10・外の世界
城下町――
私達は、そのとある一角に降り立った。
「わあ!!すごい賑わってるね!!」
「ええ、ここは国の中心ですし、色々な者が集まりますよ」
整った街並み。様々な見た目の魔族達。
お店や屋台が幾つも建ち並び、良い香りが風に漂う。
(まるで中世って感じ⋯⋯だけど、技術は凄く進んでる)
メメリィが隣に並び、愉し気に尋ねてきた。
「さあ、エリー様、まずはどちらに参りましょうか」
「そうだぁ⋯⋯色々見て回りたいけど、メメリィの好きなお店に行きたいな」
「まあ⋯⋯ふふ、はい、お任せ下さい!」
笑顔で溢れかえる、石畳の道を進む。
足取りは軽く、鼻歌を歌ってしまいそうだ。
訪れたのは小さな雑貨店だった。
扉を開けば、棚いっぱいの小物たちが出迎える。
アクセサリー、ぬいぐるみ、小箱や食器。
見ているだけで、心に花が咲く。
⋯⋯悪魔のような銅像の天秤、黒い渦の水晶⋯⋯は、見ていない事にする。
「このお店は、センスが良くて大好きなのです」
「本当にそうね、品揃えも豊富で⋯⋯目移りしちゃう」
「ふふ、気に入って頂けたようで嬉しいです」
頬を朱に染めたメメリィの笑顔。
その笑顔に、こちらも自然と顔が綻ぶ。
――ふと自然に、指先がひとつの髪飾りに伸びた。
黒レースのリボンモチーフ。
中心には、キラキラと小さい魔石がついている。
「⋯⋯これ、メメリィに似合いそう」
「まあ!!私に、ですか?」
鏡の前で当ててみると、メメリィは目を細め、眦を下げた。
「⋯⋯いかがでしょうか」
「似合ってる!!メメリィの雰囲気にすごく合う!」
「ふふ、ありがとうございます」
こんなやり取りが、妙に心地いい。
(⋯⋯こういうのが、“日常”って言うのかな)
――ふと、数歩分離れたカップルの会話が聞こえてきた。
「久々に来れて良かったぁ!前に来た時よりもお店増えてるし、すっかり大都市ね」
「今の魔王様のお陰だな。じゃなきゃこんなに進んでないし、未だに俺、戦争行ってたわ」
「本当にそんな事にならなくて良かった」
「ありがたいよな」
視線は手元のまま、思わず目を瞠ってしまう。
私に対してはちょっと変だけど、しっかり魔王業しているんだな⋯⋯と、感心する。
「エリー様?どうかしましたか?」
メメリィが不安そうに瞳を揺らす。
「あっ、ううん、なんでもないの――」
「⋯⋯っあ!!そうそう!!聞いた?!魔王様の話。自分好みの女の身体、創ったらしいわよ〜?」
「聞いた聞いた!!すげぇよな、見てみたいわ。ものすごい美人で、どエロい女創ってそうだな」
「魔王様が妖艶だもんねぇ〜!!」
興奮で大きめになったカップルの声に、ピクリと反応してしまう。
(うわぁぁぁ!!なんかごめん!!全然どエロくないんだ⋯⋯)
顔が熱くなり思わず俯くと、メメリィがクスクスと笑う。
「⋯⋯っちょっと、メメリィ!!」
「も、申し訳ございません、エリー様がお可愛らしくて」
コソコソと小声で言い合う。
「⋯⋯はぁ。もっとこう、出るとこ出てる身体だったら、ねぇ⋯⋯?」
「ふふふ、エリー様は世界一可愛らしいですよ」
確かに、顔は整いすぎるくらい整っているが⋯⋯
美人と言うより可愛い部類だし、胸部は平均的だ。
身長も小さめで――
「⋯⋯もしかして、デモくんって幼女好き⋯⋯?」
「⋯⋯⋯⋯っ!!あははは」
耐えきれず吹き出したメメリィは、周囲の視線をいっせいに集める。
そこから数時間ずっと思い出し笑いをしていたほど、可笑しかったらしい。
ちなみメメリィ曰く、誓って幼女好きではない、との事だった。




