼拝堂、一つは温室となっている。
最後の一つは城内でも徹底的な情報統制がされていて、現段階ではわかっていない。
前述した通り、王の部屋には警備がいるので王の弱みを握るのは諦めた。
なら、息子の部屋はどうか。
息子の部屋にも警備兵はいるが、王都は比べ物にならないくらい少ない。
そして、王は移動の時にも警備兵がつくが、息子はそれがない。
やった!
流石に昼間からつけていたらバレるだろうが、夜ならバレるまい。
私は公爵家で三年間も夜にバレずに書庫に行っていた経験がある。
バレるようなミスはしない。
この日から、私の王太子室前の張り込みが始まった。
夜、使用人が寝静まる直前くらいに動き出す。
王太子室の扉が見えるくらいのどこからも四角になる位置を見つけた。
そこに居座る。
扉が開くのを監視する。
これを、夜が明けるまで続ける。
王太子がどこにも行かなかった日は仕方ない。
折れずに次の日も張り込むだけだ。
流石に一生寝ないことは不可能だから、三日に一回は張り込まずに寝たが。
張り込みを始めて三ヶ月、ようやく王太子が動き始めた。
これを静かに追う。
誰にもバレないように。
王太子は中庭を超えた。
どうやら、書庫の塔に向かっているようだ。
だが、なぜだろう。
わざわざ書庫の塔まで行かなくても、王城内には別の書庫がある。
ほんの数は段違いかもしれないが、そのために三十分も歩くくらいなら書庫でいいと思うのだが。
書庫の塔に入って行った。
階段を上がっていく。
見失わないよう、私も階段を登る。
階段の果てには、一枚の分厚い扉があった。
物音を立てないよう、慎重に開ける。
扉を開けた奥には、王太子アロガンツァ・ミナツィオーネが仁王立ちをしていた。
「コソコソと嗅ぎ回っているな?なんのようだ。黒髪」
まずい。




