表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/134

第百十七話 「……教えて?」

あかんやーつ。

「へー。転移魔法石の材料ってカーディアルって国で採れるんですね」


「厳密に言えばアナスカ地方だ。

 昔は第五の方でも採れたらしいが200年前にほぼ消滅してしまったからな」


「そんな特殊な鉱石だったんですね」


竜の体内から発見された藍色のマジックアイテムを眺め、そんな話をする。

濃い藍色と金色のコンストラストに何か思い出すんだよなぁ……

と記憶を辿ればラピスラズリに似ているんだと思い出す。


「まぁ僕があげた本にその辺りの事も載っている。

 これでお前も魔族なんかの所へ入り浸る事無く、知識を得られるだろう」


―――魔族なんか……?

その物言いにカチンと来て感情を吐き出そうとして思わず自制する。

そう言えば初めて会った時も魔族2人どうのとか罵ってたけど、

もしかして何か理由があるのか?


うん、良い機会だからリスリムに少し聞いてみるか。


「ありがとうございますリスリム様。

 その優しさに甘えて少々お聞きしたい事があるのですが……」


「様はいらん。

 敬語もやめろ。

 お前の敬語は機嫌を伺う連中に似た物を覚えて好きじゃぁない」


「あ、すいませ……ごめん」


「で、聞きたい事とは何だ?」


畏まった物言いにズバリと本音を吐かれ、自分は思わず言葉に詰まった。

やばい。色々バレてたや。

そんな事を思いながら喉の通りをよくする為、ヴィーレンを飲む。

あれ、これ何杯目だっけ?

まぁいっか。


「魔族に対してきつい言い方してるけど……魔族って何かあるの?

 その辺、よく知らないから教えて欲しいなって」


「ふむ……ああそうか。お前は知らないか」


彼はそう呟き、いつの間にか目の前へ置かれたツマミっぽいのを口の中へ。

クラッカーみたいなそれを咀嚼するとお酒で流し込むと一つ唸る。


「魔族は元来、狂暴な種族と昔から言われている」


「え、そうなの?」


「魔王が現れる少し前、とある一体の魔族が暴れ……

 ある国は滅ぶ寸前まで行った。

 そしてもう1つの国は滅んだ。しかも1日でな」

 

それって魔王と同じか魔王よりヤバいんじゃ?

あれ、魔王が生まれる少し前って200年ちょっと前だよね?

そんな話を聞いた覚えがあるような……


『大昔にちょっとな。お陰で200年近く檻の中さ』


いつだったか銀髪の眼帯さんが言っていた言葉を思い出す。


「それに付け加えてどこぞの魔族は大罪の為に長く幽閉されていた。

 罪状は知らんがロクでも無い事をしたのは言わんでもわかる。

 しかしそれも巫女様の温情によって幽閉を解かれたが……

 逆に言えばそれは償いすら終えておらんのに外へ出たのだ。

 そんな者を快く思えるはずもないだろう?」


国を滅ぼしたのとルシードさんは別の人なのか?

いやこの場合は別の魔族と言うべきか。

確かにそんな事情を考えたら何かあったらどうしようってなるよね。

クロカさんに何かの考えがあったとしても……

罪を償ってないって言うのは、うん。


「今は良いがその様な存在が国の頭の元に居ると国民が知ったらどう思う?」


その言葉にボクはレニア女王陛下の事を思い出した。

彼女はニーアさんとアミィさんを従者としている。

ああそっか。

前国王が魔王を解き放った事を隠して、多くの人間を騙した。

そんなマイナスイメージがあるところへ、

国を治めている女王の従者が狂暴と言われている魔族だと知れたら……。

ボクは皆の事を多少知っているから平気だ。

けど何も知らない人からしたら、不安しかない。


「魔族は護竜と言う役目を担う存在らしいが……

 レオナの元に居るあの男はそれすらないのだ。よって信用が出来ん」

 

そうなるとローズさんは? と思ったが……

彼女はクロカさんと昔からの付き合いだと前に聞いた。

その為、ローズさんもそれなりの信用がある。

しかしルシードさんはそれも現状無いんだ……。


「そして僕の父方の家系は魔族に滅ぼされた血筋だ。

 だから僕はレオナの元に……いや、

 この国に魔族が関わる現状がどうしても許せない。

 そして僕と同じ思想の王族貴族も少なくは無い。

 ラキナ家が代々魔族と関わってしまうと言うのなら、

 僕が王となってそれらを全て変えて行くしかない。そう思わんか?」



なるほど。

リスリムを強くプッシュする王族貴族にはそう言う背景があるのか。

って事は彼女が魔王討伐の旅へ出る事になったのも、

そう言う思惑が絡んでいた可能性もある。


言わんとした事はわかるけど、極端な考えでもあるよね。


そう考えるとクロカさんはそれらも見据えて

「……『ドレスの裾を睨む』のもイイケド、程々にね」

と彼に向けたのかもしれない。



正直、極端だとは思うけど彼の言いたい事もわかる。

けど同時にボクは矛盾を覚える。

だってそう口にし、貫くのなら今こうやって語り合っている事がおかしいんだ。


「リスリムの言いたい事は凄くわかる。

 だから余計に……そうは思えない」


「……何?」


「だってそう否定するなら、ボクと仲良くしちゃダメだろ」


その一言に彼は言葉を失った。

ボクは世界へ災いを振り撒き、この国を脅かした存在を封印された人間。

これが現状のリスリム達が知るボクに対する事実だ。


けど細かな事情を知らない人はボクと魔王を同一視している。

それはこの数週間で嫌と言う程、体感した。

今だってこうやって語らう中、誰も寄ってこないのが良い証拠じゃないか。

さっきまでリスリムは多くの王族貴族に囲まれ談笑していた。

にも関わらず、今は誰一人とこちらへ寄り付こうとしないのだ。



「それはお前が魔王を封印された人間であって……悪では無い!

 だから……」


「周り、見て下さい」


そう静かに言うと彼は視線を動かし、絶句する。

それもそうだ。

さっきまであんなに人が居た庭園はとても静かな物になっている。

それなりに人が居たにも関わらず、一気に減っているのだ。

しかもこの場を中心として避ける様に。


「仮に本当の事を知ってても、周りはそう思わない。

 だって大丈夫と楽観視してたら最悪な事が起きでもしたら、嫌じゃん?」


ルシードさんに信用が無いと言うのならボクにも無い。

大迫轟の節メリサリンド・ルゥに於いてボクと言う存在が認識されたと言っても、

『使えるか』『使えないか』の値踏みをされただけに過ぎない。

そこにはまだ信用など無いのだ。


「ならこれから変えて行けば良いだろう。

 魔王と言う存在を秘めながらお前は国の為に奮闘した。

 今は理解されずともいずれ理解される……いや、させる!」


彼は熱くなった感情を惜しげなく向けてくる。

感情的なだけに真っ直ぐで、その為に矛盾をまた言っちゃってる。


「ならそれをボクにしてくれる前にルシードさんとかにってダメなの?」


「ヤ、ヤツはダメだ! 信用ならん!」


これは感情的と言うより個人的な私情が含まれてるな……うん。

まぁ色々あるんだろうけど、触れるのはやめておこう。


「リスリムって不器用だよね」


「う、五月蠅い! ペリアと同じ事を言うな!」


一際強い口調で言い放つ彼はお酒で赤くなった顔を更に染める。

あーあ……面白いくらいに真っ赤になっちゃってる。

そんな様子を見ていた自分は楽しくなって、悪戯を思い付いてしまう。

会談の為に着ているドレスの事を思い出すと、

コスプレしてた頃を思い出してあざとく振る舞ってみたくなった。

久し振りにまたやってみるかな?


そんな事を心の中で呟きながら、



「でもリスリムのそう言うとこ、嫌いじゃないよ?」


それを向けたらどう反応されるかわかって自分はあざとい笑顔を彼へ向ける。

もちろん、上目遣いで。

でも今、この言葉に嘘は無いし……うん。



「ば……っなにをいいだっ……だぁあああああああああああ!?」


彼はオーバーフローしたのか奇声を出しながら煙を噴く。

取り乱す姿はボクの悪戯心を余計にくすぐり、

もう少しいじめてみようかな? 何て考えが顔を出す。


するとリスリムは熱を冷ます為にかお酒をまた煽る。

ボクも飲むかぁ……

あれ、ヴィーレン入ってたボトルが8本もあるけどこんなに飲んだっけ?

まぁいっか。楽しいし。


「お、お前な! 唐突に変な事ぉ言うな!

 そう、そうだ! 仮にも政敵だ! だから馴れ合ったらいかんのだ!」


今更な事を並べ立てて大慌てする。

何と言うかそんな言い方されると傷付くよねー。

確かにさー最初会った時は酷い事したとは思うけどさぁー?

むぅー。


「じゃあ、リスリムはボクの事嫌いなんだ?」


「……だ、だから政敵でっ!」


「嫌い、なの?」


ここはハッキリ聞きたいよね。

こんな時はどんな仕草が良いって雪ねぇ言ってたっけなぁ。

えーと……口元に手を持って行って左手は、胸の真ん中で握り締める様に。

そして、


「……教えて?」


右に顔を傾げながら、短く聞く。


「あ、あ~……そ……の」


水面下で酸素を求める金魚みたいに彼はパクパクと口を動かす。

相手が返答に困る中、「ん?」と小さく零しながらはにかんで見せる。

うん、何だろう凄く熱くなってきたなぁー。

てかボク何でこんな事してんだっけ?

気のせいか耳の中がドクドクってうるさいや。


「ぼ、僕は……っ」


その言葉と一緒に自分の頬にひんやりとしたリスリムの手があたる。

あ、冷たくて気持ち良い。

そんな事を思っていると彼の視線がこちらへ真っ直ぐと向き、


「あーれー?

 ずーいぶんとなかよしーになられてますねー意外ですーねー」


―――間延びした声が間に割り込んできてボクのからかいはそこで終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ