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アクティブダンジョンマスター・俺は外に出る!  作者: 親方、空からゾンビが!
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追い詰められたダンマス

「先ほどは見苦しいところを見せてしまった。申し訳ない……」

「////」

「一応言っておくけど、時と場所を選んでくれな。何が起こるか分からないのがダンジョンの怖いところだしな」

「いいじゃん別に。この場で盛るなら見張っといてやるぞ?」

「生々しいから止めぃ!」


 ったく、油断も隙もあったもんじゃないなクーガは。


「フフ、でも正直羨ましいです。大変仲がよろしいみたいですし、お二人が()()()()したのも頷けますね」

「えっ!?」

「どど、どうしてそれを!」

「商家の令嬢がたった1人の付人とダンジョンに潜る――そんな要望は絶対に許可されないはず。ならばどうやって可能にしたのかと考えれば、無許可で飛び出したとしか思えません。それに先ほどの様子を見れば、お2人の関係性は極めて良好――もしくはそれ以上に――」

「わ、分かった、分かったからもう堪忍してや!」


 ほ~ん? なら2人で旗揚げするためにダンジョンへやって来たってことか。シゲルの実力なら雑魚に遅れは取らないだろうし、素材の剥ぎ取りとダンジョンで獲たお宝でウマウマって感じか。


「でも夜間に突入ってのは大胆だなぁ。睡眠とかどうすんだ?」

「そんなんセーフティゾーンでの仮眠だけで充分や。くたびれたオバハンちゃうし」

「はぁ……。それが危険だとは前から言ってるんだけどね。あくまでもセーフティゾーンは対魔物の対策であり、人に対しては効果がないんだ。欲深い連中に身ぐるみを剥がされる可能性だってあるというのに……」

「せやからマサルたちに同行しとるやん」

「お前、俺らが善人の前提で話してないか? 俺が言うのもなんだけど、結構危険な思考だぜ?」

「大丈夫やて! これでも商人の端くれや。人の面見りゃ危険か安全かくらいは分かるっちゅ~ねん」


 そりゃ羨ましい。俺だってロージアの思考が読めればもっと楽なんだけどな。


「ところで――」



 シュ!



「さっきから――」



 シュシュ!



「やけに罠が――」



 シュシュシュシュシュシュシュシュ!



「多くないか!? ってか多すぎだろ! まるで俺らをロックオンしてやがるかのようだ!」



 シュ――――ドゴォォォン!



「「「うっひぃぃぃ!」」」


 クリスティーナやシゲルと共に爆風に押されて前方に吹っ飛ぶ。毒矢の連発だけじゃ飽き足らず、火矢で火薬を爆発させるまでやってきやがった。


「こ、これは完全に殺しにきてますね。まさかとは思うけど、秘密結社の首領ミネルバがボクを狙って仕組んでいるとか……」

「秘密結社っとかあんのかよ! いや、それより休憩だ、どこかに休める場所は――」

「マサル~、あそこの一帯が光ってるぜ? 多分セーフティゾーンだろ」

「ナイスだクーガ!」


 横に逸れたところにセーフティゾーンを発見し、連鎖する罠の嵐から脱することに成功した。


「ハァハァ……ひでぇ目にあった……。ここのダンマスは地上の国と敵対するつもりか」

「ハァハァ……。でもおかしいなぁ。国から聞いた話やと、コアルームに近付かなければ安全や言うてたのに……」

「え? ちょっと待ってください、それならどうして攻略する流れになっているのですか? 害が無いのなら放置しててもよさそうな気がしますが」

「そりゃ国も騎士団も冒険者ギルドも攻略対象のダンジョンやからって――あれ? そういやおかしな気もするなぁ?」


 ロージアの指摘で今さらながら疑問を感じているクリスティーナ。俺も気になってロージアに視線を送ると、現時点での持論を展開してくれた。


「恐らくですが、表沙汰にはできない誰かがダンジョンで殺されたのだと思われます」

「貴族とかの身分が高い奴だな?」

「はい。しかし総力を上げると余計な噂が立ちますので、然り気無く攻略させてしまおうと考えているのではないかと」

「でもさ、仮にダンマスが殺したとしてだ、それってダンマスに何のメリットがある?」

「マサルさんの思う通り、ダンマスにとってはプラスにはならないでしょう。ですがダンマスの背後に闇ギルドが潜んでいるのなら……」


 ここでディオスピロスが出てくるわけか。それなら話は繋がる。さっきの村にいたボスがここに逃げ込んだという推測も成り立つ。


「どおりで罠がハッスルしてるわけだ」

「ボスも必死なのでしょう。私たちが構成員を圧倒し、更に追われる立場なわけですから」


 ――となれば急いだ方がいいな。みすみす猶予を与える必要はないってもんだ。


「なぁなぁ、さっきからちょいちょい分からん話が混ざってる気がするねんけど?」

「ああ、それはな――」


 どうせボスを取っ捕まえるまで戻れないし、クリスティーナとシゲルには事情を話すことにした。


「――っつ~訳さ」

「ひぇ~~~、闇ギルドと戦ってるとかそれガチなん? 生きてる心地せんわ~」

「心配しなくても負けるつもりはねぇよ。むしろ追い込まれてるのは向こうだしな。それにクリスティーナにはシゲルが付いてるだろ?」

「そ、それは今関係ないやろ////」

「――と言いつつ満更でもないクリスティーナであった」

「実況せんといてや! もぅ、疲れたからウチ仮眠するでぇ!」


 そう言ってゴロンと横になるクリスティーナ。けど残念なことに仮眠できそうにないんだなこれが。


「クリスティーナ、それにシゲルも立ってくれ。どうやら敵は休ませてくれそうにない」

「何言うてるん。セーフティゾーンに居るかぎり安全やん」

「それでもありませんよ。ほら、セーフティゾーンが消えかかっています」

「ハッ!? こ、これは……」

「え……どどどど、どういうこっちゃ!?」


 ロージアに言われてゾーンの結界が点滅しているのに気付く2人。更にはどこからともなくゴブリン共がワラワラと沸いてくる始末だ。


「説明は後だ、ボス部屋まで突っ切るぞ。先陣はクーガ、お前だ!」

「おぅ、眠気覚ましにゃちょうどいいぜ!」


 切り込み隊長クーガを先頭に、ダンジョンの奥へと進んで行く。


「いったいどうなってるん!? セーフティゾーンが消えるなんて有り得んやんか!」

「あるんだよ、それが。そもそもセーフティゾーンはダンマスが作ったものだ。当然消すことだって可能なのさ」


 説明しながら道を切り開き、ボス部屋を目指す。初見なら迷うところを、俺たちは難なくたどり着くことに成功した。


「この扉……ボス部屋のやつやん! 初日で見つけるのは難しい言われとるんに。なんや、案外簡単に見つかるもんやなぁ」

「ちょっとした()()があるんだよ。それより開けるぞ」



 グィィィ!



 扉を開けて中に入ると、巨大な斧を担いだ赤肌の巨人が俺たちを出迎えた。こっちを見るなり斧をブンブン振り回し、ヤル気も充分と。


「グガァァァ!」


「オーガリーダーだ。クリスティーナたちは後ろに下がって――」

「見るからに凶悪な輩め、ジャスティスレンジャーのシゲルが相手だ――とぅ!」


 何を思ったのかシゲルが単独で向かって行った。


「くらえ、ハリケ~ンキィィィック!」

「グゴァ!?」


 体をグルグルと回しながらのジャンプキックでオーガリーダーがよろめく。だがすぐに体勢を立て直し、シゲル目掛けて斧を振り回し始めた。


「ゴアァゴアァ!」


「クッ……やるな、オーガリーダー。あの技を受けて倒れなかったのはお前が初めてだ」

「いやお前、感心してねぇで下がれって――」

「だがこれには堪えられまい、ジャスティ~~~ス――――ビ~~~ム!」

「――って、ええええ!?」


「ゴガァァァァァァ!?」


 スペ○ウム光線もどきみたいな技を繰り出しやがった! 効果はすぐに表れ、オーガリーダーの体をドロドロに溶かしていく。つ~かグロい!


「参ったかオーガリーダー、これが正義の力だ!」

「シゲル最高や!」


 うん、強い。マ~ジで強い。これって俺たち要らなくね? ってくらいに。


「なぁロージア、オーガリーダーって普通のオーガより強かったよな?」

「当然です。伊達にリーダーと呼ばれてるわけではありません。ベテラン冒険者ですら苦戦は免れないでしょう」


 けど強いに越したことはないよな。この先にはディオスピロスのボスが控えてんだし。


「ほなこの調子でいっくで~~~!」


 そこから先も問題なく進んで行く。相変わらず罠の数がヤベェことになっているが、()()調()()により全て把握済みだ。

 どうやって調べたかって? そりゃもちろん――


「マサル~、一つ気になったんやけどな、全ての罠を潰したり魔物の出現ポイントを避けたり挙げ句には宝箱まで見つけたり、さすがにご都合主義ひん? それは冒険者ってこの程度もできないアホなん?」

「ハハッ、バレたか? まぁ強いて言えば前者だな」


 答えはというと、密かに召喚したクロコゲ虫にマッピングさせてたってやつだ。

 例えば俺たちが通る直前にクロコゲ虫を通過させ、罠を発動状態にしておく。そうすることで俺たちは難なく避けれるってわけだ。


「この中で唯一俺だけが使えるスキルってやつさ」

「へ~~~、なんや凄そうやんな。ちょっとだけ見直したわ~」

「ちょっとだけかい!」

「せやけどマサル、そんなことができるって、いったい何者なん?」

「おっと、そこから先はクリスティーナにも言えないな~」


 さすがにダンマスってのは伏せておきたい。


「え~? めっちゃ気になるやん! なぁなぁ、せっかく知り合ったんやし教えて~な」

「フッ、わりぃな。俺にも秘密にしておきたいことが――」

「な~にカッコつけてんだぁ? ダンマスってことくらい、隠すまでもねぇだろ」




「え……ダンマスって……言うたか?」

「ボクにもそう聞こえましたが……」

「クーガ、お前ってやつは……」

「ん? なんかマズイ事言ったか?」


 あ~あ、こうなりゃしゃ~なし。変に隠しても怪しまれるし、正体を明かすことに。その流れでシゲルが転生者だと明かしてきたので、俺も転生者だと明かした。




「――というわけだ」

「へ~、シゲル以外で転生者とか初めて見たわぁ。良かったやんシゲル、同郷の仲間ができたでぇ」

「そうだね。異国の地で知り合えたのはとても貴重だ。運命の女神に感謝するよ」


 運命の女神なぁ。俺の目にはズボラなケモ耳女が写ってるんだよなぁ。


「あ? なんだよマサル、あたいに何か文句でもあんのか?」

「いいや、何にも。素晴らしい程バカだなぁと思ってな」

「??? 褒めてんのかそれ?」

「めっちゃ褒めてる」

「おぅ、もっと敬え!」


 誰が敬うかアホめ。


「ところでさ~、最初はトラップが多かったのに、めっきり見なくなってない?」

「あ~それウチも思っとったわ。3階層辺りからだっけな? 急にトラップも魔物も沸かなくなったで」


 シュワユーズの指摘にクリスティーナが同調する。どうりで楽な感じがすると思った。


「マサルさん、これは恐らく……」

「ああ、DPの枯渇(こかつ)だな。俺たちを撃退しようとするあまり無茶な設置を繰り返したんだろう」


 前に馬獣人のダンマス――オグリが言っていたが、これはダンマスあるあるらしい。初心者のダンマスはこれが原因で討伐されることが多いんだとか。


「ふむ、つまり悪は滅びたのかい?」

「いや、滅んじゃいねぇって。コアルームに居るダンマスを倒すか、ダンジョンコアの奪取もしくは破壊をしない限りはな」

「ならば気を引き締めて挑まなければ。いよいよボス部屋の扉が見えてきたことだしね」


 おっと、話ながら進んでたらあっという間だったな。でもってここは5階層。そろそろコアルームが出てきてくれるとありがたいんだが。



 グィィィ……



「おっしゃ、あたいが一番乗り――って、なんだぁ? だ~れも居やしねぇじゃん」

「ホンマや。さてはウチのシゲルにビビって逃げ出しよったな!」

「何言ってんだ、あたいにビビったに決まってる」

「クーガちゃうわぁ、シゲルやて」

「い~や、あたいだ!」

「い~や、シゲルや!」

「あたい!」

「シゲル!」

「まぁ待てお前ら。ここは間を通って俺にビビったことにしとこうぜ」

「「…………」」




「マサルのやつ、いきなりマジになってダセェよな?」ヒソヒソ

「うんうん、謙虚さとか感じひんしなぁ」ヒソヒソ

「終いにゃダンマスの立場で言いくるめてくるんだぜ? ホント嫌になるぜ」ヒソヒソ

「マジ~? 嫌な上司の典型やん」ヒソヒソ

「おいそこ、わざと聴こえるように言うんじゃねぇ!」


 けど妙だな? ボス部屋用意しといてボスを置かないとは――――ん? あれは……


「おいあそこ、次の階層への階段があるぞ」


 ボスが居ない代わりに部屋の奥に階段が出現しているのが見える。

 このダンジョンは最大で3階層までしか攻略が進んでいないと入口の兵士は言っていた。つまり誰かがボスを倒すのはあり得ないんだ。

 やっぱり最初から配置してなかったのか?


「え~~~!? まだ終わりじゃなかったの~~~? 戦闘もないしダルいんだよね~」

「シュワユーズに同意だぞ。さすがのオイラも退屈になってきたぞ」

「文句ならダンマスに言ってくれ。ほら、早く先に進むぞ」


 とは言いつつ内心では俺も2人に同意で、ウンザリした感情を潜めて階段に差し掛かった。

 その瞬間、妙な胸騒ぎを覚え、全員に待ったをかける。


「やっぱおかしい。ボスが居ないのもそうだが、階段の位置が真ん中より左側にズレてる気がする。これは……」


 そして確認のために中を覗き込んだ瞬間!




 ボォォォォォォン!




「グハッ!」

「マサルさん!」

「マサル!」


 階段の先が爆発し、爆風で数メートル飛ばされてしまう。が、それだけでは終わらない。今度は柱の陰から人影が飛び出してきて、俺に斬りかかる!



「い、今だ――」



「とぅ!」



「ゴエッ!?」



 まさかのピンチに咄嗟(とっさ)に反応したシゲルが謎の人影を殴り飛ばす。その隙に俺は立ち上がり、辛くも窮地(きゅうち)を脱した。

 一方の人影はというと、殴られた脇腹を押さえて悶絶(もんぜつ)。さっそくやり返してやろうかと見下ろしてみると、人影の正体は冴えない男。どう見ても闇ギルドのボスには見えない。

 ならボスはどこにと考えたところで一つの妙案を閃き、俺は男にそっと耳打ちをした。


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