9/18
1.5 インタールード1
幼い頃、わたしは『白雪姫』の物語が好きだった。
――鏡よ、鏡、世界で一番美しいのはだあれ?
――王妃、それは白雪姫でございます。
王妃は、猟師に命令した。白雪姫の心臓を取ってきなさいと。
――いいえ、白雪姫は生きています。
王妃は、腰紐を売る振りをして、白雪姫を絞殺した。
――いいえ、白雪姫は生きています。
王妃は、魔術の櫛で、白雪姫を呪殺した。
――いいえ、白雪姫は生きています。
王妃は、毒林檎で、白雪姫を毒殺した。
その後、白雪姫は王子のキスで蘇り、二人は結婚をする。
めでたし、めでたし。
結婚披露宴の席で、王妃は白雪姫を殺そうとした報いを受ける。焼けた赤い靴を履き、死ぬまで踊らされるのだ。
わたしは、思う。
もし、王妃に魔法の鏡がなかったら?
もし、王妃に猟師に命令するだけの権力がなかったら?
もし、王妃に絞殺するための腕力がなかったら?
もし、王妃に魔術の櫛を作る能力がなかったら?
もし、王妃に毒の知識がなかったら?
きっと王妃は、拷問のような最後を迎えることはなかったのではないだろうか?
いつか、わたしは。
ハルに嘘の推理を話し、フミちゃんを泣かせた報いを受けるのだろうか?




