流転したとて
「黒髪は殺さねばならぬ!だが!公爵の言い分には同情の余地があるのも事実!よって!その黒髪を徹底的な監視下に置く!これからは王城に住め!」
「承知いたしました!」
おっと、そう展開するか。
まあいい。
公爵家でやりたいことなんてないからな。
これからは、「公爵に教育された黒髪」を演じるとしよう。
この出来事の後は、特に何もなく公表会が再開した。
サンゼンイン辺境伯やデヴォツィオーネ伯爵などの高位貴族の長子が公表され、その後に子爵や男爵などの低位貴族の長子が公表された。
そのあとはもう普通のパーティーだ。
貴族家当主が酒を飲みながら語り合っている。
子供の入る隙などなくなってしまったな。
私に近づく男が一人。
「これから我が家に住まうそうじゃないか。俺の邪魔だけはするなよ、黒髪」
うっわあぁぁぁ……。
典型的な嫌な貴族じゃないか。
こんなのが次期王とは国の未来が心配だ。
世間的には普通なのだろうがな。
「わかりました。これから、よろしくお願いしますね」
「フン。せいぜい頑張ることだ」
そう吐き捨てて、彼はノーブル家調子のところへ向かった。
あれがアロガンツァ・ミナツィオーネ。
これからの王城生活では顔を合わせることも多いだろう。
先が不安だ。
案の定、アレ以降は私の元に寄りつく者は居なかった。
それでいい。
私も人と話すのは得意じゃないし、ましてやこれから常に猫をかぶらなくちゃいけないんだ。
今日くらい休みたい。
私は公表会が終わるまで部屋の端に佇んでいた。
公表会翌日。
私はまたラステル領から王城へと向かっていた。
手ぶらだ。
持って行く荷物はない。
いつも通り、剣は髪の中に隠してある。
馬車の中には二人。
現代の馬車は素晴らしいな。
目的地を馬が知っているなら手綱を引かなくてもそこまで動いてくれる。
余計な人物がいないというのはいいことだ。
そんなわけで、私とレアルタ以外はこの場にいない。
「急に王城まで来させることになってすまない」
「いえいえ!お嬢様が謝らないでください!孤児院のことはお嬢様が公爵に頼んでくださったので、私に悔いはありません!」
レアルタは本当にいい子だ。
私の元にいるのが勿体無いくらい。
「やっと来おったか、黒髪!お前の部屋は一応用意してやったぞ!黒髪でも公爵の娘なことは変わりないからな!」
嫌になってきた。
部屋に閉じ込められていた頃の安息の日々に戻りたい。
まあ、仕方ないか。
「ありがとうございます。こんな黒髪にも部屋を用意してくださるなんて、感謝の思いが溢れるようです!」
無反応で国王は退出。
嫌になってくる。
何か楽しみが欲しいところだ。
何かないか?
そうだな……。
あのクソ国王か、その息子の弱みでも握るか。




