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第百十六話 「変なフラグ」

「わかるのか!? ルーン文字とは何だ教えろ侍女!!」


ボクの言葉にリスリムが一気に身を寄せてくる。

近い近い。

しかもお酒臭いってば……


「ルーンって言うのはボクの居た世界にあった文字です。

 外国の古い文字なのですがおまじないとかに使われてる物ですね。

 書いてある文字に関しては多少の意味しかわからないです……」


「何と書いてある?」


「ええっと待って下さいね。

 んーと……動かす、いや飛ばす……?

 遠くへ……」


興味津々に尋ねてくる彼へ自分は噛み砕いた内容を読み上げる。

ルーン文字はオカルト的な物に使われる事が多い。

その関係でファンタジー系な物でよく見かける。

漫画やゲームなどもその代表だろう。

ソドソでも使われてるし、ボクの扱うスキルもルーン文字を組わせた物が多い。


そしてこの球体に刻まれたルーンは法則性を持っている事が明白だった。

小指サイズのタイルの中へ一文字ずつ字が入っており回路の様に金文字が並ぶ。


ルシードさんの部屋で読んだ本や収納マジックアイテムの仕組みを思い出し、

それらを元に構造を調べる。

どう言う訳か魔力から文字の意味を辿るいつもの力が働かない。

そのせいでいくらか難航するも何となく仕組みが理解出来た。

が―――


「……あれ、おかしいな」


「どうした?」


「こう言うのって発生、過程、結果の段階に分かれてるんですが……

 これじゃ肝心の結果が抜けてる」


転移系の魔法を発動させる物だろうと言う事までは理解出来た。

しかしそこから先がわからない。

と言うのも対象先を指定するハズのタイルに何も書かれていないんだ。

……空白だと機能しないんじゃ?


『それ、恐らくはウィルドって言う白紙を意味する文字の無いルーンなんよ。

 力を増幅させる意味合いも持ってる特殊なルーンなんよ』


頭を悩ましていると、かすかに擦過音が耳に届く。

彼女のアドバイスのお陰で当てはまらなかった部分がカチリとはまる。

なるほど。

空白のタイルも文字として考えるのか。

そうなると白紙は無にもなるから……対象の消失を目的とした物?

それだと遠くへ飛ばすって言う部分が変になる気も―――


『全体の組み合わせからしてそれは別の空間へ飛ばす物な気がするんよ。

 転移魔法石と基本構造は同じっぽいし、

 使用者が望んだ対象を別空間に飛ばすマジックアイテムっぽいんね』



そう言う事か。


「何かわかったか?」


「恐らくですけど、これは目標を別の場所へ飛ばす為の物じゃないでしょうか」


ウメコより貰ったアドバイスを元にリスリムへ伝えてみる。

すると彼は小さく唸ってはグラスを煽って中身を空にする。

何か焦ってる……と言うかイラ付いてる感じだな。


「……巫女様と同じ結果か。他には何か気付いた点は?」


「他ですか? うーん」


彼に言われて再度眺めてみる物のわからない。

後はタイル状じゃない部分に刻まれた文字だけど、法則性が無いんだよね。

いや、ルーンの記号として捉えようとするからダメなのかな?

ここだけタイルで区切られてないし、ただの文字の様に考えてみよう。

んーっとアルファベットにするとケナズはKで、ウルズはUだっけ?

全部繋げると―――


KUUTANDAISUKI


クータンってなんだこれ?

そんな事が過る中、


『……クーちゃん♪』


白フード姿の少女の声が再生される。


クータン ダイスキ

クーちゃん 大好き


何だよどう言うなのさコレ。

それよりどうして彼女が?

いや、その前にそんな物がどうして竜の体内から……。


「やはりお前でもわからんか」


「え!? あ、その……。はいすいません」



諦めを含んだ口調でリスリムがそう向けてくる。

ボクは困惑を誤魔化す為にその言葉に相槌を打ってしまう。

悪いけどここは黙っておこう。

変に言って困惑させてもマズイし……。


「その石を何の為に誰がどうやって作ったかと魔法で調べたが、

 何も出なくてな」


「魔法を使ってもですか」


「何度調べてもその石は『最初からその形だった』と言った事しか判明せず、

 最初からその形で竜の中にあったと言った結果になった」

 

ん?

どう言う事なの。


「これって明らかに人工物ですよね」


「ああ。しかしいくら調べても加工したと言う過程……

 人が手を加えてそうなったと言う反応が一切出んのだ」


「もしかして加工した事実を無かった事にしてるみたいな?」


「その通りだ察しが早いな。

 本来であれば加工の際や移動の際に残る魔力で細かな事が追える。

 しかしこの石にはそれが全くない。

 他者の魔力を入り混ぜ、追跡を困難にさせる手法は多くあるのだが……

 この様なケースは初めてで巫女様ですらお手上げだった」


彼は空になったグラスへお酒を注ぐとまた一気に煽る。

今回の一件に関しての手掛かりになると思った物から何も得られず。

そのせいで落ち着かないと言った様子なんだろうか。


「魔法で痕跡を消したりとかって出来ないの?」


「そう言う魔術はあるにはある。

 しかし痕跡は消せてもその為に使われた術は霧散し、別の魔力が出る。

 その関係で痕跡は消せても対象は残留魔力を帯びる。

 本来ならその特性を利用し、術者を辿るのだが……」


「でもこれにはそれすら残ってないと」


「そう言う事だ」


彼は溜息交じりにそう言い終えると黙った。

その関係でクロカさんですらお手上げだったって話か……。

ああそう言う事か。

魔力が一切残ってないから、刻まれてる文字にも当然ながら魔力が無い。

そのせいで魔力を読み取って文字を理解する界客そとびと特有の力も働かない。



「はん、まるでおとぎ話みたいな話だろ?

 今年の節は何から何まで意味が解らん……」


リスリムは苦笑しながらまたグラスへお酒を注ぐ。

随分飲んでるなぁ……と眺めながらボクもヴィーレンを飲む。

これはジュースだし、うん。

ボクはセーフ。


すると彼は「そう言えば」と何かを思い出したのか呟く。

そして収納手帳マジックアイテムに触れるとテーブルの上へ数冊の本が現れる。

その本は随分くたびれた物ばかりで、彼はそれを手に取るとボクの前へ置く。


「何でも本が好きだと聞いてな。

 僕所有の秘蔵本を選んで持ってきた。有難く受け取ると良い」


「あ、ありがとうございます。

 ん? でもその話、誰に聞いたんですか?」


「あ……レ、レオナだ! レオナに聞いた!」


レオナにそう言う話した覚えないけどなぁ。

多分ニーアさん経由でペリアさん辺りから聞いたんだろう。


「そうなんですね。

 しかし随分と貴重そうな物ばかりですが……」


「気にするな。僕からお前への恩賞だ」

 

革張りの表紙に金属で縁取りがされた本は細かな装飾が施され、

本と言うよりかは美術品の様だ。

手に取ればラノベサイズの本なのにズシリと凄く重い。

豪勢な作りを前に頁をめくる手も自ずと強張ってしまう。


これ、どう見ても一冊数十万とかするレベルの物だよね?

こっちとか宝石っぽいのが埋め込まれてるんですが。

しかし受け取らないなんて言えば色々言われそうだしなぁ。


栄章の事で色々言った手前、余計に断り辛い……。

かと言って欲しくないかと言われれば凄く欲しい。

本の内容も気になるし、知りたい。

うん。

高そうな物で気が引けるけど、折角の厚意を断るのは失礼だよね。


「ありがとうございますリスリム様。ボク、本好きなので嬉しいです」


「ふ、ふん!

 別にお前に喜んで貰おうと選んだのではない! 勘違いするなよ!」



素直にお礼を言うと予想外の台詞を向けられた。

金髪&高飛車はツンデレの鉄板だけど……

それ、許されるの女の子の場合だからね? 2次元限定だからね?



「だ、だが大事にしろよ!」


「は、はい」


ボクはいつの間にか変なフラグを立てちゃったんじゃないか……?

と今更ながら湧く後悔を誤魔化すべく、ヴィーレンを一気に飲み干した。

余談ですが石に残っていたユウ宛てのルーン文字は

ケナズ】、【ウルズ】、【ウルズ】、【ティール】、【アンスール】、【ニイド

ダエグ】、【アンスール】、【イズ】、【ソウェイル】、【ウルズ】、【ケナズ】、【イズ】です。

本来ならクーチャンの部分はKUUCHANとなりますが、Cに該当するルーンが無いのでTになっています。

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