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アクティブダンジョンマスター・俺は外に出る!  作者: 親方、空からゾンビが!
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ミネルバの語り

「いたぞ、あそこだ、ガゼルシートの領主を殺した冒険者に違いない! 絶対に逃すな!」

「「「おおっ!」」」


 クッソォ、ハーミットを撃退したと思ったら、どっかの騎士団が来やがった。ったく次から次へと息つく暇がありゃしねぇ。


「ここに留まるのは危険ですね、皆さん、ボクについてきてください!」


 カルロスを担いだシゲルが勢いよく飛び立った。俺とロージアも残りの二人を抱えて後に続く。


「お~い、シゲル。逃げるのはいいが、どこに行くつもりだ? 言っとくが、アレクシス王国の地理には詳しくないぞ?」

「大丈夫。本部の場所なら完全に把握しているよ。ボクも組織の一員だったからね」

「そういやそうだったな。でもそれなら早く言ってくれよ」

「それは……すまない。かつての仲間と戦うのが怖かったんだ。もう終わった後だけどね」


 シゲルの中でも葛藤があったのか、危機を脱した今でもチラリと覗かせる横顔が渋いように見える。

 言われてみりゃそうか。以前は俺も高遠や十針といった転移者と戦ったが、アイツらが知り合いだったら戦うのを躊躇(ためら)ったかもな。


「ところでロージア、死んだはずの俺を助けてくれたんだよな? 全身全霊で感謝するぜ、本当にありがとう」

「フフ、助けるのは当たり前じゃないですか。だって一緒に宝の山を見つけるのですよね? それまでに死なれては困りますもの」

「いや、アレは……」


 いつの日かロージアに告白した時の話を持ち出して来やがった。不意打ちにも程があるっつ~の!


「……コホン。あの時は虹を見に行こうって、直ぐに言い直したじゃねぇかよ」

「フフ、そうでしたね。ちゃんと覚えていただけて何よりです」


 そりゃ忘れねぇって。惚れた弱みじゃないが、俺は真剣なんだからな。これはロージアの正体を知った今でも変わらない。それにこうして助けられたんだ。今度は俺がロージアを護る番だ。


「あの~、お二人で盛り上がっているところを恐縮(きょうしゅく)なんですけれど、そういうプライベートな話は別の場所でお願いしたいかな~と」

「シュワユーズの言う通りだ。どうせあたいらが居ないところで盛るつもりだったんだろ? ったく見せつけんじゃねぇよリア充共が」

「見せつけてねぇ! つ~か盛るとか言うなこの肉食女が!」

「ああ? 肉食の何が悪い! ちゃんと野菜も食ってんだから文句言うな!」

「そういう意味じゃねぇ!」


 コイツ、他人の頭の上で暴れやがって。


「皆さん、言い合ってる場合じゃありませんよ? 敵の増援です!」


 竜に跨がった竜騎兵が前後から迫っていた。


「おいおい、たかが冒険者相手に過剰すぎだろ!」

「派兵した領主にもミネルバの息がかかっているのでしょう。それよりマサルくん、強行突破しますよ。ロージアさんも」

「ええ、このまま突っ込みましょう」


 後ろの竜騎兵を無視して更に加速する。前方には俺らを通すまいと待ち構える別の竜騎兵たち。


「出番だぞクーガ、不満があるなら奴らにぶつけてこい!」

「言われなくてもそうするつもりだ――ブラッティクローーーッ!」



 ザシュザシュザシュ!



「「「ぎゃはぁ!」」」


 すれ違い様に切り刻んでやった竜騎兵が落下していく。簡単に包囲を突破したのが効いたのか、後方の竜騎兵はそれ以上追ってくることはなかった。


「へへ~ん、ザマァみろリア充共が!」


 アイツらがリア充かは分かんねぇし関係ないんだけどなぁ。


「上手く巻きましたね。あそこの街に降りましょう、本部と繋がってるはずです」


 降り立った街はベアシートと呼ばれていて、俺たちの移送先だった街だ。追われているのもあって、門を通らず直接街の中へと侵入。通行人がざわめく中、シゲルの先導で教会へと突入した。



 バタン!



「ちょっと失礼」

「な、何ですかあなたたちは? 今は祈りを捧げる時間です。お静かに願いま――」


 ドスッ!


「ひぃ!? し、神父様が!」

「賊だ、賊が現れたぞ、早く逃げるんだ!」

「だだだ、誰か騎士団を~~~」


 ドタドタと一般人が逃げ出し、中には俺たちと気絶した神父だけが残された。


「つ~かシゲルが無言で手刀かますとは思わなかったぜ」

「そうですか? ボクだって変わりますよ。優しさだけが正義じゃないと分かったんです。時には心を鬼にしてでも成し遂げねばならない。かつての仲間を倒したように」


 何かいい感じに吹っ切れたか? 理屈っぽいよりは数倍マシだな。


「それでシゲルさん、どうして教会に押し入るような真似を?」

「本部への転移装置です。幾つかの地方都市には構成員の移動手段として用いられているんですよ。恐らくここにも――」


 ロージアの質問に答えつつ懺悔室(ざんげしつ)の床を調べていくシゲル。そして……


「やはりあった、隠し階段です」


 この展開、何だかデジャブを感じると思ったら、前にディオスピロスの隠れ村にあったパターンと同じだな。あれもエーテルリッツが発祥だったわけだ。


「行きますよ? 転移する先はエーテルリッツの本部、つまり本拠地です。ミネルバや他の大役職(リードロール)が待ち構えているに違いありません」

「ああ。ケリつけに行こうじゃねぇか、ミネルバとかいうふざけた奴にな!」



 シュン!




 スタッ!



「――っと。古びた個室に出たな。ここが本拠地なのか?」

「はい。各地の転移装置は本拠地の個室に繋がっていますので。それより気をつけてください。ミネルバはボクらの侵入に気付いているはずですから」

「出た先で待ち構えてるってか? 分かった。じゃあいっせ~ので扉をぶち破るぜ?」

「「「…………」」」コクリ

「――っせ~の!」



 ドン!



「おらぁ、死にたい奴からかかってこい! このトラップマスターマサル様が相手になってやらぁ!」

「待て待てぇ、マサルなんかよりあたいが先だ! 全員まとめてブッ飛ばして――っておい、誰もいねぇじゃん!」


 てっきり待ち伏せされてると思ったんだが、そんなことはなかった。個室を出た先は通路が広がっているだけで、人の気配は感じない。


「妙ですね。あのミネルバが気付かないはずはないと思うのですが……。とにかく大聖堂に行きましょう。構成員や大役職(リードロール)たちもそこに集まっているはずですから」


 若干の違和感を感じつつも、瞑想(めいそう)の場として使われている大聖堂へと走る。やがて1000人以上は軽く収容できるであろう開けた場所に出た。壁には様々な絵がステンドグラスとして掲げられていて、それらが光源として広間を照らしている。


「ここが大聖堂か? ここにも人は居ないようだが……」

「気をつけてマサル、祭壇の奥に誰かいます!」

「何っ!?」


 ロージアの忠告を受けて咄嗟(とっさ)に武器を構える俺たち。祭壇の奥には紫色のローブを羽織った誰かが、こちらに背を向けた状態で言葉を発した。


「やはり来たか、人知を超えしフールよ」


 フール。これまで何度か耳にしたフレーズだ。これが俺の事を指しているのは薄々気付いている。しかしコイツの声、どこかで聞いたような気がするが……


「その声、貴様はミネルバだな!?」


 語気を強めてシゲルが問う。そこで思い出したぜ。ガゼルシートの領主を追い詰めた時に聞いた声だってな。


「そうかテメェがミネルバか。俺を犯罪者みたいな扱いしやがって、ブチのめす前に理由を聞かせてもらおうか!」

「元よりそのつもりだ。なぜ貴様がこの世界に来たのか、そしてなぜ貴様を排除しようとしたか、全て答えてやろう」


 こちらに振り向き、ゆっくりと近付いてくるミネルバ。不思議と敵意を感じない。むしろコイツと対話するのが必然だったとすら思えてくる。

 ……何か妙だ。話を聞くのは当然として、不意打ちされないように注意だけはしておこう。


「始めに問おう。フールよ、貴様は大役職(リードロール)というものを知っているか?」

「大役職?」


 そういやシゲルが口走っていたな。


「その様子だと知らぬようだな? まぁいい。まずはそこから説明しよう。大役職(リードロール)とは即ち、その分野に特化した者を指す。イグリーシアの導き手とも呼ばれる存在だ」

「ふ~ん? つまりマジシャンなら魔法に特化してるってか?」

「その通り。現にマジシャンはアレクシス王国の元魔術団団長であった。性格に難の有る輩ではあったが、奴の功績により魔術部隊が充実したのは紛れもない事実なのだ」


 お国に貢献してきた重要人物だったと。ダイナマイトで消し飛ばしちまったがな。


「彼ら大役職(リードロール)は世界を発展させる存在であると共に、同じく大役職(リードロール)である()()の誕生を未然に防ぐ役割をも担っている。そしてフールよ、貴様にはデスの兆候が見られる。即ち、貴様が後のデスとなるのが定められているのだ」


 そういや正体不明の女神からも同じ事を言われたな。だからって、俺に言われても困るんだが。


「はいはい、俺がデスね。それでデスが誕生するから何だってんだ? 俺の存在が怖いってか?」

「そうだ。大役職(リードロール)の中で唯一、周囲を破滅へと導く存在。それがデスなのだ。私も運命(フォーチュン)である以上、これを放置するわけにはいかん。故にこれまで様々な手段で貴様を葬ろうとしてきた。いずれも失敗だったがな。フン、これも運命という名の宿命というやつか……」


 なるほど。俺がデスに成る前に殺そうとしてきたのか。


「理由は分かった。だが俺としても――ハイそうですか――と納得することはできない。デスに成ろうが何に成ろうが俺は俺だ、他人にとやかく言われたくねぇ」

「そうだろうな。私が貴様の立場でも納得はしなかっただろう。運命などクソ食らえだ」

「なんだ、気が合うじゃないか。今から誓約書で誓うんなら見逃さないでもないぞ? できる事なら殺したくはねぇ」

「フフ、それは無理と言うものだ。私は運命(フォーチュン)として、デスの誕生を予知してしまった。知った以上は例え肉親でも排除せねばならん!」



 シューーーーーーン!



「魔方陣!?」


 ミネルバが両手を掲げると、横向きになった魔方陣が出現した。正面から円に見える状態だ。


「もはや貴様を葬る策は尽きた。かく成る上は、貴様という存在そのものを転生させる以外にない。運命の輪(フォーチュンリンク)よ、かの者に新たな役職(ロール)を!」



 スィーーー!



「ま、魔方陣が俺を飲み込もうと!?」

「マサルさん!?」

「「「マサルくん!」」

「「マサルーーーッ!」」


キャラクター紹介


魔術師マジシャン

:元はアレクシス王国の魔術団に所属し、団長を勤めていた魔法至上主義の老人。魔法の才がない者や知識のない者を見下す傾向が強いが、実力は確かなものが有った。

 高齢のため引退し、後にミネルバに勧誘されてエーテルリッツの一員に。組織内での存在感は強かったが、プラーガ帝国にてマサルと戦闘になり、実力を発揮できないまま最期を迎えた。

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