手際がよろし
家に帰った日。
私の報告が虚偽ではないか確認するために斥候団がディスクオリ遺跡に送られた。
今日はその斥候団が帰ってくる日だ。
コンコン
「失礼します。お嬢様、公爵がお呼びです」
そんな怯えた顔で言われてもな。
逆に申し訳なくなってくる。
「わかった。すぐに行く」
今気付いたが、ずっとあの橙髪のメイドが連絡係をしている気がするな。
褒美をつけておこう。
「お前、これからも私と公爵の連絡係をしろ。給与を二倍にするよう父に言っておく。いいな」
「っ!っはい!ありがとうございます!」
「名前は?」
「レアルタと申します!」
公爵の部屋についた。
「失礼します」
「来たか」
「私の報告に虚偽はありましたでしょうか?」
「……いや、悔しいことになかった。約束だ、お前の生を国王に嘆願してやる」
「感謝いたします」
よし!
これでとりあえずの平穏は保たれた。
「それに付随して、お前にも次期公爵として生きてもらう。部屋も広くするし、ご飯も上等なものを与える。外出はするな。通常であれば六歳までだが、お前はその髪色だ。学校までは外に出ることを禁ずる」
「承知いたしました」
「何か質問はあるか」
このタイミングで言ってしまおうか。
「質問ではないのですが、一つ聞いて欲しい願いがあります」
「何だ?」
「レアルタというメイドの給料を二倍にしていただきたいのです」
「理由は?」
「これまで私に対する連絡係や食事の配達などを一手に担ってもらっていたので」
「わかった。なら、そいつをお前の専属メイドにするのはどうだ」
「それがいいですね。それでよろしくお願いします」
それから特に日々に変化はなかった。
部屋が変わるという一見大仕事に思えることがあったが、私に荷物はない。
剣は常に髪の中にしまっている。
「この世界の全貌」も、内容は全て覚えている。
運ぶ荷物がないのだ。
レアルタと話す機会もあったが、特に壁のようなものは感じなかった。
というか、これまで長年付き添ってきた家臣のような忠犬っぷりを発揮していた。
給料を上げられたのがよっぽど嬉しかったのだろうか。
その理由を聞いてみたところ、こんな回答が返ってきた。
「私、孤児院の生まれなんです。親の顔は見たことなくて、孤児院のシスターが親のようなもので。でも、その孤児院を取り仕切っていた老婆が死んでしまって、孤児院を運営させるために公爵家に働きにきたんです。でも、もう潰れる寸前で……。お嬢様には本当に感謝しています」
公爵家がいい飯を食べるための金をこう言ったところに使うべきではないだろうか。
今後の重要な予定は、公表会だ。
三年半後、王族や各地の貴族を集めて開催される。
それまで、暇だ。
礼法指導や淑女教育など強制されることは山積みだろうが、自分からやりたいことが見つからない。
戦闘力を身につける必要もあまりなくなった。
公爵の軍が手こずる相手を一人で全滅させられるなら十分だろう。
本当に、暇だ。
暇な時間というのはあっという間に過ぎていくもので、気づけば三年が経った。
この三年間、私がやったことはただ一つ。
書庫の本の全制覇だ。




