累卵より産声
昼。
いつもは寝ている時間、私は起きた。
父親との交渉に臨むためだ。
私の髪は一メートルある。
身長よりも髪の方が長い。
いつもは憎んでいるこの髪だが、今は利用させてもらおう。
剣を鞘に納めた状態で、髪を纏わせる。
側から見れば太いポニーテールにしか見えないはずだ。
それ風魔導を使って維持する。
楽な仕事だな。
部屋を出る。
ちょうど、昼飯を置きに来たメイドがいた。
「キャアッ!?」
「仮にも次期公爵にその口の聞き方はなんだ。次やったら斬首な」
「すっすみません!」
悲しいなあ。
初対面でこれか。
父の部屋までは長かった。
そして、その中でメイドや兵士に会うたびにさっきのような反応をされた。
兵士なら黒髪の不審者を捕えろよ、と思うが、どうやら私の存在は屋敷中の人間が知っているらしい。
そして、私を傷つけてはいけないとも言われているらしい。
思ったより私に配慮してくれているのだろうか。
いや、違うな。
私がどんな災いをもたらすかわからないから、刺激しないようにしているだけだ。
そんなことを考えていると、父の部屋についた。
「父に話したいことがある。通せ」
「公爵に確認する。少し待て」
さすが近衛兵。
私に物怖じせずに話せるとは。
*
「公爵、急ぎ確認したいことが」
執務中。
私の部屋に近衛兵が入ってきた。
「なんだ?」
「レーゲン嬢様が部屋を脱走。父に話がある、と言って部屋の前に待機しています」
「何っ!?」
「いかがなさいますか」
「通せ!今すぐに!」
あの忌み子め……。
ようやくポヴェイロの死から立ち直るところだったのに……。
今更なんのようだ!
いや、要件はわかっている。
そして、こちらに断る選択肢はないことも!
だが、タイミングが早すぎる。
もっと遅ければ国王に殺させられたのに!
*
想定していたよりも早く近衛兵が戻ってきて、部屋の中に通された。
「お初にお目に……ではないですね。お久しぶりです、父上」
「余計な挨拶はいい。本題は何だ」
「おっと、では、単刀直入に。六歳の時にある公表会にて、私が殺されぬよう嘆願して欲しいのです」
「ああ、だろうな。そんなことはわかっている」
あらら、そうなのか。
なら、向こうの答えを待つだけだな。
「では、了承してくれるということで……」
「答えは否だ!お前も黒髪差別の深刻さは理解しているだろう」
残念、これで私の人生も終わりだな。
なんて言うつもりは無い。
ここで粘らなければ先はない。
「では、何を成せば認めていただけますか?」
「チッ。そこまで考えていたか」
いや、考えてないケド。
今咄嗟に思い浮かんだだけだケド。
「そうだ。何もなしに推薦しては私の信用が落ちる。つまり家の信用が落ちる。それだけは避けねばならん」
「では、実績を残せば良いと」
「ああ。何をするかは自分で考えろ。屋敷のものにはお前の質問には答えるよう命じておく」
「ありがとうございます。父上」
こうして、私は屋敷を後にした。
実の娘にお前って言ったか?
あのクソ親父が。




