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妄言にも程がある

閉鎖された馬車の中には、四人の人間がいた。

ラステル公爵とその執事、ラステル家の娘、その専属メイド。

彼らの馬車が向かう先はミナツィオーネ王国王都ミナツィオニス。

大陸一の大都市だ。


「今日、お前の存在が世界に明らかになる。非難の目を向けられ、公爵家としての力は地に落ちるだろう。お前のせいだぞ」

そんなことを言われてもな。

命がかかっていたら誰だって抵抗するだろう。

「すみません」

「チッ……。ハァ……。」

ため息か。

いくら何でも態度が悪すぎるだろう。


王城についた。

馬車から出る直前、私は布に包まれた。

姿を家のもの以外に見せるわけにはいかず、国王たちが見守る神聖な場でお披露目されるのが望ましいからだ。

このしきたりには感謝しておこう。

出なければ、私は王城に入る事すら許されないのだから。


「それでは、ただいまより王太子公表会を開始する!」

国王スフロンタート・ミナツィオーネが開催の言葉を言い放った。

「尚!今回より、変更点がある!これまでは各貴族の長子が六歳になり次第各々の貴族家にて執り行ってきたが!今回からはその場を王城に統一し!一度に全ての貴族家の公表会を行うことになる!そのために全貴族家は六年前に長子を産んだ!」

おお!

衝撃の発表だ。

これから先は絶対に同い年同士で結婚できるということか。

素晴らしいじゃないか。

「それでは!まずは我がミナツィオーネ王家が長子!アロガンツァ・ミナツィオーネのお披露目だ!」

はらりと、布が解ける音がした。

私は布に包まれていて、どうなっているのかはわからないが。

それでも、会場を包み込む歓声から盛り上がり方ぐらいはわかる。

とても盛り上がっているな。

王家だから赤髪を継いでいるのは当たり前として、よほど髪が長かったか。

そうでなければ説明がつかないほどの盛り上がり方だ。

「静まれ!」

歓声がぴたりとやんだ。

「次に!大陸東部を治める大貴族!ノーブル公爵家の長子のお披露目だ!」

また、布がはらりと解ける音がした。

先ほどと同じくらいの大歓声。

こちらも、ノーブル公爵家代々の金髪を継いでいて、髪が長いのだろう。

あと単純に可愛いのかもしれない。


次だ。

次が私。

この公表会を、公爵家の権威を、どん底に落とすのだ。


「静まれ!」

歓声がぴたりとやむ。

この瞬間が、私には死刑執行前のような気がしてならなかった。

「次に!大陸西部を治め!ノーブル公爵家と並ぶ大貴族!ラステル公爵家の長子だ!」


布が落ちる。

目の前には、数えきれないほどの、私を見て恐怖の色を浮かべる貴族家の当主と、その傍にいる布の塊。

そして、烈火の如く怒り狂った現国王、スフロンタート・ミナツィオーネの姿。


「どういう事だこれはぁ!今すぐその者の首を切れぇ!」

警備員が動き出した。

「お待ちください!国王陛下!」

ラステル家当主、カーサ・ラステルが言い放った。

「何じゃぁ!?言い訳か!」

「いいえ!我がラステル公爵家からこんな黒髪を出してしまった理由を言わせてください!」

実の娘に向かって「こんな」って……。

「言ってみろ!理由次第ではお前の首も刎ねるぞ、公爵!」

「私と妻、ポヴェイロの間に生まれた子は黒髪でした。本来ならばすぐに殺し、次の子供を産ませることでしょう!幸い、この黒髪が生まれたのは年の初めで、まだもう一人仕込んでも年内に産めるだけの期間はあった!ですが!我が妻は黒髪を産んでしまったというショックで倒れてしまった!妾に産ませればいい話だった!だが、私にはできなかった!愛する妻を裏切ることは!できなかったんです!」

少しの間、沈黙が場を支配した。

ラステル公爵は続けた。

「だから!せめてこの黒髪は国王陛下に認めていただけるよう、教育いたしました!幼い頃より魔術を学ばせ、ラステル領内を根城にしていた盗賊を単騎で制圧という実績を成し遂げました!これからわかる通り!こいつは黒髪だが制御は可能です!せめてポヴェイロが目を覚まし!新たな子を宿すまで!死刑は待っていただけないでしょうか!」

おいおい、嘘八百じゃないか。

私は幼い頃から教育を受けてはいないし、ましてやあんたの制御下にいるわけでもないぞ?

まあ、この場を誤魔化すためだろうがな。


さてさて、国王はどう返事するのだろうか。




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