公爵家
「この世界は不平等に満ちている。
貴族は贅沢をし、貧民は飢えに耐え忍んで生きている。
前述した通り、この世界で最も尊い存在は天使だ。
では、次に尊い存在は何か。
王族だ。
ミナツィオーネ王国。
この国の起源は詳しくは判明していない。
あるのは、史実が途絶えるほどの悠久の時間、グライヒ大陸はこの国が支配していると言うことだ。
ミナツィオーネ王国以外の国は一千年に渡って作られていない。
それほどまでに、ミナツィオーネ王国は磐石だ。
ミナツィオーネ王国は貴族制だ。
これまた史実が途絶えるほどの昔から連綿と続く五つの家を軸に、子爵や男爵が領地を治めている。
ノーブル公爵家。
グライヒ大陸東部を治める大貴族で、主に工業が発展している。ノーブル領一番の大都市デボレッツァは、他の東部小貴族領の特産品が集まり、重要な交易都市となっている。
ラステル公爵家。
グライヒ大陸西部を治める大貴族で、ノーブル公爵家と共にミナツィオーネ王国を支える両翼となっている。主に魔導産業が発展していて、特に消費魔力を減らす魔道具などは国の基幹産業になるほどの収益を誇っている。」
ここまで読んで、私は本を閉じた。
なぜか。
聞いたことがあるからだ。
私が閉じ込められているこの部屋。
ここは今は使われなくなった物置のような場所なんだが、小さな窓がある。
窓から外を覗くと、
覗くと、
窓地味に高いんだよ!登れないじゃないか!
はぁ、はぁ。
テッテレー!私は窓の縁に登ることに成功した!
まあそんなことはどうでもいいんだが。
そう、ここからは玄関が見える。
うちの家はかなり大きな家で、確か玄関にデカデカと看板があったはずだ。
私がこの部屋に運ばれる時にチラッと見えた、と思う。
やっぱり!
玄関には看板があった。
そして、そこには「ラステル公爵家」と書いてあった。
私、国を支える大貴族の一人娘らしい。
なんで一人娘かわかるかって?
廊下でメイドたちがよく話しているからな!
「まだ旦那様のお世継ぎはできないのですか?」
「ええ。奥様があの忌み子を出産なさってからショックで倒れてしまったようで。回復の目処も立っていないそうなんです」
「そうですか。奥様と旦那様の純愛は美しいですが、国の一大事となると考えものですわねえ」
「ほんとにねえ。いっそのこと、メイドにでも産ませれば良いものを」
「あっ。先輩、自分が産んであわよくば妾の地位を、っとか考えてるでしょ!」
「あっ。ばれた?」
「ばれますよ!隠せるわけないじゃないですか!」
こんな会話がな!
うちのメイドは強かが過ぎるだろうに!
情報を整理しよう。
ここはグライヒ大陸のミナツィオーネ王国。
百年前まで大陸と地獄は戦争をしていて、それを天使たちが平定したことから、天使たちは信仰の対象で、魔族は迫害の対象になっている。
私は、ミナツィオーネ王国の公爵家であるラステル公爵の娘、レーゲン・ラステルだ。
残念なことに私は黒髪、迫害対象だ。
そして、私以外に子供はいない。
そして、今後できる可能性も少ないだろう。
今更作るつもりなら、もうとっくに作ってるだろうからな。
新しく子供は作れないが、今いる子供は黒髪だ。
そして、公爵家の血は途絶えさせたはならない。
だから、私は生かされている、と言うことだろうか。
私が生き残るためには、どうすればいいだろう。
私が生きるための条件は、ラステル家に子供が生まれないことだ。
そのためには、母親に今後もずっと眠っていてもらう必要性がある。
他の女の問題は今は考えるだけ無駄だから考えない。
母親に毒を盛るか?
そうしたら、私は生きていくことができるだろう。
だが、問題が二つある。
まず、毒をどうやって用意する?
この部屋はこの本以外何もないし、私に毒の知識もない。
そして、警備兵の目を掻い潜って母親の寝所に辿り着かなければならない。
生後一ヶ月の赤ん坊が?
無理だろう。
かといって、他に方法もない。
どうすればいい?
何がある?
何が……、本がある。
この本はまだまだ続きがあるんだ。
これを全て読んでからでも遅くはないんじゃないか。
本読みばっかで物語が進まねえよ




