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魔王様のお人形〜理想の人形に召喚された私、溺愛魔王に捕まりました〜  作者: タツナミソウ


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12/16

11・半分の存在

 

「エリー様、こちらへ座りましょう」

「うん、ありがとう」


 いくつかお店を周り、屋台で飲み物を買って広場のベンチで一息つく。

 中央には噴水があり、小さい魔鳥達が水浴びをしている。


「ここの広場いいね。風が気持ちいい〜」

「もうすぐ夕方なので、人通りも減ってきましたね」


 もうそんな時間か――と、残念な気持ちになる。

 それほど今日は楽しかった。

 心に燻っていた不安も、忘れられていた。


「メメリィ、今日はありがとう!!⋯⋯また一緒にお出掛けしてくれる⋯⋯?」

「もちろん!!いつでも喜んで!!」


 空を仰ぐと、夕暮れに微かにまたたく星。

 静かな満足感が胸を満たしていた。


 その時――ドサドサ、と何かが落ちる音がした。

 音の方を見ると、少し離れた所で黒いローブの魔族が地面に蹲っていた。


「!!」


 反射的に立ち上がり、そちらへ走り寄る。


「エリー様!!」


 メメリィが追ってくるのを背中で感じた。


 蹲っている魔族の前に着き、屈む。

 フードを被り俯いているため、顔が見えない。

 ただ、あまりにも呼吸が荒い。


「大丈夫ですか!?」

「⋯⋯ぐっ⋯⋯す、すみませんっ⋯⋯」


 ゆっくりと顔が上げられ、視線が絡む。

 銀髪で碧眼の青年――顔は青白く、酷く具合が悪そうだ。


「エリー様!!下がってください!!」


 気付けば、メメリィの後ろに庇われていた。


「っ、メメリィ、この人具合が悪そうだよ⋯⋯!!」


 返事は無かった。


 青年の荒い呼吸だけが響く。


「⋯⋯人間⋯⋯いえ、半魔ですか」


 メメリィの低い声が、沈黙に重く落ちる。

 青年の肩が僅かに震えた。


「⋯⋯っえ、ええ⋯⋯。そう、です」

「そんな状態でどこへ?」


 何が何だかわからない――が、メメリィが強い殺気を放っている事だけは、ありありとわかった。


「⋯⋯魔王城です。どうか、助けて頂きたく、っ⋯⋯」


 青年の頬を、ひとすじの汗が伝う。

 それほど辛いのに、言葉は丁寧で、暴れ出す様子もない。


 少し間をおき、メメリィは殺気を解く。

 そして、こちらを振り向き、耳元で囁いた。


「エリー様、これを保護します」

「っ、う、うん。突然走ってごめんね⋯⋯ありがとうメメリィ」


 ⋯⋯私は、魔王が創った物。

 だから、私に何かあれば、メメリィが責められてしまうかもしれない。

 軽率な行動は慎むべきだったと、内省する。


「大丈夫ですよ、エリー様。気にしないで下さいね」

「今度から気を付ける。ありがとう」


 メメリィは優しい笑みで首肯した。


 それからまた、視線を青年に向ける。


「あなた、立てますか?私達の馬車で魔王城へお連れします」

「⋯⋯っ!!あ、ありがとうございます⋯⋯!!」


 青年は涙ぐみ、声を震わせ頭を下げる。

 その美しい所作に、一瞬目を奪われた。


 メメリィは小さく息を吐いた後、私へと向き直る。


「さて、エリー様。そのネックレスの薔薇に、軽く魔力を流してみて下さい」

「⋯⋯えっ?これに?⋯⋯うん、わかった」


 片手で薔薇の魔石を握り、目を瞑り集中する。


 ――一拍おいて、ふわり、と周囲の風が揺れた。


 次の瞬間、後ろから優しく抱き寄せられる。

 嗅ぎ慣れた香水のかおりに、驚きよりも先に安堵した。


 目を開け軽く振り向くと、そこには変装をした魔王がいた。

 思わず目を瞠る。


「デモくん⋯⋯!?その格好⋯⋯髪の毛短いし、色が⋯⋯⋯!」

「王子様風だろう。ちなみにこの髪色はエリーとお揃いだ」

「⋯⋯⋯⋯」


 ポンポンと、私の頭を撫でた後、メメリィと青年を見やる。

 青年は驚いていたが、すぐに顔を顰め、苦しそうに唸る。


「⋯⋯なるほど。理解した。メメリィ、この男を頼むぞ」

「畏まりました。到着次第、医務室へ運びます」


 一言二言会話をした後、魔王は私を抱き上げた。


「っ、うわ!!びっくりした⋯⋯ちょっと、こんな所でなに⋯⋯!」

「エリー、しっかり掴まっててくれ」

「⋯⋯えっ」

「舌、噛むぞ?」

 黒薔薇が舞うほどの、無駄に美しい笑顔を向けられる。

 嫌な予感がした。


 ――それはすぐに当たる。


 魔王はそのまま飛んだ。空を。

 その高さとスピードに、思わず叫びそうになる。

 そのかわりに、思い切り魔王の首もとに抱きついた。


「ふは、エリー。そんなに強く抱き締めるほど寂しかったのか⋯⋯もう大丈夫だ。離れないからな」


 ――違う!!

 帰ったら絶対文句言ってやる!!


 涙目になりながら、口の中だけで絶叫したのだった。



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