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有為を集めて

初めて馬に乗った。

最初から馬は私に怯えていて、従順にいうことを聞いてくれた。

まさか黒髪は動物にまで影響を及ぼすのだろうか。


ディスクオリ遺跡までは長かった。

途中で昼食を取る時以外は常に走ったのにもかかわらず、ついた頃には日が暮れていた。

だが、ちょうどいい。

夜に書庫に忍び込みすぎたせいで、私は夜目が利く。

夜襲をかけよう。


「ヴェン・インドッサーレ」

全身に風邪をまとう。

遺跡の入り口には見張りがいた。

それを、茂みの中から急加速して剣で首を切断。

一瞬だった。

数秒もしないうちに私は見張りの人間の「道」を終わらせたのだ。


遺跡に入って盗賊を倒すのに特に困ったことはなかった。

前半は全員寝ていた人間の首を落とす簡単な作業だった。

後半も、違和感に気づいて起きた盗賊がいたが、敵ではなかった。

そのくらい、私が考えた戦法はあまりにも強力だった。

盗賊と目があって、加速するまでに一秒。

首を切るまでに一秒。

加速してから首を切るまでの間に盗賊は魔導の詠唱に入るが、遅い。

魔導が発現する時にはもう首が落ちている。

あっという間に遺跡最深部についてしまった。


「お前が盗賊の首領で間違いないか」

「あァ、そうだよ。俺がボスだ」

盗賊団の首領は赤髪の女だった。

女だ。

俺っ娘だ。


「何か言い残すことはあるか」

「嬢ちゃんこそ、遺言考えてないのかァ?」

その問答が合図となった。


いつものように急加速。

距離的にも、他の盗賊達と同じ要領で殺せる……はずだった。

「甘いねェ!フィアム・トラスィーア!」

彼女は私と自分の間を横切るように素早く炎を走らせた。

「なっ!?」

私は急停止した。

その間に、彼女は自分の周りを炎で囲ってしまった。

これでは近づけないじゃないか。


「アンタは珍しく近距離戦闘が専門なんだろウ。なら、これで俺の勝ちダ。フィアム・ラッフィカ!」

彼女はそう言って炎の玉を連射してきた。

これで勝ったと確信しているようだ。

……甘いな。

全く、本当に甘い。


近距離戦を使っていただけで、遠距離戦ができないなんて一言も言っていないだろう。


「ヴェン・フェローゼ」

急加速の時の十倍の魔力を込められたその魔導は、炎の壁をものともせず進んだ。

盗賊の首領に届く頃には炎を纏ってしまっていたためそれによるダメージは少なかった。

自分の属性は食らっても少しなら軽減できるからだ。

だが、この魔導の目的は魔道によるダメージではない。

風邪で吹っ飛ばされることによる壁との激突。

それによる気絶だからだ。


その目論見は成就した。

首領は壁に打ち付けられてスタン。

私はすぐに首を落とした。


その部屋の奥には封印の部屋があった。

そこは財宝で溢れていた。

だが、私は一つも取らずに外に出た。


遺跡を出た。

もう日が昇る頃だった。

馬に乗る。

結局、寝袋は使わなかったな。


家に着くまでの数時間、私は何も考えられなかった。

一方的に九十三人を虐殺。

知らぬ間に死んでいたような人も少なくない。


私は、少なくともあの九十三人よりは生物として優れている。

そう確信したことによる、得体の知れない高揚感。

恍惚とする。


人が殺せる、人の道を終わらせることができるだけで、私はこの世界に生まれることができてよかったとさえ思えた。




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