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天界での死に方  作者: 土成 のかげ
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ランドへの誘い

「はじめまして、(スー)・グネルです。」

暗闇からふっと現れた声の主は私と同じくらいの大きさで、碧い瞳のイケメンだった。容姿に騙された訳ではないけれど、ぱっと見悪い人では無さそうで少し安心した。


「どなたですか。」

「グネル、と申します。」

相手がすでに名乗っているのに頓珍漢な質問になってしまっているけど、聞きたいのは一体何者なのかって事で名前ではない。ただ再度名乗った相手の気持ちもよく分かる。

「あ、ですよね。すみません。私は三井 咲(みい さき)です。」

(ミー)なのですか!ついに、お会いできたのですね!お会いできて光栄です。」

グネルと名乗ったイケメンが私に跪いて首を垂れる。

「えっと、苗字は三井ですが、どなたかと勘違いされているのでは無いかと思います。」

(ミー)なのですよね。お待ちしておりました。」

絶対に誰かと勘違いしている。しかも多分偉い人と。どうしたらこの誤解を解けるだろうか。

「みーとはどのような人なのか聞いても良いですか。」

「もちろんでございます。おそらく天界(ランド)へ向かう途中で大いなるチカラより知恵が授けられるかと思いますが私の知る範囲でお話しさせて頂きます。(ミー)とは、天界(ランド)における長であり、聖なる恵みをもたらす御方でございます。樹々と心を通わせ、万物の調和を図るため数百年に一度だけ地上(グランド)から召喚されるのでございます。また、幻のミレニオの蜜で長生きされるとも聞いております。」

「はあ、、」

何と対応したものか。そんな伝説的な人だと言われても困るし、万物の調和ってスケールが大きすぎる。やはり夢なのではないか。私はしがない会社員なのだ。

「お話しを聞いて確信しました、私はグネルさんのおっしゃる、みーでは無いと思います。私はみーではなく、三井(みい)です。」

「そんなはずありません。地上(グランド)での恩名が(ミー)である方は今までおりませんでした。太陽(ソル)のチカラを宿したミレニオの蜜のプロトタイプを貴方は摂取された筈です。それに貴方の(ミー)の力が反応され、今貴方はここにいらっしゃるのです。」

うーん、説明を受けてもよく分からないけれどかなりこの人偏見が過ぎるような気がする。どうしたもんか。誤解を解かないと後々大変な事態に巻き込まれるのは目に見えている。どこかの長になって万物の調和を図るとか私には無理でしょ。


「蜜って昼に試食したカリンのコンフィチュールのことかと思うのですが、特別なようには見えませんでした。他の人も食されて居ましたし。それにその天界(ランド)はどこにあるのでしょうか。そこにいる人たちは私のことは見えるのでしょうか。私の友達には私の姿は見えなかったみたいでした。」

「天界人同士であればお互いが見えますし、我々は人間を認識出来ます。ただ人間には我々の姿は見えません、分子の振動レベルが違うので我々を見る事が出来ないのです。」

よく分からないけれど、存在はしてても超音波とか紫外線みたいに人には見えない物体になってしまったという事なのだろうか。夢にしては理屈が通っている様にも聞こえるし、私の知ってる知識内での事象にも聞こえる。


「これから私はどうなるのでしょう。その天界(ランド)に連れて行かれるのでしょうか。」

「それが1番良いとは思いますが、ここに残ることも出来ます。ただその場合はこれから先ずっと誰にも認識されず一人で存在することになるかと思います。一方、天界(ランド)にいらした場合は、2度とここには戻ってくることは出来ませんが、天界人としての生活が可能です。どちらがよろしいでしょうか。私としては是非(ミー)として天界(ランド)に来て頂きたいですが、強制することは出来ませんので判断はお任せ致します。」

「いつまでに決めないとダメですか。」

「出来れば夜明けまでにお願いしたいですが、判断が難しいようでしたら明日またこの時間に伺います。」

頭が全然追い付かないけれど悩んでいる時間もあまり無い。これが現実だとすれば、私はすでに天界人という生き物であり、そして彼らの世界に一度行ったら2度とこの人間の世界に戻れなくなる。直感的に私はきっと天界(ランド)に行く選択をすることになるのだろうと思う。これから先ずっと誰にも認識されず50年,60年生きていくなんて恐怖でしかない。私はみーではない。天界(ランド)に行ったら誤解を解いて一市民になれる方法を探して生きていくのが良いのだろう。でも本当にそれしかないのか?万が一にも戻れる可能性は残ってないのか?折角有る1日の猶予を活かした方がいいのではないか。そうだ、そうしよう、最大限与えられた時間有効に使おう。

「では明日のこの時間に来て頂けますか。」

「分かりました。残るのはあまりお勧め出来ませんが、色良い返事お待ちしています」

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