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魔王様のお人形〜理想の人形に召喚された私、溺愛魔王に捕まりました〜  作者: タツナミソウ


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2/16

1・おはようございます

 


 ――ああ、失敗した。


 飲み過ぎた。頭痛い。吐きそう。


 あの浮気クソ野郎⋯⋯あんな男と長年付き合ってたなんてほんっとうに最悪。


 とことん男運ないな、私。


 私を大切にしてくれて一途で――そう、でろでろに甘やかしてくれるなら、もう悪魔だろうが魔王だろうが構わない!



 ああ⋯⋯愛されたい⋯⋯





 ***





「⋯⋯の⋯⋯骨組み⋯から⋯⋯」

「⋯⋯エ⋯で⋯⋯すか」

「⋯し⋯ろう!」



 ボソボソと話し声が聞こえる。

 その声に誘われるように、ゆるりゆるりと意識が浮上する。



「⋯⋯ん?」


 目を開けると、見慣れない天井だった。

 頭がぼうっとする。ここどこ――?

 体を起こそうとすると全身に激痛が走る。


「⋯⋯っ、いった!!」


 思わず呟いて、背中を丸める。

 バタバタと走る足音が聞こえ、部屋の扉が勢い良く開かれた。


「エリー!?目が覚めたのか!?」


 思わず目を瞠る。

 部屋に入って来た男は、長い黒髪に紅の瞳、口の中には牙があり、とんでもない色気を纏っていた。


「⋯⋯えっ?あの」


(なに、このコスプレイケメン――)


「⋯⋯あっ、あああ!!エリーっ!!」

「はっ!?ひいぃ!!」


 男は涙目で寝台へと走り寄ってきて、がばりと抱き締められる。

 まだ夢を見ているのだろうか。

 しかし、身体の痛みは確かに現実を示している。


「ちょ、ちょっと!!なんですか!?」

「ああ!エリー!本当に成功した!!」

「エリーって何!?誰ですか!?私は⋯⋯」


 ――あれ?

 私。私は誰だっけ?

 会社帰りに飲んで、帰宅途中の階段で⋯⋯


 記憶がない。それどころか自分の名前も思い出せない。

 どくん、と一度大きく鼓動が跳ね、指先が冷たくなる。


(⋯⋯どうなってるの?)


 私が固まっていると、男はゆっくりと体を離す。

 至近距離で見るその瞳は、まるでルビーのように美しかった。


「エリー⋯⋯良く聞いて欲しい。君は、何処かの世界で死んだ魂だ」

「⋯⋯はぁ?」


(私が、死んだ?)


 脳裏に過ぎるのは、階段を踏み外して落ちていく視界と空を掻く手。


 その後、死んだの⋯⋯?

 だとしたら、ここはどこ?


 混乱している私をよそに、男は静かに続ける。


「――そして、君の魂をその肉体へ召喚した」


 すぐには理解出来なかった。

 一拍おいて、ようやく意味が落ちてくる。


「は、召喚⋯⋯!?まさか、異世界召喚!?」

「エリーの世界では、異世界召喚と呼ぶのか?ふむ、その通りだ」

「⋯⋯えぇ!?と言うか“エリー”って何ですか!?」

「君の名だ!!我が付けたのだ!!」

「っはぁ!?ちょっと待って下さい⋯⋯」


 自分の身体を見てみる。

 細く白い手足。腰まで流れる髪は白金色。

 確かに、記憶に残る自分とは別人だ。


「⋯⋯この身体は、誰の身体なんですか!?」


 死体に召喚されたなど言われたら発狂してしまう。

 恐る恐る男を見上げると、ドヤ顔がそこにあった。


「ふふ、我の理想の女性を創ったのだ。骨組みから。だから誰の身体でもない。安心してくれ」


 ひくりと喉が動き、息が止まる。


「⋯⋯ほねぐみ⋯⋯?」

「ああ!!特にこだわった所と言えば、腰骨の湾曲を――」


 訳の分からない熱弁。

 その声が遠のいていく。


(女の身体⋯⋯骨組み⋯⋯そこに、死んだ私の魂を)



 えっ?やばい人?



 我に返り、男を睨めつける。


「理解が追い付きません!!なんで私なんですか!?」

「そっ⋯⋯きっと運命だったのだ!!!」

「そっ!?そって何!!たまたまなんじゃないですか!!」

「いや、君は我に選ばれた魂なのだよ、エリー⋯⋯」

「コワイ!!」


 必死に腕から逃れると、彼は眉毛を八の字にして悲痛な面持ちになっている。まるで、犬のお預け顔だ。


「それで、貴方はどなた様ですか!?」

「我か、我はこの世界の魔王だ」

「えっ」


 まおう⋯⋯まおうって、魔王!?


「ええええっ!?」

「⋯⋯!!エリー!!」

「やばい人ぉぉおお!!」


 あまりの事に、ぐらりと意識が飛びそうになる。

 抱き寄せられ、逞しい胸の中へ収納される。

 全てがスローモーションに感じた。

 男の背後に黒薔薇が舞っているように見えるのはきっと幻覚だ。


「⋯⋯イイニオイ⋯⋯」


 私の意識はそこで途切れたのである。



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